日本の民主主義は十分『多様性の尊重』が実現していると思う
今回は小ネタです。
参院選挙結果についての真面目な論説は、他の有能な論客たちに任せて、例によって当ブログは少し角度を変えて脱線気味のお話です。
ネットにて脳科学者の茂木健一郎氏が今回の選挙結果を受けて面白いことをエントリーしています。
茂木 健一郎
2016年07月11日 07:50
与党体質と、野党体質
http://blogos.com/article/182882/
エントリーの冒頭から嘆き節で始まります、失礼して冒頭箇所をご紹介。
昨日、開票速報を見ていて、「ああ、そういえば」と思い出したことがあった。20歳で選挙権を得てから今日まで、おそらく二十余回の「国政選挙」があったと思うが、自分が投じた側が「勝った」ことよりも、「負けた」ことの方が多いように感じる(笑)。
で、自分は「与党体質」ではなく「野党体質」なのだろうと論を展開して、エントリーの結論はこうです、失礼してエントリーの結びをご紹介。
「与党体質」か、「野党体質」か、という視点でさまざまな組織、人を見ると、いろいろな人間模様がそこに表れて、面白い。多様性の尊重、ということがしばしば言われるが、多数決の民主主義は実は野党体質よりも与党体質に優しいということは、与党体質の人は案外気づきにくいのだと思う。
彼の結論はこの一文に凝縮されています。
多様性の尊重、ということがしばしば言われるが、多数決の民主主義は実は野党体質よりも与党体質に優しい
なるほどですね、選挙結果を眺めながら、この結果を「だれだれに優しい」とか「だれだれに優しくない」とか、脳科学者が非科学的非論理的に徹して、おのれの感性による情緒によってまとめているところが、この論説を誠に趣深いものにしておりますです。
確かに「多数決の民主主義」は完全な制度とは言えないのはそのとおりでしょう、多数意見が必ず「正」であるとは限らないわけですからね。
多数決を重んずる民主主義において、歴史を紐解けば、ときの多数意見が「誤」すなわち結果的に間違っていて(一部少数意見が「正」であった)政策に重大な取り返しのつかない誤りを犯したケースも、少なからず起きてきたわけです。
70年前のチャーチルはそのような民主主義の限界性について喝破しています(ただし民主主義以上の政治形態は残念ながらいまだにないという条件付きで)。
民主主義が完全で賢明であると見せかけることは誰にも出来ない。実際のところ、民主主義は最悪の政治形態と言うことが出来る。これまでに試みられてきた民主主義以外のあらゆる政治形態を除けば。
(ウィンストン・チャーチル首相の1947年11月11日、英国の下院演説より)
茂木氏のこの嘆きは、「もう少し『多様性の尊重』をしようよ、すなわち、『与党体質』な多数意見だけでなく、いろいろな意見、私のような『野党体質』な少数意見も尊重しようよ」、とも聞こえてくるわけです。
・・・
さてここからは、茂木氏の論説へのささやかな反論といいますか補足であります。
確かに選挙制度で言えば、今回32あった参院の一人区や衆院小選挙区においては、当選は一名のみでありますから最も多くの支持を得た候補者のみの意見が吸い上げられます、当選者以外の投票行為はまったくの無駄いわゆる「死に票」であります、その意味で『多様性の尊重』はまったくなされていません。
しかしながら、だからこそそこで『多様性の尊重』を担保するため、少数意見でも当選しやすい比例区の枠が、参院においても衆院においても、一定数用意されているのですね。
今回の参院においても十分に比例区において、『多様性の尊重』はなされていると思いますです。
具体的事例で示します。
ひとつめ。
民進・有田芳生氏が当選…比例選
読売新聞7月11日(月)5時54分有田氏はジャーナリストで、テレビのコメンテーターなどとして、1995年に起きた地下鉄サリン事件でオウム真理教を厳しく批判するなど活躍した。2010年参院比例選に民主党から出馬し、初当選した。今回の参院選では改憲の阻止や、北朝鮮による拉致問題の解決などを訴えてきた。
http://news.biglobe.ne.jp/domestic/0711/ym_160711_6212750202.html
ふたつめ。
社民党の福島瑞穂副党首が4回目の当選…比例選
2016年07月11日 02時29分
比例選で、社民党現職の福島瑞穂副党首が4回目の当選を決めた。福島氏は、1998年参院比例選で初当選。2003年、土井たか子氏の後任として党首に就任した。09年には、民主党などと連立を組み、鳩山内閣で消費者相を務めたが、10年に沖縄県の米軍普天間飛行場(宜野湾市)の同県名護市辺野古移設方針に反発して罷免され、社民の連立政権離脱の引き金になった。13年には参院選惨敗の責任を取り、党首を辞任した。
http://www.yomiuri.co.jp/election/sangiin/2016/news/20160711-OYT1T50031.html
見事、民進・有田芳生氏も、社民・福島瑞穂氏も、失礼ながらその政治的主張は決してこの国の「多数意見」を反映しているとは言えないわけですが、比例区にて当選していらっしゃられているわけです。
有田芳生氏も福島瑞穂氏も今後6年間、国会議員として独自の主張を唱え続けることが保証されているのです、その主張がどんなに国民多数派の意見と乖離しまくっていてもです。
素晴らしいではないですか。
『多様性の尊重』・・・
確かに「民主主義は最悪の政治形態と言うことが出来る(チャーチル)」かもしれません。
予算という意味だけでなくいろいろな意味で無駄なコストが掛かり過ぎるのではあります。
はあ。
(木走まさみず)