「死の海」との距離感が気になる輸入アサリたち〜実は「中国産」よりも「北朝鮮産」のほうがまだマシなんじゃないの?
●北朝鮮アサリ:「中国産」で偽装輸入? DNA鑑定も検討
今日(28日)の毎日新聞電子版速報記事から・・・
北朝鮮アサリ:「中国産」で偽装輸入? DNA鑑定も検討
北朝鮮と中国からのアサリ輸入の推移 輸入アサリの出所を探れ−−。北朝鮮に対する事実上の経済制裁により、輸入が止まったはずの北朝鮮産アサリが、中国経由で国内に入っている疑いが浮上し、政府が対応に乗り出した。税関当局は、輸入業者に対し、中国政府の発行する原産地証明書の提示を求めるなど警戒を高めているが、書類だけでは限界がある。このため農水省は、アサリのDNA鑑定を利用して産地を特定する技術も含め追跡法を検討している。【山本明彦】
財務省の貿易統計などによると、北朝鮮からのアサリの輸入はピークだった01年度に4万3734トン(52億3603万円)と輸入量全体の6割を占めた。しかし、座礁などに備えた保険に入っていない外国船の入港を禁じる改正油濁損害賠償保障法が05年3月に施行され、保険に未加入の北朝鮮船の入港が激減。05年度の「北朝鮮産アサリ」の輸入量は前年度の1割足らずの2056トンまで激減した。
ところが、輸入総量の落ち込みは小幅だった。中国からの輸入が急増したためで、05年度の中国産は前年度の約2倍の3万1144トンと、輸入全体の8割に達した。特に同法施行の05年3月は変化が顕著で、「中国産」は前月比4倍超に急増し、「北朝鮮産アサリの迂回(うかい)輸入をうかがわせる不自然な動き」(財務省幹部)と見られている。
JAS(日本農林規格)法に基づく品質表示基準は、輸入品に対し原産国の表示を義務付けている。中国から輸入された場合でも、北朝鮮で生育したアサリは北朝鮮産と表示しなければならないが、北朝鮮の原産国表示付きで中国から輸入される例は増えていない。
改正油濁損害賠償保障法は北朝鮮船の大半が保険未加入であることから、事実上の経済制裁の意味合いがあった。しかし迂回輸入されると制裁効果がなくなってしまうため監視強化に乗り出した。
中国と北朝鮮のアサリの産地は海域が同じなので、DNA鑑定には、技術的な困難もあるとみられるが、対策開始には、迂回をけん制する狙いもあるようだ。
毎日新聞 2006年7月28日 15時00分
http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20060728k0000e040076000c.html
うーむ「北朝鮮に対する事実上の経済制裁により、輸入が止まったはずの北朝鮮産アサリが、中国経由で国内に入っている疑いが浮上」したそうであります。
「05年度の「北朝鮮産アサリ」の輸入量は前年度の1割足らずの2056トンまで激減」したのに「「中国産」は前月比4倍超に急増し、「北朝鮮産アサリの迂回(うかい)輸入をうかがわせる不自然な動き」(財務省幹部)のため「輸入総量の落ち込みは小幅」なのだそうです。
うーむ、北朝鮮産を中国側がいったん引き取り中国産と偽って輸出しているということなんでしょうか。
なんてことだ・・・
しかしなあ、「中国と北朝鮮のアサリの産地は海域が同じなので、DNA鑑定には、技術的な困難もある」そうであります。
・・・
ヤバイなあ(汗
「中国と北朝鮮のアサリの産地は海域が同じ」って・・・
・・・
ふう。
●問題なのは今の方法では国内産と海外産の区別はしっかりできるが、中国大陸産と朝鮮半島西海岸産の区別はまったくできないこと
「独立行政法人水産総合研究センター」のプレスリリースによれば、この記事での言うDNA判別法は今年の5月に発表されています。
平成18年5月9日
独立行政法人水産総合研究センター
「中国産アサリの迅速判別法を開発」
http://www.fra.affrc.go.jp/pressrelease/pr18/180509/
平成18年5月9日
独立行政法人水産総合研究センター中国産アサリの迅速判別法を開発
【要旨】
近年、国内のアサリ生産量の減少にともない、海外からの輸入量が急増しています。こうしたなか、一部で輸入アサリを国内産と表示する不適正表示が行われ、アサリの産地表示に関する消費者の信頼が損なわれました。そこで、独立行政法人水産総合研究センターでは遺伝子並びに成分分析など複数の方法によるアサリ産地判別技術の開発を行っています。今回、農林水産省の予算(「農林水産研究高度化事業」緊急課題即応型調査研究)により、国内産と輸入アサリ(中国からのものと韓国南岸からのもの)のミトコンドリアDNAの全長解析と、それぞれの塩基配列の違いを精査しました。その結果、中国産のものは2系統、韓国南岸産のものは1系統に整理されることを明らかにし、それぞれのデータベースを作成しました。これにより、系統のわからない輸入アサリについても、ミトコンドリアDNAの塩基配列解析を行いデータベースと照合することで、その産地の判別が可能となりました。さらに、塩基配列解析は煩雑で時間がかかることから、塩基配列の違いが比較的大きい中国産アサリについてPCR法を用いた迅速判別手法を開発しました。この技術は、今後、JAS法に基づいて表示の科学的検証を担当している独立行政法人農林水産消費技術センター等の機関に技術移転する予定です。
こちらのPDFファイルを見ればアサリの大半が輸入に中国・韓国・北朝鮮からの輸入に頼っていることがグラフにて理解できます。
「アサリの生産量と輸入量の推移」
