木走日記

場末の時事評論

日本人の品格を貶めるレベルの低い産経コラム〜「日本脱原発なら中韓が狂喜乱舞」

 6日付け産経新聞「正論」から。

河添恵子 日本脱原発なら中韓が狂喜乱舞
2012.12.6 08:00
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/121206/plc12120608010005-n1.htm

 コラムは冒頭から「脱原発」、「卒原発」、「原発ゼロ」これらは「非現実&無責任なキーワード」なのであり「国民をあざむ」くものであると断じて始まります。

 「脱原発」やら「卒原発」やら「原発ゼロ」やら。この度の選挙、新旧多くの政党はいかにも耳あたりの良い「武器を持たない平和な世の中に」と同類の非現実&無責任なキーワードで国民をあざむき、票を獲得したいらしい。

 続けて日本未来の党の登場を“ホラー並みの不気味さ”と揶揄し、嘉田由紀子代表を「野望ギラギラな年増の女ボーカル」と貶します。

 とりわけ“彗星(すいせい)のごとく”ではなく“ホラー並みの不気味さ”で登場したのが日本未来の党。デビュー以来、鳴かず飛ばずの寄せ集めグループ(=小沢一郎代表率いる国民の生活が第一)に急遽(きゅうきょ)、野望ギラギラな年増の女ボーカル(=嘉田由紀子滋賀県知事)がメンバー入り、名前新たに再デビューした歌手グループみたいだ。

 「日本が脱原発へ舵(かじ)を切ることに狂喜乱舞するのは、どう考えても“反日コンビ”の中国と韓国」と指摘し、「そもそも原発の維持は「核兵器開発の可能性」を残すため」でもあると「核兵器開発」を堂々と明文化しています。

 で、日本の救世主のつもりらしいが、所詮、自然エネルギーも新たな利権では? 電気料金は据え置きで大丈夫? ドイツでは高騰し、国民が不満らしいけれど。さらに日本が脱原発へ舵(かじ)を切ることに狂喜乱舞するのは、どう考えても“反日コンビ”の中国と韓国。原子力技術者の頭脳流出で最先端技術が隣国に渡ってしまえば、それこそ国益に背く。そもそも原発の維持は「核兵器開発の可能性」を残すためでもあり、捨てる選択など日本の未来を危機的状況に陥れるだけなのだ。北朝鮮もまた弾道ミサイルの月内発射を予告しているが、日米安保条約にしたって未来永劫(えいごう)の約束事ではない。

 将来、中国や韓国で原発事故が起これば「偏西風に乗って、日本列島と海域にも放射能の雨が降り注ぐ」と指摘します。

 何より史上最悪の原発事故となった旧ソ連(現ウクライナ)のチェルノブイリ原発の二の舞いの悲劇が、原発大増設に乗り出す中国、原発強国を標榜(ひょうほう)する韓国で近い将来、起きない保証などどこにもない。であれば偏西風に乗って、日本列島と海域にも放射能の雨が降り注ぐ…。

 コラムは、日本だけの脱原発だけでは「「近隣諸国に核開発NO&原発ゼロを説得」も公約に盛り込まなければ意味がない」とし、「有権者は賢く冷静に!」で結ばれています。

 チェルノブイリ原発事故は隣国ポーランドにとっても「今でも相当なトラウマ」と聞いている。つまり政治家が「安心・安全な世の中」を本気でめざすのなら、「近隣諸国に核開発NO&原発ゼロを説得」も公約に盛り込まなければ意味がない(軍備拡大に邁進(まいしん)する隣国がOKするハズないが)。いよいよ選挙戦。有権者は賢く冷静に! (ノンフィクション作家)

 ・・・

 「中韓が狂喜乱舞」ですか、ここまでレベルの低い内容のコラムを新聞で読むとは、思いませんでした。

 河添恵子氏のこのコラムですが読後感がすこぶるよろしくないのは不必要な人を馬鹿にした下品な揶揄(ほとんど誹謗中傷に近いと感じます)だけではありません、そもそもこの国の大事なエネルギー政策を「中国や韓国が喜ぶ」という他国の振舞いで論じようとしている論説そのものの筋の悪さが致命的です。

 日本のエネルギー政策は日本人自身が真摯に思考して決めていくことです。

 日本自体が主体的に自ら考え判断していくべき国策で有り、決して他国の動向に流されていい問題ではありません。

 ましてや誰々が喜ぶなどというような次元の低い馬鹿な視点はいっさい排除すべきです。

 中国が嫌がる、あるいは喜ぶ、といったくだらない論で大衆をたぶらかすことは、この国の品位を著しく貶めていることに筆者は気づいているのでしょうか。

 この国は北朝鮮じゃないんです。

 脱原発や卒原発を批判するのは自由です、いやむしろ建設的な議論なら大いにすればいいでしょう。

 しかし、このような下劣なコラムを産経新聞は載せてはいけません。

 産経新聞自身の品位が疑られます。

 そして、こんな了見の狭い稚拙なレベルの論説をメディアが掲載しているだけで、日本人の品格が海外から疑われます。



(木走まさみず)