民主党再生への道
今回は民主党再生への道を論じたいです。
はじめに当ブログは民主党員でもなければ民主党支持者でもありませんことを表明しておきます。
冒頭で論者のスタンスをはっきりしておくことが、これから論じる内容を読者が読まれる上でよりフェアーであると考えたからです。
民主党支持者ではありませんが、この国の政治にとり、自民党だけでなく、自民と堂々と政策で対峙できる自民よりややリベラルな、軽くライトリベラルな健全野党が必要なことだと考えています(それが民主党である必要性はないというごもっともな「正論」には耳をふさいで論考を続けます(苦笑))
民主党の最大の問題は、党内の意見集約がまったくできていないことです。
原発再稼働問題、安全保障政策、集団的自衛権、消費税増税、TPP、経済政策、何一つ意見集約ができていません。
党内には、連合から支持を受けた横路孝弘元衆院議長など旧社会党出身者の左派系から、前原氏などの右派系まで、イデオロギー的には真逆といってもいい政治家たちが混沌と協調できずに存在しているわけです。
原発再稼働問題にしても、野田政権が大飯原発再稼働を認めましたし、今回の民主党の選挙公約では「2030年代原発ゼロに向け政策資源の投入」とし再稼働容認しているわけですが、たとえば菅元首相のように再稼働絶対反対即刻「原発ゼロ」の実現を目指すとした公約を堂々と掲げて選挙をする議員も少なからずいるわけです。
ここで問題なのは党内に幅広い考え方が存在していることではありません。
そんなこといったら自民党など、安倍晋三首相と河野太郎氏の安全保障政策や歴史観、原発政策は、共産党と次世代の党ぐらい隔たりがあるわけです。
ある程度の頭数がある大きな政党ならば、党内に多様な意見があることはむしろ政策の選択肢が広がる点で、あるいは多様な視座で問題を議論することが可能な点でむしろメリットがあるわけで、政策のウィングは幅広い方が国民の要求・要望にも幅広く対応可能で支持も得やすいことでしょう。
いろいろな考え方があるでしょうが、自民党と民主党の一番の違いは党内の意見の不一致にあるのではなく、そのトップのリーダーシップと、組織構成員のガバナビリティ、つまり集団としての能力の差にあると、当ブログは考えています。
まず党首および党幹部のリーダーシップの欠如があげられましょう。
「アベノミクス」のような、善し悪しはともかくですが国民に分かり易い政策を掲げることに失敗しています。
リーダーに能力がないため党内の意見集約ができないことを放置している、従って集団的自衛権の対応などが最たるものですが、民主党が賛成なのか反対なのか、海江田さんの言葉からはいっこうに見えてこない、与党に対峙するなら対峙する、そして国民に分かり易い対案を提示する、この政権交代を目指す野党第一党に最低限必要な国民に対する現与党とは別な政策の提示、ここに失敗しているわけです、民主党トップのリーダーシップの欠如から政策の力強い提示に失敗している、国民からすれば政策選択ができないのですから、今回の総選挙での投票率低下も与党圧勝もむべなるかなです。
さてリーダーシップの欠如を海江田さんばかりに押しつけても仕方がありません。
今の民主党は組織としてその構成員の意識に問題があることは明白であるからです。
誰がトップに立とうとも今の民主党の組織としてのタガの外れ方を修正しない限り、リーダーシップを発揮することはできないでしょう。
組織構成員のガバナビリティ(被統治能力)が低すぎるのです。
ある組織のガバナンス・統治能力が失われている場合、実に多くのケースでその組織構成員側に問題があることが多いのです。
単刀直入に言って、民主党議員は概してガバナビリティ・被統治能力が劣化していると思われます。
本来日本人は、ガバナビリティ・被統治能力が高いと国際的には評価されていますが、ガバナビリティとはルールを守って支配される能力です、人に責任を押し付けない、各人が自らの為すべきことを責任を持って行う、全体のために個人がルールを守る、そのような能力です。
3.11のとき、被災された方々が互いに助け合いながら騒乱も略奪もほとんど無く救援物資を奪い合うわけでもなく黙々と列に並んで各人が相応の物資を分け合う、この姿に海外のメディアは誇り高き日本人のメンタリティを絶賛していました。
これは日本人の美徳ともいえます、集団としてのガバナビリティが極めて高いのです。
欧米ではこのようにガバナビリティを評価されるべき能力として肯定的に使うわけですが、どうも日本では被統治能力というと従順とか没個性など否定的なイメージが伴ってしまうことが多いのですが、この価値ある能力は日本でももっと重視されてしかるべきでしょう。
・・・
少し脱線します。
組織の構成員のガバナビリティを高める最も一般的な方法は、古今東西変わらない「制服効果」という手法があります。
ガバナビリティが強く求められる組織、例えば軍隊とか警察、あるいは電車やバスや飛行機などの交通機関関係者、彼らは例外なく共通の制服を着用しています、そして制服を着ている限りつまり勤務時間内においては、個人の意思ではなく組織のルールに拘束されます。
サッカーや野球などの集団スポーツにも見られます。
スポーツの事例ではガバナビリティとリーダーシップ、被統治能力と統治能力は見事に共存可能であることが理解できます。