http://www.fra.affrc.go.jp/pressrelease/pr18/180509/asari1.pdf
で、以下のPDFファイルを見れば、輸入アサリの産地判別の流れが理解できます。
「判別方法フロー図」
http://www.fra.affrc.go.jp/pressrelease/pr18/180509/asari1.pdf
ふーん、簡単に解説しておきましょう。
現在日本で流通しているアサリは、国内産、中国大陸産、朝鮮半島西海岸産、朝鮮半島南海岸産の4つに大別できるのであります。
で、PCR−RFLP法では、中国大陸産・朝鮮半島西海岸産と、国内産・朝鮮半島南海岸産に分別できるのであります。
次に国内産・朝鮮半島南海岸産ですが、塩基配列解析とデータベースの照合により、国内産と朝鮮半島南海岸産を区別することに成功したのであります。
でね、問題なのはこの方法では国内産と海外産の区別はしっかりできるのですが、御覧の通り、中国大陸産と朝鮮半島西海岸産の区別はまったくできないんですよね。
上記毎日記事が言ってた「中国と北朝鮮のアサリの産地は海域が同じなので、DNA鑑定には、技術的な困難もある」とはこのことであろうと思います。
・・・
「中国と北朝鮮のアサリの産地は海域が同じ」で「朝鮮半島西海岸」ってことはですよ、あそこじゃないですか(汗
黄海。
・・・
ヤバイなあ。
●毎年28億トンの汚水と約70万トンの汚染物質が垂れ流れている海域との距離感が気になるアサリたち
一週間前の朝鮮日報のショッキングな記事。
「死の海」と化した渤海
原因は工業廃水渤海は遼東半島と山東半島に囲まれた中国唯一の内海だ。一時は「魚の宝庫」、「海洋公園」とも呼ばれていた。しかし、天津を中心とする渤海湾地域の経済が急速に発展したことで、渤海は魚さえ住めない巨大な汚染池と化している、と北京青年報が19日報じた。
中国の国家海洋局が2005年に渤海の汚染状況を調査した結果、渤海の海洋生態系はほぼ壊滅状態に達していた。以前はクルマエビ、ハマグリ、ヒラメ、イシモチ、スズキ、イカなどが多く獲れていたものの、今ではこれらの魚種も一切姿を消してしまった。
天津市塘沽区の水産局漁政課の関係者は「魚の宝庫として有名だった渤海湾海域が、今では魚1匹見られない死の海と化してしまった」と話している。
汚染海域が2003年以来、引き続き拡大し、悪化の一途をたどっている。海水の水質汚染基準をオーバーしている面積が渤海全体の56%に達している。
渤海汚染の3大原因は生活用水、工業廃水、農薬・化学肥料だ。天津市海洋局が最近渤海に流れ込む15の汚水を調査した結果、15すべてが汚染基準を超えている。
このような状況は何も天津市に限ったことではない。遼寧、河北、山東省を含む計105の汚水区を通じて毎年28億トンの汚水と約70万トンの汚染物質が渤海に流れ込んでいる。
中国政府は2001年から「渤海碧海行動計画」という汚染防止プロジェクトに着手している。にもかかわらず状況が悪化しているのは関連する政府機関の間で権力争いがあるためだ、と環境専門家たちは指摘している。北京=チョ・ジュンシク特派員
http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/07/20/20060720000044.html
この記事自体は黄海の北西に位置する遼東半島と山東半島に囲まれた中国唯一の内海、渤海のことですが「天津を中心とする渤海湾地域の経済が急速に発展したことで、渤海は魚さえ住めない巨大な汚染池と化している」のだそうです。
で深刻なのは「渤海汚染の3大原因は生活用水、工業廃水、農薬・化学肥料だ。天津市海洋局が最近渤海に流れ込む15の汚水を調査した結果、15すべてが汚染基準を超えている。 」だけでなく「このような状況は何も天津市に限ったことではない。遼寧、河北、山東省を含む計105の汚水区を通じて毎年28億トンの汚水と約70万トンの汚染物質が渤海に流れ込んでいる。」そうなのです。
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「毎年28億トンの汚水と約70万トンの汚染物質が」垂れ流しですと・・・
もうね、まだ見てない人は記事の写真を是非見て下さい。
http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/07/20/20060720000044.html
当たり前だけれど渤海は黄海の一部なわけでかなり広範囲に汚染が進んでいることが一目でわかりますです。
しかも明らかに渤海以外の外の海(黄海)までもかなり汚染がされているし・・・
写真では黄海南部がカットされているからわからないですが、下部の汚染地域は中国最大の商業都市上海海域ですからね。
みなさん、カットされている下の部分も含めて黄海全体のイメージで汚染状況を想像してみて下さい。
ふう。
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「中国と北朝鮮のアサリの産地は海域が同じ」ですか・・・
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どうせ北朝鮮産か中国産か区別つかないんだったら、まだ工業化が進んでいないだろう黄海東域の北朝鮮産のほうがましじゃないかと思ったのは私だけでしょうか(爆笑)
あるいはいっそ、中国産も禁止しちゃうとか・・・
アサリバター大好きなんだけど(汗
(木走まさみず)