木走日記

場末の時事評論

不法操業事件の背景にある中国の抱える恐ろしい枯渇問題〜日本は対岸の火事とのん気に構えていて良いのか

 13日付け産経新聞電子版速報記事から。

中国政府、謝罪せず 韓国報道が一斉に反発「漁民でなく海賊だ」
2011.12.13 10:43 [韓国]

 黄海韓国海洋警察の隊員(41)が不法操業の中国漁船の乗組員に殺害された事件で、13日付の韓国各紙は、中国外務省が12日の定例記者会見で謝罪しなかったことに一斉に反発した。

 朝鮮日報は「韓国の隊員を殺しておきながら、中国はひと言の謝罪もない」と批判。中央日報などは、亡くなった隊員らが中国船の船長(42)を取り押さえようとした時に、別の中国漁船が捜査を妨害するため高速で追突。衝撃で隊員がバランスを失ったところを船長が割れたガラスで脇腹を突き刺したと伝えた。同紙は、船長らは「漁民でなく海賊だった」との見出しで報じ、東亜日報は「泥棒に入った家の主人を殺した強盗殺人犯と違いはない」と社説で非難した。

 「殺された韓国の海洋主権」と大見出しを打ったソウル新聞は「政府はこれ以上、海で(韓国の)公権力が嘲笑される事態を容認してはならない」と求めた。(共同)

http://sankei.jp.msn.com/world/news/111213/kor11121310440001-n1.htm

 うむ、韓国海洋警察隊員が不法操業の中国漁船の乗組員に殺害された事件で、中国外務省が12日の定例記者会見で謝罪しなかったことに、韓国メディアが反発しているとのことです。

 「泥棒に入った家の主人を殺した強盗殺人犯と違いはない」(東亜日報社説)と怒りを露にしていますが、この事件、中国漁船がなぜ拿捕の危険をおかしてまで鉄パイプなどで武装(?)してまで韓国の領海侵犯し不法操業を繰り返すのか、その本質的な原因を考えなければならないと思います。

 それは、目覚しい経済発展で生活水準が向上した中国人が、その食生活も豊かになり、中国が世界の水産物消費量の3分の1を占める「水産物消費大国」となっている事実と密接に繋がっているからです。

 なおかつ、経済発展の負の産物として、中国沿岸では乱獲と深刻な海洋汚染により、漁業資源がほぼ底をついていることが、中国漁船が領海侵犯して不法操業を繰り返さざるを得ない主因と見られるからです。

 中国国営新華社系の国際情報紙も「近場の海には魚がいない」ことが「何度も捕まりながらも遠洋に出ていく中国漁民たち」の動機であると報じています。

近場の海には魚がいない…何度も捕まりながらも遠洋に出ていく中国漁民たち―中国紙
Record China 11月24日(木)7時33分配信

22日、中国国営新華社系の国際情報紙は、中国の漁民たちが日本や韓国の当局に何度も捕まるというリスクを冒してまで沖合・遠洋漁業に繰り出すのは、乱獲などによる近海資源の枯渇が原因だと報じた。

2011年11月22日、中国国営新華社通信発行の国際情報紙・国際先駆導報は、中国の漁民たちが日本や韓国の当局に何度も捕まるというリスクを冒してまで沖合・遠洋漁業に繰り出すのは、乱獲などによる近海資源の枯渇が原因だと報じた。

(後略)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20111124-00000006-rcdc-cn

 13日付け朝鮮日報記事では中国の漁場は乱獲だけでなく「環境汚染で枯渇」しているとしています。

違法操業:中国の漁場、環境汚染で枯渇

水産物消費は急増、需要に追い付かず海外の漁場へ

 中国漁船による違法操業が後を絶たないのは、経済成長を受け中国国内の水産物需要が急増しているにもかかわらず、中国近海の漁業資源がほぼ底をついているのが主な要因だと考えられる。

 中国沿岸の主な漁場は、工業化の過程で新たに開発された港湾や大規模化学プラントなどによる深刻な環境汚染によって、漁業資源が急速に減少している。中国漁船は自分たちの生存基盤である中国の漁場が壊滅状態になったため、韓国や日本、東南アジア諸国の海域に進出して違法操業を行っているというわけだ。

(後略)
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2011/12/13/2011121301012.html

 少し古いですが3年前のBBCニュースで取り上げられた世界海洋汚染地図の記事から。

Map shows toll on world's oceans

http://news.bbc.co.uk/2/hi/science/nature/7241428.stm

 中国沿岸部が広範囲で"Very high impact"と茶色の高濃度汚染地域になっていることが理解できます。

 下記中国新聞社の転載記事によれば「近海の環境汚染と生態系破壊が依然深刻な状況」ことを中国政府当局幹部(中国環境保護部副部長)も認めています。

近海の環境汚染と生態系破壊が依然深刻な状況―中国
2011年12月3日 21時36分

2011年12月1日、中国新聞社によると、中国近海の環境汚染と生態系の破壊問題が依然深刻であることが分かった。11月28日から30日まで海南省海口市で行われた第7回中国生態健康フォーラムの開幕式で、中国環境保護部の呉暁青(ウー・シャオチン)副部長が述べた。

(後略)

http://www.excite.co.jp/News/chn_soc/20111203/Recordchina_20111203024.html

 ・・・

 世界の水産物の3分の1を消費するようになった中国が自領域の水産資源を乱獲及び海洋汚染で枯渇してしまったことが今回の中国漁船事件の背景にあるのが事実だとすれば、ことは深刻です。

 この事件を日本は対岸の火事と他人事とするわけにはいきません。

 韓国の今回の事件は、日本は明日はわが身と受け止めて十分に対策を急ぐべきです。

 尖閣諸島付近を含め、いつ日本領海の水産資源が中国漁船によって不法操業され荒らされてしまっても不思議ではない状況です。

 今回の事件の背景には、中国は13億の食を満たすため乱獲によりなおかつ海洋汚染により、自国の水産資源をほぼ枯渇させてしまったという恐ろしい事実があるのです。



(木走まさみず)