プロスポーツの試合を見れば、彼らは極めて高いガバナビリティで見事にチームプレイに徹していますが、と同時に選手個々人はそれぞれの個性的な能力を示しています。
被統治能力の高さは必ずしも没個性を伴わないケースもあることを多くの集団スポーツで見ることが出来ます。
余談ですが、この「制服効果」を見事に利用したのがヒトラー率いるナチスでありました、彼らは党服、軍服にひじょうなこだわりを持って「かっこいい」「あこがれる」デザインを採用し、国民統治に悪用しました。
「制服効果」は多くの国の教育現場でも活用されています。
これも余談ですが、昔、都立高校の制服が廃止され自由服となったとき、たまたま都立の学力低下と時期が重なったために「制服を復活させてゆるんだ規律を元に戻そう」という一部の主張がありましたが、まあ制服と学力に相関関係があるのか私は疑問なのであります興味深い話ではあります。
ガバナビリティ・被統治能力に関して論じるときに、どうも日本では負のイメージが付きまとうのは、やはりこの「制服効果」が左右のイデオロギーに悪用されてきた現実があるかもしれません。
ヒトラーのナチスや現在の北朝鮮などの独裁国家に「制服効果」が悪用されてきたことは事実なのですが、しかし「ガバナビリティ」という能力自体は、本来イデオロギーとは関係の無いひとつの能力に過ぎません。
・・・
民主党に話を戻します。
日本の政党で構成員のガバナビリティが高いのは日本共産党と公明党です。
強いイデオロギーと強い宗教心は心理的な「制服効果」をもたらすものだからと私は考えています。
一方自民党は民主党ほどではないですが上記2党に比べればガバナビリティは低いほうです。
しかし自民党のほうが民主党より組織としてのルールがしっかりしています。
また自民党議員は権力志向が強い、その分、民主党のような致命的な分裂はおこらないのだと思います。
民主党は組織としてのルールをなかなか決められない、ルールを決めても守れない構成員がいる、言うことを聞かない構成員がいる、自己の任務の責任を取れない、逆に発生する事象を他人の責任に転嫁する・・・
被統治能力がない組織はまとまることができません。
民主党は、どうすればガバナビリティの高い組織に生まれ変われますでしょうか。
私には特効薬のようなものは思い浮かべないのですが、ひとつだけはっきり言えることがあります。
ルールを破り続けている組織構成員は排除すべきだと言うことです。
この人のことです。
菅直人
2014年12月16日 14:45
新たな戦い多くの方から当選のお祝いの電話やメールをいただき、ありがとうございます。小選挙区で当選できなかったことは残念ですが、475番目の議席を与えていただいたのは、全国からの応援のおかげです。
これからは公約に掲げた「原発ゼロ」の実現と、「危険な安倍政権にNO!」を目指して、新たな戦いを展開してゆきます。
この方は所属する政党の公約である「2030年代原発ゼロに向け政策資源の投入」すなわち再稼働容認政策に明確に反旗を翻し、原発再稼働反対、即刻「原発ゼロ」の実現を明言しています。
また昨年の参院選東京選挙区においては、自身の所属する民主党候補を支持せず、原発反対の無所属候補を応援するという、組織構成員としてはあるまじき「利敵行為」を行っています。
当ブログは当時のエントリーで菅氏を痛烈に批判いたしました。
2013-07-04 すこし寒気をおぼえる菅直人氏のガバナビリティの低さ
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20130704
当時のエントリーより当該部分を抜粋。
さてしかし、本件が真におどろおどろしいのは、彼ら民主党執行部の能力の無さではありません。
二つ目の要因は組織としての民主党構成員のガバナビリティ(被統治能力)の著しい劣化です。
中でも・・・
水面下で彼らの前で大きく一本化の動きに立ちはだかり、執行部の決断を遅らせた民主党東京都連の重鎮、元内閣総理大臣菅直人氏の執拗な一本化妨害工作があったのであります。
菅さんははやくも民主党公認候補ではなく大河原氏を全面的に応援することを自身のブログで宣言しています。
東京選挙区民主党候補の一本化で、大河原雅子さんの公認が取り消されることになった。私はこれまでも「原発ゼロ」を鮮明にしてきた大河原さんを支援してきたが、民主党の公認がなくても大河原候補を全力で応援する。
(後略)
すごいですね、元党代表にして元総理である民主党現職国会議員が自党候補に反旗を翻し無所属候補を全面的に応援すると宣言しているのです。
この菅さんの行為の意味するところは、民主党という組織にとって完全なる「利敵行為」になるわけですが、菅さんの頭の中には組織員としての規範はほぼないようです。
驚くべきことです。
この政治家にはガバナビリティ(被統治能力)が完全に欠落しています。
このような人物を組織内に放置している限り、民主党の組織としてのガバナビリティの向上は望むべくもなく、とすれば民主党のトップのガバナンス、統治能力の向上も望めず、民主党再生への道は、実に険しいと思われるのです。
民主党非支持者の立場から言わせていただければ、菅直人氏の比例復活は民主党再生への道をより険しいものにするという点で、喜ばしいことですら、あるわけです。
ふう。
(木走まさみず)