木走日記

場末の時事評論

問題はあっても『9月始業』の大胆な決断を支持〜大学や短大・専門のこれ以上の授業開始延期は、各種国家資格試験制度が事実上瓦解してしまう

安倍総理大臣は新型コロナウイルスの感染にともなって学校の休校が長期化していることに関連し、入学や新学期の時期を9月に遅らせることも選択肢の一つという考えを国会にて示しました。

長年、教育現場に従事させていただいている私ですが、基本的にこのタイミングでの『9月入学』に賛成いたします。

私の賛成する理由を説明させていただきます。

私が外来講師をしている学部から、4月からの授業開始を5月12日以降に延期する旨のメールが最初に届いたのは4月1日のことでした。

続いて新しい学事予定(年間スケジュール)表が届きまして、関連して私が担当する科目の「シラバス」を早急に再作成してメールするように指示がありました。

シラバス」とは教師が学生に示す講義・授業の授業計画のことですが、新しいスケジュールに合わせて授業計画を微調整するのでした。

新しい学事予定(年間スケジュール)表は、当たり前ですが、授業開始が1ヶ月遅れていますので、それを取り戻すべく、夏休みが大幅に短縮されていました。

ほとんどの東京の大学・大学院や短大・専門などで、授業開始を1ヶ月延期することによる授業計画変更がなされているはずです。

しかし、もし授業開始をもう1ヶ月延期となるとなれば、夏休みが無くなるだけでなく、後期授業日程(10月〜)に影響を与えることは必至です。

そしてそのような小刻みな授業開始時期の延期は、教育現場に深刻な混乱(一部取り返しのつかない悪影響)をもたらすことでしょう。

これ以上のリスケジュールは無理があるのです。

一例を挙げましょう。

今日本で最も必要とされる技師資格のひとつが、に臨床検体採取業務を行うことができる『臨床検査技師』という国家資格があります。

次の厚生労働省 医薬・生活衛生局の『新型コロナウイルス感染症 PCR 検査にかかる職員の募集について』でも、明確に応募資格に『臨床検査技師』有資格者とうたわれています。

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http://www.kankyokansen.org/uploads/uploads/files/jsipc/PCR_bosyuyoko.pdf

臨床検査技師は国家資格で、臨床検査技師になるには、臨床検査技師国家試験に合格する必要があります。

その受験資格を得るには、「臨床検査学科」(4年制大学、3年制短大・専門学校)で国指定の臨床検査技師養成課程を修了することが条件になります。

で、臨床検査技師国家試験は毎年2月に実施されています。

臨床検査学科の前期授業をこれ以上遅らせると、来年2月の国家試験までに、臨床検査技師養成課程を修了することが困難になってしまうのです。

国会試験実施月を後ろに回すなど配慮が必要ですが、3月卒業のスケジュールから、実は後ろに延ばすことは事実上不可能なのです。

別に『臨床検査技師』だけではないでしょう、大学や短大・専門のこれ以上の授業開始延期は、多くの国家試験取得が極めて困難になってしまう可能性が大きいのです。

ですから、5月6日以降も学校開始が延期されるのだとすれば、その可能性は大きいと思いますが、ならば、これ以上教育現場の混乱を防ぐために、大胆に9月始業に舵をきるべきです。

もちろん、各国家試験の開催月も5ヶ月シフトし対応するなど、その影響は社会全体で非常に大きいモノがあり、特に半年伸びる学生の学費の問題は、大きな政治判断が求められることでしょう。

それでも、ジリジリと授業開始が伸び伸びになり、結果各種国家資格試験制度が事実上瓦解してしまうよりは、問題はあっても『9月始業』の大胆な決断を支持いたします。

ただし、その決断すらジリジリ遅れるとするならば、教育現場にとり対応不可能となり最悪となりましょう。



(木走まさみず)