TPPは事実上日米二国間EPAの性格が強い〜「例外なき貿易自由化」を主張するアメリカの狙いのひとつはズバリ農産物
環太平洋戦略的経済連携協定(Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement)いわゆるTPPでありますが、原加盟国であるシンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランドの4カ国に、アメリカ、オーストラリア、ベトナム、ペルー、マレーシア、カナダ、メキシコの7カ国が交渉国として参加しております。
さてTPP参加推進か反対かが今回の選挙のひとつの争点になっているわけですが、日本経済新聞などTPP推進派はTPPに参加して「アジアの成長を取り込む」などとよく表現しています。
しかしこの表現はTPPの実態を正しく示していない一種の詭弁です。
TPP関係国+日本の市場規模をGDPでみてみましょう。
■表1:TPP関係国の経済規模
国名 GDP アメリカ 14兆2,646億ドル 日本 5兆4,589億ドル カナダ 1兆5,109億ドル メキシコ 1兆0,881億ドル オーストラリア 1兆0,106億ドル マレーシア 2,222億ドル シンガポール 1,819億ドル チリ 1,695億ドル ニュージーランド 1,284億ドル ペルー 1,275億ドル ベトナム 898億ドル ブルネイ 145億ドル
見やすく図に示します。
ご覧のとおりTPP関係国の市場規模は日米でその81%を占めているのです、TPPに参加するアジアの国々は小国ばかりで残念ながらこれで「アジアの成長を取り込む」ことは不可能です。
アメリカから見たTPP関係国の経済規模を図に示します。
■図2:アメリカから見たTPP関係国の経済規模
ご覧のとおり、アメリカから見ればTPPの55%が日本市場です、日本が参加するかしないかはアメリカにとってTPP市場規模が一気に半減以下になってしまう重大事なのです。
今度は日本から見たTPP関係国の経済規模を見てみましょう。
ご覧のとおり何のことはないTPPの76%がアメリカ市場が占めるわけです。
日本にとってTPP参加は「アジアの成長を取り込む」ことにはつながりません、そうではなくTPPは日本にとって事実上日米二国間による多角的な経済連携協定EPAという性格が強いのです。
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TPP推進派の一部からは「コメなどは例外品目として関税撤廃から守る」と主張していますが、TPPというのは本来「「いかなる産業分野、商品、サービスも除外しない包括的な協定」であります。
現に、アメリカ内では日本の交渉参加にあたって全米商工会議所 (en) など43団体が、「いかなる産業分野、商品、サービスも除外しない包括的な協定を達成すること」を要請する嘆願書を大統領に提出しており、さらにアメリカ政府も昨年11月12日、13日のAPECで野田首相に全品目の関税撤廃の原則受け入れを強く求めています。
当時の東京新聞記事から。
「例外なし」米先制 TPP交渉参加
2011年11月15日
米ハワイ州ホノルルで十二、十三両日に開かれた日米首脳会談やアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で、環太平洋連携協定(TPP)交渉への参加方針を表明した野田佳彦首相。米国からいきなり「例外なき貿易自由化」を迫られ、強力な市場開放圧力に直面した。今後の関係国との協議で、農業分野などでの「例外化」の可能性を探りたい日本の先行きに暗雲が垂れ込めた。(ホノルルで、竹内洋一)http://www.tokyo-np.co.jp/article/kakushin/list/CK2011111502000064.html
アメリカでは全米商工会議所や農業団体は強力なロビースト(圧力団体)です、彼らの圧力によりアメリカ政府は日本に対し例外品目を認めることはありえないし、現にアメリカが妥協する兆候は全く見られません、つまり「コメなどは例外品目として関税撤廃から守る」という主張は根拠がない無責任な楽観論にすぎないのです。
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デフレ経済下で日本がTPPに参加すれば競争力のない農業などの国内産業は壊滅します。
(木走まさみず)