木走日記

場末の時事評論

保守再生の好機〜自民党は派閥解消し影の内閣を組閣すべき

 1日付け読売新聞記事から。

大量落選で派閥必衰…「本当に自民壊れた」

 衆院選での歴史的敗北を受け、自民党各派閥の勢力はそろって激減した。野党転落に伴い、将来の首相候補を担ぐという派閥本来の意義は一層薄まり、今後、衰退は避けられないとの見方が強まっている。

 「小泉首相になって、構造改革路線を突っ走ったが、後継者の選択を誤ったこともあり、本当に自民党が壊れてしまった」

 派閥領袖でありながら、落選の憂き目を見た山崎拓・前副総裁は31日、メールマガジンでこう心境を語った。自ら率いる山崎派の今後の運営については、周囲に「まだ白紙だ」と困惑気味に語っているという。

 今回は派閥領袖7人(選挙前に引退した津島派津島雄二・元厚相は除く)のうち、山崎氏のほか、町村信孝・前官房長官伊吹文明・元幹事長が小選挙区で敗北した。

 町村、伊吹氏は比例代表でかろうじて復活当選を果たしたが、党内では「派閥領袖は小選挙区当選が当たり前という時代ではない」とため息が漏れる。

 最大派閥町村派は、公示前の約3分の1まで減じ、衆参合計では第1派閥を維持したが、衆院では第2派閥に後退した。衆院第1派閥となったのは古賀派だが、同派も51人から25人に半減した。

 二階派の当選者は二階経済産業相ただ一人で、同派関係者は「会長1人と参院議員2人の3人だけになってしまった。野党になったこともあり、今後、どうするかはゆっくり考えるしかない」と力なく語る。

 ある派閥からは「派閥事務所の家賃約100万円を払うのは、今の人数のままではきつい。いずれ閉鎖せざるを得ない」との悲鳴も聞かれる。

 派閥の「中身」も変容しそうだ。今回、同党の新人候補の当選はわずか5人。地盤の弱い若手が大量に落選したこともあり、「派閥の高齢化が進み、活気は急速に衰える」との見方も出ている。

 自民党は9月28日に総裁選を行う予定だが、派閥単位で候補者を決めるという従来の光景は、当面見られないとの観測も出ている。

 菅義偉選挙対策副委員長(古賀派)は31日、都内で記者団に、「もう衆院で119人しかいない。派閥で物事を決めるとか、領袖が集まって決めることはなくすべきだ」と語っており、派閥の液状化が一層進む可能性も指摘されている。

(2009年9月1日08時40分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20090901-OYT1T00063.htm

 新しい【自民党各派閥議席数】を改めて表にまとめてみました。

自民党各派閥議席数】

派閥 衆院 参院 衆参の合計
町村派 23(62) 27 50
津島派 14(45) 23 37
古賀派 25(51) 9 34
山崎派 16(38) 3 19
伊吹派 9(20) 6 15
麻生派 7(16) 4 11
高村派 5(14) 2 7
二階派 1(12) 2 3
無所属 19(38) 5 24

 最大派閥の町村派をして衆参50人、二階派にいたっては「会長1人と参院議員2人の3人だけになってしまった」(同派関係者)わけでこれでは失礼ながらもはや派閥の体はなしていないでしょう。

 うむ、読売記事は「派閥の液状化が一層進む可能性」などとおとなしい表現で記事をまとめていますが、この人数、これでは派閥事務所の家賃すら払えない派閥が複数出るでしょうし、野党になった現在、地元からの陳情も少なくなりまた大臣副大臣ポスト狙う必要も可能性も皆無になったわけで、そもそも派閥の存在理由そのものが揺らいでいるのであります。

 この際自民党は旧来の派閥など、積極的・能動的に破壊してしまえばよろしい。

 55年体制から始まり中選挙区制を通じて全盛を迎えしかし小選挙区制でその存在価値が滅したかに見えながら小泉郵政選挙の大勝で水ぶくれ、その後の政権たらい回しで自民内の数の論理でゾンビのようにここまで残ってきた、悪しき古き自民党の最後の残滓・象徴である「派閥」は、野党になったこの機を好機と捉え、粉砕すべきであります。

 これは保守再生の好機であります

 戦後の日本が何もない焼け野原から見事に復興したように、自民党再生には今回の惨敗は過去のしがらみや結党以来一貫して国会第一党を担ってきたことによる制度疲労やたまったオリをそぎ落とす、絶好の好機ととらえればいいのだと思います。

