木走日記

場末の時事評論

小保方博士論文:納得しがたい「実験結果の部分に盗用はない」という早稲田の判断

 7日付け朝日新聞電子版速報記事から。

早大、小保方氏の博士号を取り消し決定 1年の猶予つき
2014年10月7日16時17分

 早稲田大は7日、理化学研究所の小保方(おぼかた)晴子ユニットリーダー(31)に2011年に授与した博士号の取り消しを6日付で決定した、と発表した。ただし、約1年間の猶予期間を設け、論文の訂正や研究倫理教育を受ける機会をつくり、博士論文としてふさわしいものになったと判断した場合は、博士号を取り消すことなく維持する、としている。

 小保方氏の博士論文は文章の盗用などの疑義が指摘され、2月に同大が調査を開始。外部の専門家をまじえた調査委員会が7月に発表した報告書で、盗用など11カ所の不正行為を認定していた。調査委は「論文の信頼性や妥当性は著しく低く、審査体制に重大な欠陥がなければ、博士の学位が授与されることは到底考えられなかった」などとする一方で、実験結果の部分に盗用はないなどとして、同大の学位取り消し規定には該当しないと結論づけていた。

 博士論文は、マウスの骨髄や肺などの細胞から万能性をもつ幹細胞を見つけ出すという内容。「STAP細胞」の発想を得るきっかけになったとされる。

http://www.asahi.com/articles/ASGB66V27GB6ULBJ01K.html

 うむ、早稲田大学は小保方氏の博士号を取り消し決定に伴い、1年の猶予つきの決定をしました。

 7月の調査委の発表では、「小保方論文自体は科学的には博士論文としては全く認められないがそれは草稿であって本物ではなかった、本人に「故意の作為」はなく「過失」によるものだから学位取消には該当ぜず」、そのような論文に学位を与えてしまった大学側の指導過程にこそ責任がある、との結論でした。

 実にアクロバティックな非科学的な論理で当ブログは、「過失」による剽窃(ひょうせつ,Plagiarism)行為など有り得ないと批判しました。

2014-07-21■[科学]早稲田調査のアクロバティックな非科学的な論理〜「過失」による剽窃(ひょうせつ,Plagiarism)行為など有り得ないhttp://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20140721

 当該エントリーより抜粋。

 長年、大学・大学院の理工系教育に関わるものの一員として、強く主張いたします。

 「過失」による剽窃(ひょうせつ,Plagiarism)行為など有り得ません。

 そして何箇所も剽窃や改竄箇所が指摘されている科学的には全く認められない「論文」を、「草稿と推認」と問題視すること自体を放棄した早大調査委の判断は、まったく非科学的であり極めて「政治的」意図を感じます。

 一歩譲って「草稿」段階だったとしてもあれだけ悪意ある剽窃や改竄箇所があった論文が「本物」になるまでに短期間に一気にすべて浄化されることなど、私の経験からいって絶対にありえません。

 科学論文における剽窃(ひょうせつ,Plagiarism)行為はすべて悪意ある不正行為です。 

 誤って剽窃(ひょうせつ,Plagiarism)を含む「草稿」を製本してしまったとしても、そのミスも含めてすべて悪意ある不正行為です。

 「過失」による剽窃(ひょうせつ,Plagiarism)行為など有り得ないのです。

 早稲田大学の最終結論を待ちたいと思います。

 そもそもこの調査委のアクロバティックな結論は「実験結果の部分に盗用はないなどとして、同大の学位取り消し規定には該当しないと結論づけていた」わけですが、今日の最終結論においても、「約1年間の猶予期間を設け、論文の訂正や研究倫理教育を受ける機会をつくり、博士論文としてふさわしいものになったと判断した場合は、博士号を取り消すことなく維持する」とはどのような配慮があるのかわかりませんが、全く納得がいきません。

 専門的なことに踏み込むのは避けたいのですが、一点だけ小保方論文が「過失」による剽窃(ひょうせつ,Plagiarism)行為などでは断じてなく、また「実験結果の部分に盗用はない」という早稲田の判断がいかにグレーなものか、一般読者のみなさんの判断を仰ぎたいです。

 ネットで小保方論文のPDFファイルが確認できます。

 で、小保方博士論文の Figure 10(p53)のEctoderm (Hepatocyte)の実験画像に注目してください。


http://stapcells.up.seesaa.net/image/Figures.pdf

 次にコスモ・バイオ株式会社のホームページに掲載されている幹細胞(マウス)の画像に注目してください。

http://www.primarycell.com/hanbai/kan_saibokit.html

 両者を比較した下図をご覧いただければ一目瞭然ですが、小保方博士論文の Figure 10(p53)のEctoderm (Hepatocyte)の実験画像(左)は、 コスモ・バイオ株式会社のホームページに掲載の画像(右)から無断盗用されたものです。

 解りやすい剽窃箇所の一例を具体的に示しましたが、もちろんこの写真だけでなく、剽窃箇所は文章も含めて早稲田大学が認めただけでも十数カ所に及んでいることが判明しています。

 学生論文の評価を長年している私の個人的経験から言わせていただければ、重要な実験画像すら複数箇所で無断盗用・コピペをしているなど、「1年間の猶予期間を設け、論文の訂正」が行えるような真っ当な論文とはとても判断し難いのです。

 私には、早稲田大学調査委の結論「実験結果の部分に盗用はない」という結論はまったく「科学的」でない「政治的」な結論であると思えてなりません、長年、大学・大学院の理工系教育に関わるものの一員として、納得し兼ねるのであります。



(木走まさみず)