木走日記

場末の時事評論

「TPPに乗り遅れた」と今更韓国が大騒ぎの巻〜アメリカが韓国参加を「冷たく拒否」は自業自得、韓国自ら蒔いた種だ

 さて、環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉が閣僚会合で合意に達しました。

 TPPに参加している12カ国の国内総生産(GDP)規模は全世界の40%に達します。

 その経済規模は欧州連合EU)の1.5倍という世界最大の経済連携協定が誕生したことになります。

 TPPは米国と日本が手を握り、中国の影響力拡大に対抗するという政治的・地政学的な意味合いも極めて大きいといえましょう。

 ・・・

 さて韓国です。

 TPP参加に乗り遅れたお隣の国・韓国が今アツイのであります。

 6日付け朝鮮日報記事から。

韓国抜きの「スーパー経済同盟」TPPが大筋合意

 欧州連合EU)を超える世界最大の単一自由貿易圏を標榜する環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉が合意に達した。米アトランタで5日(現地時間)に開かれたTPP参加12カ国による閣僚会合は6日間に及ぶ交渉を終え、合意を公式に宣言した。2009年に米国の参加で本格化したTPP交渉は7年間の難産の末、交渉が一段落した。

 TPPは世界1、3位の経済大国である米国と日本が主導し、12カ国が参加する過去最大規模の多国間自由貿易協定(FTA)だ。また、中国の政治的、経済的影響力の高まりに対抗する米日の合作という側面もある。オバマ米大統領は同日、「TPPは21世紀にに必須の域内同盟、パートナー国家との戦略的関係を強化させることになる。中国のような国に世界経済の秩序を主導させることはできない」と述べた。TPPが単純なFTAではなく、米日など西側が主導する事実上の「経済・安全保障同盟」であることを示す発言だ。

 韓国政府はTPP交渉にこれまで加わってこなかった。08年に米国が参加し、TPP交渉が本格化して以降、韓国は韓中FTA合意に集中し、タイミングを失ったと指摘されている。このため、「韓国が『環太平洋経済同盟の落伍者』になりかねない」(崔炳鎰=チェ・ビョンイル=梨花女子大教授)という懸念も聞かれる。 

 対外経済政策研究院(KIEP)は5日、韓国がTPPに参加すれば、発効から10年で計1.8%の国内総生産GDP)増大効果があるとする一方、10年間参加しない状態が続けば逆に0.12%の減少を招くと試算した。韓国貿易協会のパク・チョンイル通商研究室長は「経済的な面以外でも、世界の最強国であり韓国の同盟国である米国が主導する経済同盟という点で、一刻も早くTPPに参加するのが望ましい」と述べた。

 韓国産業通商資源部(省に相当)はTPP交渉合意を受けて発表した報道資料で、「新たな世界的通商規範になるTPP交渉が合意に至ったことを歓迎する。韓国政府は国益を最大化する方向でTPP参加を積極的に検討していく」とした。

李仁烈(イ・インヨル)記者
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2015/10/06/2015100600711.html

 記事にもあるとおり、韓国は「韓中FTA合意に集中し、タイミングを失った」わけであり、今更「韓国が『環太平洋経済同盟の落伍者』になりかねない」(崔炳鎰=チェ・ビョンイル=梨花女子大教授)と焦っても、自業自得の側面が強いわけですが、朝鮮日報だけでも6日付けだけで上記記事も含めてTPP関連記事が社説も含めて溢れているわけです。

TPP大筋合意:韓国の参加、日本が大きな不確定要素に
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2015/10/06/2015100600731.html
TPP大筋合意:韓国は中国主導のRCEP参加
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2015/10/06/2015100600748.html
TPP大筋合意:日本車特恵関税適用、米議会承認が焦点
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2015/10/06/2015100600757.html
TPP大筋合意:韓国貿易協会「韓国も参加急げ」
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2015/10/06/2015100600805.html
【社説】韓国経済の成長率低下、TPP参加で歯止めを
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2015/10/06/2015100600866.html

 なんというか全体的に「仲間はずれ」感が強い記事が多いのは、実は朴槿恵政権になってから、より正確には日本がTPPに正式参加表明した後から、それまで韓国は中韓FTA交渉一本だったのに、あわててTPPに参加表明しようとTPPを主導する米国と水面下で交渉を続けていたからです。

 今年3月には、米ハワイで開かれたTPP首席交渉官会合において、TPPに参加する意向を表明した韓国は首席会合の傍聴を希望しましたが、アメリカに冷たく拒否されます。

(参考記事)

