木走日記

場末の時事評論

超円高時にTPPに参加する愚〜輸出は停滞し安価な輸入でデフレが深化するだけ

 ネットでは日本のTPP参加問題の議論がにぎやかですが、私から言わせていただければ、現在の「超円高」状況においてTPP(環太平洋経済連携協定)参加を目指すのは、愚かであるばかりでなく日本経済にとって致命傷となりかねません。

 1ドル75〜76円という超円高の元での関税撤廃は日本経済にとって百害をもたらすでしょう。

 前回も示しましたが、以下は1971年から40年間の円ドル為替レートの推移をグラフ化したものです。

 総じて円高基調なのですが、特にここ5年、グラフの傾きは明らかに円高傾向が強まっています、このフェーズ3の2006年から2011年の5年間では、117.32円(06年)から、75.78円(2011年10月22日)と、円はわずか5年で1.55倍も価値を高めています、この期間でならすと毎年8.35円平均で円高が進んでいることがわかります。

 尋常な状態ではないのです、ドルだけではありません、ユーロに対しても43%、韓国ウオンにに対しても46%、ほぼすべての通貨に対して円は独歩高の状態にあります。

 このような異様な通貨高の状態でTPPに参加したら何が起こるか。

 まず輸出。

 アメリカにおける主な関税品目は、せいぜい2,5%から25%です。

・乗用車2.5%
・トラック25%
・ベアリング9%
・ポリスチレン・ポリエステル6.5%
・LCDモニター・カラーTV・DVD5%
・電気アンプ・スピーカー4.9%

 こんな関税を取っ払ったとしても、5年間で50%も高くなった円の前では何の意味があるのでしょう。

 TPPに参加しても超円高の前では対米輸出促進には何の効果も無いことでしょう。

 一方輸入。

 ただでさえ超円高により輸入価格がえらく低くなっているのに、今関税撤廃などしたらアメリカなどから大量の超安価な農産物が輸入され、日本の農業は壊滅、しかも物価はさらに押し下げられデフレを深化させてしまいかねません。

 円の通貨価値がこれほど高まっているときにおろかにも関税撤廃などしたらデフレを深化させてしまうだけです。

 私は自由貿易を支持していますし、海外投資や海外資源確保など円高メリットを生かしながら日本は内需拡大を目指してデフレ脱却すべきだとも思っていますが、TPPで超低価格の海外産品が国内市場に歯止め無く輸入されれば、デフレがさらに悪化し、国内産業の打撃から失業率を高めてしまい、百害あって一利無しだと思います。

 超円高時にTPP参加・関税撤廃は最悪のタイミングです。

 なんでこんな単純なこと議論されないんでしょう。



(木走まさみず)