木走日記

場末の時事評論

祝! まったく問題ないぞ、黒田バズーカ砲!!〜アメリカに比べればまだまだ円の刷り方はつつましい事実がここにある

 黒田バズーカ砲が放たれました。

 「異次元の緩和」と銘打ち、「2年でインフレ率2%を達成」「2年でマネタリーベース(通貨総量)を2倍」、「2年で国債保有額と平均残存期間を2倍以上に増やす」、非常に分かり易いメッセージを市場にぶっ放しました、結果、長期金利は史上最低の0.315%を記録、為替は一気に1ドル97円台に乗り、日経平均は13000円台に跳ね上がっています。

 すばらしいですね。

 ほぼ全会一致での決定というのもすばらしいですね、天下の国有銀行であるBOJ、バンク・オブ・ジャパン、日本銀行の政策が、まるでオセロのように白から黒に綺麗に”相転移”したわけです。

 此度の黒田バズーカ、ちまたではバランスを欠いているとか、やりすぎだとかの批判も早速あるようですが、もうね、ここ20年、「バランスを重視した」「お行儀のいい」金融政策でどうしようもなかったんですから、ここは派手にぶっ放していただいてけっこうだと思うのです。

 それに例えば「2年でマネタリーベース(通貨総量)を2倍」、270兆円まで増やすという方針ですが、数字的にまったく問題ないし国際比較してももっと派手な数値を掲げてもいいくらいです。

 以下の公式のサイトより、2000年からの直近13年の日米マネタリーバランスの推移を見てみましょう。

日本銀行
主要時系列統計データ表(月次)
http://www.stat-search.boj.or.jp/ssi/mtshtml/m.html

ECONOMIC RESEARCH
FEDERAL RESERVE BANK OF ST.LOUIS
http://research.stlouisfed.org/fred2/graph/?id=AMBSL

■図1:日米マネタリーベースの推移

 ご覧のとおり、リーマン・ショック以降、アメリカはドルを刷りまくり、露骨にドル安に誘導してまいりました。

 リーマン・ショックが発生した2008年を基準にしてみれば、アメリカこの5年で3倍以上もドルを刷り続けてきたことが見て取れます。

■図2:2008年を基準とした日米マネタリーベースの推移

 アメリカに対して日本はこの間、半分の1.5倍も円を刷ってはきませんでした、これでは円高になるのは当然です。

 ここにマスメディアがほとんど取り上げていない、すごい重要な事実があります。

 実は今回の「2年でマネタリーベース(通貨総量)を2倍、270兆円まで増やす」という黒田バズーカ砲が炸裂したとしても、日本のマネタリーベースの伸び率はアメリカ様には届かない、という事実です。

■図3:バズーカ砲を放ってもマネタリーベースの伸び率はアメリカに届かない事実

 2008年基準でアメリカ3.376倍(2013年4月現在)に対して、日本は1.437倍(2013年4月現在)に過ぎず、「2年でマネタリーベース(通貨総量)を2倍、270兆円まで増やす」としても、2008年基準で2015年時点でも3.001倍に過ぎません。

 まったく問題ないということです。

 今回の黒田バズーカ砲を放ったとしても、アメリカに比べればまだまだ円の刷り方はつつましいのであります。

 いろいろ賛否ありましょうが、当ブログとしてはあえてこのタイミングで黒田新総裁にエールを送るものであります。



(木走まさみず)