木走日記

場末の時事評論

組織防衛に走る理研の姿勢を強く批判する〜これでは科学の名を借りた前時代的な「公開裁判」だ!

 BLOGOSより。

STAP細胞
再現できず。小保方氏は退職

STAP細胞をめぐる検証について、理研は19日に再現ができないことから検証実験を中止すると発表した。小保方氏自身による実験でもSTAP細胞の作製が出来なかった。小保方氏はこれを受け理研を退職、野依良治所長も「これ以上心の負担が増すことを懸念し、本人の意志を尊重することとしました。前途ある若者なので、前向きに新しい人生を歩まれることを期待しています。」として承認したことを明らかにした。

(後略)
http://blogos.com/news/STAPcell/

 うむ、「STAP細胞をめぐる検証について、理研は19日に再現ができないことから検証実験を中止すると発表」、小保方氏はこれを受け理研を退職、理研野依良治所長も「前途ある若者なので、前向きに新しい人生を歩まれることを期待しています。」として承認したそうです。

 今回の理研の発表および野依良治所長のコメントは、再現実験の失敗とともに、想定の範囲であり、驚くべきものではありませんでした。

 しかしながら工学系大学の教育現場に携わるものの一人として、一連の理研の姿勢は酷過ぎると思います、まったく釈然としないのです。

 今回はこのSTAP細胞問題について取り上げたいと思います。

 ・・・

 当ブログでは4月10日の段階で「小保方論文は”全否定”しなければならない」と主張しています。

2014-04-10 小保方論文は”全否定”しなければならない
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20140410

 このエントリーは、理系の学生レポートを日頃チェックしている私自身の経験から、小保方論文を”全否定”したもので、ネットで少なからずの注目をいただきました。

 エントリーより抜粋。

一言で言えば会見で小保方氏は論点のすり換えを行っている印象を受けました。

 問題になっているのはこの論文に剽窃や改ざんがあったのかどうかという点であり、STAP細胞が確かに作製されたのかどうか実験の成否ではありません。

 もちろん実験の成否はたいへん重要なポイントですが、小保方氏が問われているのは、実験の成否以前の、科学者としてのモラル・誠実さの欠落です。

 科学者としての基礎的倫理観が身に付いていないと断じざるを得ません。

 会見では不注意を謝罪したが、不正と認定されるような論文を発表すること自体、知的誠実さに欠けているのです。

 一般論で言えばここまで論文に不正があれば、実験そのものに「不正」がなかったとしても、科学的信ぴょう性はゼロです。 

 私は、日頃学生の剽窃行為やデータや画像の改ざんには厳しくペナルティを課しています、科学レポートを学生に指導する立場から、小保方氏の反論は認めるわけにはいきません、学術論文に対する甘すぎるその姿勢を認めれば、理研のみならず日本の科学論文全般の信用問題になりかねません。

 私は多くの学生の不正論文にこれまで厳しいペナルティを課してきました。

 私のペナルティにより単位を落としたり卒業できなかった学生もおります。

 STAP細胞が存在するかしないかはたいへん重要なテーマですが、小保方氏の論文に不正があった事実にとっては、二次的なことです。

 小保方論文は"全否定"しなければなりません。

 この問題の本質は論文に著しい不正(剽窃行為やデータや画像の改ざん)がなされたことであり、「ここまで論文に不正があれば、実験そのものに「不正」がなかったとしても、科学的信ぴょう性はゼロ」であると主張いたしました。

 その後、理研の姿勢は理解に苦しむものでした、研究不正が判明した小保方晴子ユニットリーダーら論文著者に対する懲戒処分の審査を開始しつつ追加調査は不要との立場から、一転、懲戒処分の審査を中断、なんとSTAP細胞の有無を確かめる検証実験に当事者である小保方氏が参加することを正式に発表したからです。

