木走日記

場末の時事評論

携帯端末&ネットは史上最強のカンニングツールである事実が広く認知された

 27日の読売新聞社説は、京都大学などの入試問題の一部が試験時間中にインターネット上に流出した問題を取り上げています。

入試ネット不正 徹底解明と「携帯」対策を急げ(2月28日付・読売社説)
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20110227-OYT1T00821.htm

 教育関係者は頭が痛いでしょうがついにネットがカンニングの手段に利用される時代が来たのだと覚悟を決めるべきですね、この問題、実は大学入試だけではなく、あらゆる国家試験、資格試験、高校入試、中学入試、さらに踏み込めば、各学校における中間や期末などの定期試験でも起こりうる事態だと言えましょう。

 今回利用されたのはヤフージャパンが運営する質問投稿サイトである「ヤフー知恵袋」ですが、何も公開された掲示板を利用しなくとも協力者が存在すればもっとマイナーなサーバーを経由して同様の行為をすることは可能ですから、「ヤフー知恵袋」側に監視強化を求めてもそれでは何も解決しないでしょうね。

 読売社説は、韓国で2004年の大学入試で携帯電話を悪用した組織的なカンニングが発覚した事例に触れつつ、再発防止策は「試験会場でのチェックを強化する」しかないとしています。

 再発を防止するには、受験生の所持品の検査や監視員の増員など、試験会場でのチェックを強化するしかあるまい。

 韓国では「見張り要員の監督官全員に空港などで使う携帯用の金属探知機も持たせている」そうであります。

試験見張りが金属探知機…韓国カンニング対策
(2011年2月27日19時51分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20110227-OYT1T00574.htm

 技術面で可能であろう再発防止の対策をいくつか考えてみたいです。

【1】監督官全員に携帯用金属探知機も持たせる

 韓国と同様の策ですが実現可能性としては技術的には問題がない一番現実的な策です。

 空港などと同じように入試会場入り口にてチェックする方法も検討できそうですね。

【2】携帯電話を試験時間内使用不能にする(1)

 3G通信といいますが携帯電話はもよりの無線基地局と無線通信しています。事業者ごとに無線基地局も別々ですが、事業者の協力の下で試験会場と通信可能アリアにある無線基地局すべてを試験時間中使用不能にしてしまえば、携帯電話を使うことができなくなります。

 この場合の問題は、そのエリアのすべての携帯電話が一時的に使用不能となりますので、試験会場外の一般の人々の利便性に影響が出ます、また試験会場が分散してたり、何十万人も受験するセンター試験などでは使用不能エリアが分散・拡大してしまいますので、現実的には難しいと思われます。

【3】携帯電話を試験時間内使用不能にする(2)

 試験会場に携帯電話などの電波を遮断できる通信機能抑制装置を設置する方法です。

 現在一部の劇場ホールや銀行ATMコーナーで設置されている装置で、狭い空間をポイントで「圏外」にすることが可能です。

 私は将来的には携帯電話抑止装置を設置して試験会場を一時的に「圏外」するこの方法が一番効果的な対策になると思います。

 携帯電話抑止装置の具体的機能として参考サイト。

http://www.macros.co.jp/merchandise/telepause/feature.html

 で、問題は現在の携帯電話が無線通信能力が進歩して通信手段が複数あることです。

 「携帯電話抑止装置」を使用して入試会場を「圏外」にしたところで、携帯電話網を利用した「3G」通信は遮断できますが、Wi−Fi通信でアクセスポイントとダイレクトに通信されたり、WiMax利用可能エリアならばWiMaxアダプタで広域通信されたならば防ぎようがありません。

 つまり上記【3】の「携帯電話抑止装置」を使用して入試会場を「圏外」にする方法でも万全であるとは言えないわけです。

 この辺りの携帯電話無線方式の解説は以下のエントリーでしていますので関心のある読者はどうぞ。

2011-02-02 「おサイフケータイ」から「WiFi(ワイファイ)」まで優しく解説
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20110202

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 こうして検討してみると、「監督官全員に携帯用金属探知機も持たせる」やり方が実現性としては一番手っ取り早そうですが、そうかといって日本の現状では「かばんの中までチェックするのは困難。まして上着やズボンのポケットに入れられたら対処できない」(大阪大学関係者)と、持ち物検査する事自体が荷が重いようです。

 なかなか一朝一夕に解決できる防止策はないのが現実ですが、この問題の対策は、例えば試験会場に携帯電話抑止装置を設置する場合など電波に関する法律の再整備も必要となるわけですので、教育関係者にあずけることなく政府が積極的に動くべきだと思います。

 この問題を放置せず、早急に専門家を集めて検討委員会等を起こし、必要な法整備も含めて実現可能な防止策を掲げる必要があると思います。

 今回の事件で残念ながら、携帯端末&ネットは史上最強のカンニングツールである事実が広く認知されてしまいました、このことを、政府は重く受け止めるべきでしょう。



(木走まさみず)