木走日記

場末の時事評論

「小保方氏STAP検証実験参加」理研の決定に強く反対する〜これでは科学の名を借りた前時代的な「公開裁判」となってしまう

 30日付け読売新聞記事から。

小保方氏、STAP検証実験参加へ…理研発表
2014年06月30日 22時50分

 理化学研究所は30日、STAPスタップ細胞の2本の論文に関し、追加調査を始めたと発表した。

 4月までの調査で、画像データの捏造ねつぞうなど2件の研究不正が判明したが、その後も新たな疑問が相次ぎ、外部有識者による理研改革委員会は、追加調査を求めていた。理研は、追加調査は不要とする方針の転換に追い込まれた。

 追加調査で研究不正がさらに明らかになる可能性があることから、理研小保方晴子ユニットリーダーら論文著者に対する懲戒処分の審査を中断した。

 一方、STAP細胞の有無を確かめる検証実験に、小保方氏が参加することも正式に発表した。期間は7月1日〜11月30日で、小保方氏の体調が許す範囲での参加になる。理研は4月から検証実験を始めたが、難航しており、小保方氏に参加を求めた。今夏に中間報告、来春に最終報告という予定は変更しない。

http://www.yomiuri.co.jp/science/20140630-OYT1T50143.html

 うむ、理化学研究所は30日、STAP細胞の有無を確かめる検証実験に、小保方氏が参加することも正式に発表いたしました。

 当ブログはこの理研の決定、「小保方晴子ユニットリーダーら論文著者に対する懲戒処分の審査を中断」と、「STAP検証実験および小保方氏の実験参加」に強く反対するものであります。

 ・・・

 理由を述べます。

 この問題に対する当ブログのスタンスは一貫しています。

 明らかな剽窃や捏造・改竄常習者である小保方氏は科学者として完全にアウトであり、今回のSTAP論文は”全否定”しなければならない、というものです。

 3月12日の時点で当ブログとして、小保方晴子さんは科学者として完全にアウトであるとエントリーにて指摘しています。

2014-03-12 学生時代からの剽窃常習犯である小保方晴子さんは完全にアウト
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20140312

 小保方晴子さんの、博士号を得るため早稲田大に提出した英語の博士論文に、剽窃(ひょうせつ,Plagiarism)、他人の技術的成果物をクレジット表示することなく論文に取り込むことですが、学術論文では絶対にあってはならない禁じ手が認められたのです。

 エントリーより抜粋。

 うむ、小保方晴子さんの、博士号を得るため早稲田大に提出した英語の博士論文の冒頭部分が、米国立衛生研究所(NIH)のサイトの文章とほぼ同じだったことが11日判明しました。

 20ページがほぼ同じ記述ということは、これは完全に剽窃(ひょうせつ,Plagiarism)であります、他人の技術的成果物をクレジット表示することなく論文に取り込むという、学術論文では絶対にあってはならない禁じ手であります。

 ネット上ではこの冒頭部分以外でも論文本体や写真、background(引用論文一覧)など多数の箇所に剽窃やデータ偽造が疑われています。

 下のまとめサイトが技術的にもよくまとめられていますのでご紹介。

小保方晴子の博士論文の疑惑まとめ
http://stapcells.blogspot.jp/2014/02/blog-post_2064.html

 続けて、理系の学生レポートを日頃チェックしている私自身の経験から、剽窃チェッカーなどのソフトを使用していることを説明してます。

 私は工学系大学などで講師をしている関係で主に工学系ですが学生の論文を読む機会が多いのですが、剽窃チェッカーでコピペはチェックしています。

 ほっとくと課題レポートなどコピペの巣窟(そうくつ)になってしまうので、最初にしっかりとチェックし学生に突き返し、コピペはバレることを知らしめるのです。

 たとえばこのようなのです。

剽窃チェッカー:レポートなどの文がコピペかどうかチェックします
http://plagiarism.strud.net/

 不正な写真捏造や他者論文の剽窃が指摘されている今回のSTAP細胞論文だけでなく、学生時代の博士論文ですでに剽窃が指摘を受けていることから、「小保方晴子さんは学生時代からの剽窃常習犯である」とし、「STAP細胞論文の取り消しどころか博士号の取り消しも視野に入っている」との推測で結んでいます。