 6月30日付け読売新聞記事から。

小保方氏、STAP検証実験参加へ…理研発表
2014年06月30日 22時50分

 理化学研究所は30日、STAPスタップ細胞の2本の論文に関し、追加調査を始めたと発表した。
 4月までの調査で、画像データの捏造ねつぞうなど2件の研究不正が判明したが、その後も新たな疑問が相次ぎ、外部有識者による理研改革委員会は、追加調査を求めていた。理研は、追加調査は不要とする方針の転換に追い込まれた。
 追加調査で研究不正がさらに明らかになる可能性があることから、理研小保方晴子ユニットリーダーら論文著者に対する懲戒処分の審査を中断した。
 一方、STAP細胞の有無を確かめる検証実験に、小保方氏が参加することも正式に発表した。期間は7月1日〜11月30日で、小保方氏の体調が許す範囲での参加になる。理研は4月から検証実験を始めたが、難航しており、小保方氏に参加を求めた。今夏に中間報告、来春に最終報告という予定は変更しない。

http://www.yomiuri.co.jp/science/20140630-OYT1T50143.ht

 当ブログは「「小保方氏STAP検証実験参加」理研の決定に強く反対する」と題したエントリーをいたしました、「これでは科学の名を借りた前時代的な「公開裁判」となってしまう」と、理研の無責任な姿勢を批判いたしました。

2014-07-01 これでは科学の名を借りた前時代的な「公開裁判」となってしまう
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20140701

 当ブログの主張は明快です、「そもそも不正論文に関わった主たる責任者たちがその管理責任が問われることなく追再実験を行うべきではない」の一点です。

 そもそも不正論文に関わった主たる責任者たちがその管理責任が問われることなく追再実験を行うべきではない、というのが当ブログの理研による検証実験に強く反対する理由のひとつです。

 ましてや小保方氏を参加させるのは絶対反対です。

 本来なら不正論文の当事者である小保方氏は免職されるべきです。

 科学者としてペナルティーが課せられるべき対象者です。

 これは「理研が組織防衛」を図っているのではないか、「理研はこの検証実験で小保方氏を参加させることで、STAP細胞再現の検証作業が失敗に終わった場合、小保方氏に責任を集中させること」を図っているのではないかと、疑念を投げました。

 この時点でそのような小保方氏を参加させる理研の決定には、強い疑念が浮上します。

 それは理研が組織防衛といいますか組織の保身を最優先に考えているのではないか、という疑念です。

 つまり、理研はこの検証実験で小保方氏を参加させることで、STAP細胞再現の検証作業が失敗に終わった場合、小保方氏に責任を集中させることを、画しているのではないのか、ということです。

 これでは「小保方氏参加の検証実験は、科学の名を借りた前時代的な「公開裁判」となってしま」うと警鐘を鳴らしました。

 ならばこの小保方氏参加の検証実験は、科学の名を借りた前時代的な「公開裁判」となってしまいます。

 小保方氏参加のSTAP細胞再現の検証作業が失敗に終わった場合、それが大きく報じられれば、小保方氏は否が応でも強く社会から責められることになるでしょう。

 彼女はスケープゴート(scapegoat)として社会から抹殺されかねません。

 これは人道上の大問題です。

 当ブログでは小保方氏を科学者として強く批判してきました。

 そして小保方氏の科学の世界で起した不正行為には、あくまでも科学の世界でペナルティーが課せられるべきであると主張してきました。

 しかし理研が企てている小保方氏参加の検証実験は、結果が否定された場合、科学者としてのみならず、小保方氏の市民としての社会的ポジションにも悪影響を与えかねない可能性があります、本来彼女に課さられるべきペナルティーを大きく越えた社会的罰が与えられかねない、これでは科学の名を借りた前時代的な「公開裁判」となってしまいます。

 当ブログは、小保方氏のSTAP検証実験参加という理研の決定に強く反対いたします。

 ・・・

 残念ながら当ブログの危惧は現実のものになってしまいました。

 この小保方さん参加の再現実験は、予想通り失敗に終わりましたが、科学的な意義は当初から全くなかったのにもかかわらず、理研の組織防衛上、彼女をスケープゴート(scapegoat)として利用したとしたならば、一連の理研の姿勢は酷過ぎると思います。

 一連の不正論文の問題は、彼女ひとりの責任であるはずがありません。

 当然ながら所長も含めた理研の管理責任は厳しく問われなければなりません。

 まったく釈然としません。



(木走まさみず)