韓国、TPP会合で情報収集=参加視野に交渉関係者と接触

 環太平洋連携協定(TPP)に参加する意向を表明した韓国が首席交渉官会合で情報を収集していることが13日、明らかになった。
 韓国の担当者は米ハワイ島ワイコロアの会場で交渉関係者などと面会し、協議の課題などを聞いている。
 韓国は2013年11月、TPP参加を目指す方針を表明し、米国などとの事前協議や参加条件の調査を始めた。
 関係者によると、韓国は今回の首席会合の傍聴を希望したが、認められなかった。

(後略)

(2015/03/14-15:25)
http://www.jiji.com/jc/c?g=eco_30&k=2015031400234

 さらに4月には韓国政府はアメリカ政府にTPP参加を公式打診しますが、「米国はいつかは韓国もTPPに参加すべきだと考えているが、それは今ではない」と、正式にアメリカに韓国のTPP原加盟国入りをきっぱり拒否されます。

韓国、TPP参加を公式打診…米国は否定的な反応
2015年04月16日16時33分
[ⓒ 中央日報日本語版] comment44hatena1
韓国政府が米国に対して環太平洋経済連携協定(TPP)参加を公式に打診したが米国側が否定的な反応を示した。ワシントン・ポスト(WP)が15日(現地時間)、報じた。

同紙は文在ド(ムン・ジェド)産業通商資源部第2次官を含む韓国の通商官僚が、最近、米ワシントンを訪問してウェンディ・カトラー貿易代表部副代表代行やキャロライン・アトキンソン国家安全保障会議(NSC)副補佐官に会い、TPP問題を議論したと伝えた。

しかし、動詞によると、米国は現段階では韓国を追加で含める問題について否定的な反応を示した。同紙は、韓国通商当局消息筋を引用して「米国はいつかは韓国もTPPに参加すべきだと考えているが、それは今ではない」とし「米国は現在参加中の加盟国だけでも複雑な状況」と話したことを伝えた。

http://japanese.joins.com/article/114/199114.html?servcode=A00§code=A20

 韓国のいまさらの環太平洋経済連携協定(TPP)創立加盟国としての参加に対し、米国がはっきり否定的な反応を示すのは、経済的政策として今までアメリカ主導のTPPを無視し中韓FTAを優先、さらには日米不参加の中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)に、アメリカの反対を押し切って強引に参加したことが原因とも分析されています。

 なぜ韓国がこれほどまでに、TPP創立加盟国に執着したのか、上記韓国日報記事より、当該箇所を抜粋してご紹介。

 それは、原参加国になれなかったことに伴う「参加コスト」問題があるからだと指摘しています。

 TPP参加方針を韓国政府が固めた場合、韓国はTPPの原参加12カ国との交渉に着手しなければならない。韓国はTPP原参加12カ国のうち、日本とメキシコを除く10カ国と既にFTAを結んでいる。このため、交渉はスムーズにいく可能性がある。

 ただ、原参加国になれなかったことに伴う「参加コスト」問題は避けられない難関になる。自動車、機械産業分野で韓国に大幅な開放を要求する可能性が高い日本が大きな不確定要素だ。

 西江大の許允(ホ・ユン)国際大学院長は「韓国が新規参加国としてTPPに加わることを目指す場合、参加12カ国全ての同意が必要だが、その過程で原参加国が『同意』の見返りに自国に有利な追加条件を要求する可能性が高い」との見方を示した。

 「原参加国が『同意』の見返りに自国に有利な追加条件を要求する可能性が高い」特に「自動車、機械産業分野で韓国に大幅な開放を要求する可能性が高い日本が大きな不確定要素」だというわけです。

 ・・・

 TPP原加盟国入りを逃した韓国ですが、経済分野で日米より中国を優先してきた韓国の「自業自得」な側面が強いわけですが、その論調はいつのまにか韓国が「被害者」のように変質していて興味深いです。

 韓国が望んでいるのに参加交渉をアメリカに「冷たく拒否」され、今後のTPP参加交渉では、きっと意地悪な日本が韓国参加の「最大の障壁」となる・・・

 やれやれです。

 韓国は、経済面でも安全保障面でも、中国につくかアメリカにつくか明確にせず、都合よく「二兎を追う」ことに邁進してまいりました。

 それが今、特に米国において、反感を買いつつあることを、もう少し自覚したほうがよろしいでしょう。

 自ら蒔いた種なのです。

 ふう。



(木走まさみず)