 早稲田大学は博士論文に引用剽窃チェッカーをかけなかったのでしょうか、初歩的な疑問なのです。

 いずれにしても私の経験上の印象では、小保方晴子さんは学生時代からの剽窃常習犯であると思われます。

 学生時代からの剽窃手法を今回のSTAP細胞論文でも犯していたのならば、完全にアウトです。

 技術的内容の正誤の以前の哲学・マナーの問題で、科学者としてアウトです。

 早稲田大学の調査を待たなければなりませんが、STAP細胞論文の取り消しどころか博士号の取り消しも視野に入っていることでしょう。

 ・・・

 さらに3月16日に理研の中間報告記者会見を受けて、「この不正な論文に対して誰も責任を取らない、ペナルティが課されないとすれば、学生たちに示しが付きません、深刻なモラルハザードになります」と警告いたしました。

2014-03-16 深刻なモラルハザードを招きかねない理研の記者会見
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20140316

 エントリーより抜粋。

 このように論文に悪意ある剽窃や改ざんが複数認められているにもかかわらず、「現時点では研究不正に当たる点はないと判断した」とは、科学実験における学術論文のステータス・権威を著しく冒涜するものです。

 一般論で言えばここまで論文に不正があれば、実験そのものに「不正」がなかったとしても、科学的信ぴょう性はゼロです。 

 私は、日頃学生の剽窃行為には厳しくペナルティを課しています、科学レポートを学生に指導する立場から今回の理研の判断は甘すぎると言わざるを得ません。

 学術論文における剽窃は場合によっては、それだけでその実験全体の価値を無くしてしまうほどの「不正」行為なのです。 

 野依理事長は記者会見で次のように話しています。

 処分とは関係ないが、今回のように未熟な研究者が膨大なデータを集積し、ずさんに無責任に扱ってきたことはあってはならない。徹底的に教育し直さないといけない。こういうことが出たのは氷山の一角かもしれない。川合理事が言うように倫理教育をもう一度徹底してやり直し指導していきたい。

 「未熟な研究者が膨大なデータを集積し、ずさんに無責任に扱ってきた」と小保方晴子さん一人に責任を集約しているような発言をしていますが、これも理事長の立場としてまったくナンセンスな発言です。

 もちろん最終的には小保方晴子さんに説明責任はありますが、野依理事長は小保方晴子さんの属する組織のトップの立場です、最高責任者です。

 これでは昔、賞味期限の不正表示が発覚した際に記者会見で最初社員のせいにして顰蹙を買った社長と同じです。

 この不正な論文に対して誰も責任を取らない、ペナルティが課されないとすれば、学生たちに示しが付きません、深刻なモラルハザードになります。

 工学系大学の教育現場に携わるものの一人として、今回の理研の判断は酷過ぎると思います。

 ・・・

 さら4月10日の時点で小保方氏が理研に不服申立書を提出したのを受けて、当ブログとして「小保方論文は"全否定"しなければなりません」と主張しました。

2014-04-10 小保方論文は”全否定”しなければならない
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20140410

 エントリーより抜粋。

 さて4月9日、小保方氏は理研に不服申立書を提出、合わせて弁護士立会のもと記者会見を開きました。

 そのとき配布したコメント全文と20頁に及ぶ不服申立書全文が毎日新聞のサイトで確認できます。

STAP細胞:小保方氏が配布したコメント全文
http://mainichi.jp/select/news/m20140409k0000e040180000c.html