 民意により長期政治権力の座からずりおとされた今こそ、自民党が自らの体質を改善する絶好のチャンスだと考えます。

 ・・・

 2日付産経新聞電子版速報記事から。

自民ますます混迷か 舛添、総裁選“不出馬”宣言
2009.9.2 11:43
 自民党総裁選(28日投開票)で、「ポスト麻生」の本命と見られていた舛添要一厚労相が1日夜、出馬しない意向を党重鎮に伝えた。古賀派谷垣禎一財務相も出馬には消極的とされ、解党的出直しの「第一歩」と位置づけられる総裁選の行方は混沌としてきた。一方、総裁選は党員・党友を含めた地方票300票、国会議員200票の計500票で争うことになり、派閥単位での「票読み」も通用しなくなりそうだ。
 「自分は安倍、福田、麻生の3内閣の一員として仕事をした。責任を痛感しているし、総選挙で敗れたことに対する責任は共同で負わねばならない。自ら総裁選にでることはできない」
 舛添氏は1日夜、森喜朗元首相との会談でこう述べ、出馬しない考えを伝えたという。国民的人気が高いことから、先の総選挙でも応援に引っ張りだこで、党内では「民主党に対抗できるのは舛添氏しかいない」(若手)などとの待望論も強まっていた。
 永田町事情通は不出馬の理由について、「舛添氏は参院議員で、これまで参院議員が党総裁になったことはない。また、舛添氏は東京都の石原慎太郎知事の後継、次期都知事選にも色気がある。様子見ということではないか」と語る。
 こうした中、総裁選に名前が浮上している谷垣氏も1日、都内で旧谷垣派出身者らと会談し、出馬に意欲を示さなかった。また、自民党町村派の森氏や町村信孝官房長官らも同日、都内で会談、総裁選の対応などを協議したとみられる。
 ただ、自民党は1日、総裁選について地方組織の意見を反映させるため、党員・党友を含む「オール自民」で行う方針を決めた。党員・党友の地方票は300票、1人1票の国会議員票は現時点で200票となり、計500票で新総裁を決めることとなるが、国会議員票を大きく上回る地方票が当落を左右する総裁選は初めてのこと。それだけに、「派閥単位で総裁選をコントロールするのは極めて難しい状況」(自民党関係者)と言えそうで、派閥実力者の地位低下に拍車がかかるのは間違いないところだ。

http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/090902/stt0909021148007-n1.htm
http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/090902/stt0909021148007-n2.htm

 舛添氏の総裁選“不出馬”はともかく、谷垣氏などの派閥領袖が出馬することは新生自民党にとってマイナスでありましょう、もっとも産経も指摘するとおり、もはや「派閥単位で総裁選をコントロールするのは極めて難しい状況」(自民党関係者)なわけで、個人的には「推薦人20人」の縛りも解いて、やる気のある若手にも参加しやすい自由競争に近いモノにしてはどうかと思います。

 いずれにしろです。

 数々の金権腐敗事件や利権政治の温床となった旧来の派閥とは決別し、そもそもの健全なる保守政党としての政策グループ・政策集団へと脱皮するには、新しい自民党総裁のもと、新鮮な顔ぶれによる影の内閣(シャドー・キャビネット)を組閣し、いつでも政権復帰できうる体制を構築すべきです。

 そして影の内閣をベースとして民主党政権の政策に対し、是々非々で責任ある保守野党として対峙すべきです。

 そのためにも、影の内閣の最初のやるべき仕事は、保守再生に向けて小泉政権以来の近年の自民党政権の政策の批判的総括であります。

 この反省から始めなければ多くの国民は今後納得して自民党の再評価に踏み切ることはできないでしょう。

 影の内閣のメンバーには旧来の古い体質の利権政治屋は入れてはいけません。

 私の読みでは、2回ほど民主による予算編成を行えば、今回からくも自民内で生き残った旧来の利権政治屋達は、その存在価値を失うことでしょう。

 またこの際、公明党とも縁を切りましょう。

 風さえ吹けば自公協力など意味がないことは、この2回の衆議院選の結果が証明しています。
 
 前回の郵政選挙、今回の政権交代選挙の結果、国民は政権党に失政があれば、いつでも政権をひっくり返す力が小選挙区制にあることを学習しました。

 ・・・

 自民党は、野党として辛酸をなめ、権力から離れ、利権政治屋を淘汰しつつ、健全な保守政党として政策能力を高めるべきです。

 民主党は鳩山氏・小沢氏と疑惑爆弾を2つも抱えています。

 自民党はいつでも政権復帰できる備えをするべきです。

 そのためにも、民主党のためとか自民党のためではなくこの国の政治のレベルアップのために、健全な保守党の再生が必要なのです。

 野党自民党の責任は重大なのだと考えます。

 ・・・



(木走まさみず)