<写真特集>小保方氏が理研に提出した不服申立書
http://mainichi.jp/graph/obokata/20140408stap/001.html

 一言で言えば会見で小保方氏は論点のすり換えを行っている印象を受けました。

 問題になっているのはこの論文に剽窃や改ざんがあったのかどうかという点であり、STAP細胞が確かに作製されたのかどうか実験の成否ではありません。

 もちろん実験の成否はたいへん重要なポイントですが、小保方氏が問われているのは、実験の成否以前の、科学者としてのモラル・誠実さの欠落です。

 科学者としての基礎的倫理観が身に付いていないと断じざるを得ません。

 会見では不注意を謝罪したが、不正と認定されるような論文を発表すること自体、知的誠実さに欠けているのです。

 一般論で言えばここまで論文に不正があれば、実験そのものに「不正」がなかったとしても、科学的信ぴょう性はゼロです。 

 私は、日頃学生の剽窃行為やデータや画像の改ざんには厳しくペナルティを課しています、科学レポートを学生に指導する立場から、小保方氏の反論は認めるわけにはいきません、学術論文に対する甘すぎるその姿勢を認めれば、理研のみならず日本の科学論文全般の信用問題になりかねません。

 私は多くの学生の不正論文にこれまで厳しいペナルティを課してきました。

 私のペナルティにより単位を落としたり卒業できなかった学生もおります。

 STAP細胞が存在するかしないかはたいへん重要なテーマですが、小保方氏の論文に不正があった事実にとっては、二次的なことです。

 小保方論文は"全否定"しなければなりません。

 4月17日には、笹井氏が記者会見にて、STAP細胞について「合理性の高い仮説」と述べたことに対し反論エントリーを掲載しました。

笹井氏に反論する〜現段階でSTAP細胞は「科学的信ぴょう性ゼロ仮説」である
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20140417

 このエントリーで「今回の論文に関わった科学者たちは本件からひとり残らず排除すべき」と主張しています。

 笹井氏も含めて理化学研究所の対応は非常におかしいのです。

 理研の管理責任が厳しく問われなくてはいけません。

 理研は、共著者の1人を実施責任者としてSTAP細胞再現の検証作業を行うと言っていますが、これもまったく非常識です。

 不正が認められたなら、元の論文は存在しないと同じ。「再現」というべきではないし、理研の当事者たちはこの研究から手を引くべきです。

 今回の論文に関わった科学者たちは本件からひとり残らず排除すべきです、追再実験を行うというなら、理研に関わらない第三者的立場の科学者によって行われるべきなのは最低条件です。

 そもそも不正論文に関わった主たる責任者たちがその管理責任が問われることなく追再実験を行うべきではない、というのが当ブログの理研による検証実験に強く反対する理由のひとつです。

 ましてや小保方氏を参加させるのは絶対反対です。

 本来なら不正論文の当事者である小保方氏は免職されるべきです。

 科学者としてペナルティーが課せられるべき対象者です。

 この時点でそのような小保方氏を参加させる理研の決定には、強い疑念が浮上します。

 それは理研が組織防衛といいますか組織の保身を最優先に考えているのではないか、という疑念です。

 つまり、理研はこの検証実験で小保方氏を参加させることで、STAP細胞再現の検証作業が失敗に終わった場合、小保方氏に責任を集中させることを、画しているのではないのか、ということです。

 ならばこの小保方氏参加の検証実験は、科学の名を借りた前時代的な「公開裁判」となってしまいます。

 小保方氏参加のSTAP細胞再現の検証作業が失敗に終わった場合、それが大きく報じられれば、小保方氏は否が応でも強く社会から責められることになるでしょう。

 彼女はスケープゴート(scapegoat)として社会から抹殺されかねません。

 これは人道上の大問題です。

 当ブログでは小保方氏を科学者として強く批判してきました。

 そして小保方氏の科学の世界で起した不正行為には、あくまでも科学の世界でペナルティーが課せられるべきであると主張してきました。

 しかし理研が企てている小保方氏参加の検証実験は、結果が否定された場合、科学者としてのみならず、小保方氏の市民としての社会的ポジションにも悪影響を与えかねない可能性があります、本来彼女に課さられるべきペナルティーを大きく越えた社会的罰が与えられかねない、これでは科学の名を借りた前時代的な「公開裁判」となってしまいます。

 当ブログは、小保方氏のSTAP検証実験参加という理研の決定に強く反対いたします。



(木走まさみず)