木走日記

場末の時事評論

「なあに民主政権など1年も持たない」(自民党関係者)〜現実味を帯びてきた「政権交代」話

 14日付け朝日新聞電子版速報記事から。

自民・古賀氏、選対委員長を辞任へ 地方選敗北を引責

2009年7月14日12時10分

 自民党古賀誠選挙対策委員長は14日の党総務会で、静岡県知事選や東京都議会議員選挙などでの与党敗北の責任を取り、委員長を辞任する意向を明らかにした。細田博之幹事長は慰留している。麻生首相が21日にも衆院を解散すると表明したことに反発する声が噴き出すなど、自民党内の混乱は収まらない。

 総務会では、都議選を含む地方選の連敗について「だれかが責任をとらなければいけない」と執行部の責任を問う声が相次ぎ、東国原英夫・宮崎県知事への出馬要請による党内の動揺も都議選敗北を招いた、との批判も出た。

 これに対し、古賀氏が「東国原氏を擁立して比例区で票を取りたいと思っていた。自分の浅はかな考えで迷惑をかけた。辞めさせてもらう」と語り、総務会を中座した。

 古賀氏は細田幹事長らと並ぶ党4役の1人。「地方選敗北の責任は幹事長でなく、私にある」としたうえで「党内がまとまって、麻生さんが決めた日程に従って選挙をやる」と記者団に述べた。

 総務会では、尾辻秀久参院議員会長も「執行部の責任であり、私も辞める用意がある」と語った。

 古賀氏の辞意について、細田幹事長は記者団に「本人の責任ではない。地方選挙の問題だから総選挙前の辞任はだめだ」と語った。

 古賀氏が、東国原氏に出馬を要請した責任をとって辞任する意向を示したことから、自民党からの東国原氏の擁立は困難な情勢だ。

 一方、同日の党役員連絡会でも武部勤・党改革実行本部長が「会期は28日までなのに、なぜ来週早々解散なのか」と反発。島村宜伸・党総裁特別補佐は「(自民党で)戦いたくないやつは出ていけばいい」と反麻生勢力を批判した。

 その後の党代議士会で、首相が地方選の敗北について「反省と総括が必要だ」と発言。細田氏も議論の場を設ける考えを示したが、中川秀直元幹事長が「解散のあり方について大いに異論がある。民主党を利するような解散はすべきではない。人心の一新が必要で、そのために両院議員総会で議論したい」と述べ、騒然とする場面があった。

http://www.asahi.com/politics/update/0714/TKY200907140190.html

 総務会で東国原英夫・宮崎県知事への出馬要請による党内の動揺も都議選敗北を招いた、との批判に対し、古賀誠選挙対策委員長が「辞めさせてもらう」と語り、総務会を中座、あわてて細田幹事長が慰留、また、尾辻秀久参院議員会長も「執行部の責任であり、私も辞める用意がある」と語ったそうであります。

 また、それとは別に武部勤・党改革実行本部長が解散時期について「会期は28日までなのに、なぜ来週早々解散なのか」と反発、対して島村宜伸・党総裁特別補佐は「(自民党で)戦いたくないやつは出ていけばいい」と反麻生勢力を批判。

 その後の党代議士会で、中川秀直元幹事長が「人心の一新が必要で、そのために両院議員総会で議論したい」と述べ、騒然とする場面があったそうです。

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 なんなんでしょ、このガバナンスのなさは。

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 さて、8月30日総選挙が決定しました。

 今回は地元(東京都・練馬区)を中心とした各党関係者の意見をまとめてみます。



●「麻生ノーなんて生やさしい現象じゃない、吹き荒れているのは自民ノーの暴風だ」(自民党都議後援者)

 落選した自民党都議後援者はいらだちを隠しません。

 「民主への追い風はもはや暴風雨になっている。麻生さんら党執行部は何も理解してないのではないか」

 「この状況での8月30日総選挙は、玉砕覚悟のバンザイ突撃だ、少なくとも東京では戦うにももはや自民には詰め込む弾(たま)すらない」

 彼の言う「自民には詰め込む弾(たま)すらない」の真意は、自民の過去の政策実績をどんなに訴えても、また鳩山民主党のふがいなさや党首自身の献金問題への批判を強めても、「東京から政権交代」のワンフレーズで押しまくった民主党にダブルスコアに近い票差で屈した今回の都議選の戦慄する結果から、来る総選挙で自民党候補者が何を訴えても有権者には響かないだろうという、あきらめとも確信ともいえる本音を言い表したものでしょう。

 「都議選で麻生さんが唯一応援しなかった島部で、一人区で唯一自民党が圧勝して議席を守ったのは皮肉でしかない。国会議員の中には麻生さんを降ろせば支持率は回復すると、自身の保身のために短絡して右往左往している若手議員もいるが、愚かしいことだ、今地方選で起こっているのは麻生ノーなんて生やさしい現象じゃない、吹き荒れているのは自民ノーの暴風だ」

 一方都議選では民主と友党関係にある地域政党東京・生活者ネットワークも4議席から2議席と半減を余儀なくされています。

 自党候補者の選挙を支えてきた生活者ネット練馬区区議は民主への憤りを隠しません。

 「風は民主にしか吹かなかった。それに民主推薦とは名ばかりで同じ選挙区に民主は候補者をぶつけてきた」

 たしかに、練馬選挙区(定員6名)では、現有議席(民主1,ネット1)を無視して、民主は公認3、推薦1(ネット)という4人を立てて、結果公認3人は全員当選、生活者ネットワークはあえなく、同党発祥の地練馬で虎の子の現有議席を失うという憂き目にあったのであります。
 
 今回吹き荒れた民主躍進の「暴風雨」(自民党都議後援者)は、自民だけでなく共産やネットなど非自民小党も吹き飛ばしたのでした。

 この異常な都議選でこの暴風を何とかしのいで23人全員当選を勝ち取った与党公明党の選挙上手は特筆すべきものがあります。

 しかし、その公明党関係者すら、8月30日の総選挙には悲観的です。

 「今回は死力でふんばったが、来月の総選挙はもう東京に集中はできない、全国でこの暴風に耐えなければならない、苦戦は覚悟している」

 都議選を通じて「政権交代」のうねりは異様な昂揚を示してきております、私が地元で取材した範囲でも民主以外の政党は例外なくこの異様な「民主への追い風」を口にしています。

 当の民主党関係者(参議院議員政策秘書)は私の電話取材でこううち明けています。

 「58人立てて54勝4敗、42選挙区で38がトップ当選、この都議選は我々の想定を越える大勝利だ。来るべき総選挙では選挙対策委員長赤松広隆氏)がBSテレビの取材で「謙虚にみても249はいくだろう」と発言しているが。実は我々の読みでは最大で280を越える予測が出ているのだ」

 「280を越える予測」(民主党関係者)とは、4年前の自民党が大勝した総選挙と逆の現象が起きつつあると言うことでしょうか。

 「8月30日投票は一部準備不足だった地域の体制を補強するにはもってこいの最良の日程だ、麻生さんは最後の最後に国民のためにぶれない決断をした」

 麻生さんへの皮肉も織り交ぜての鼻息の荒い話であります。

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●自民を救う戦略はあるのか〜自民党関係者に聞いてみる

 今回の7月21日解散8月30日投票という麻生首相の決定ですが、限られた期間の中で自身で解散総選挙を行いかつ党内の「麻生降ろし」の動きを封印するためのギリギリの妥協案だったとも報道されていますが、確かに現在選択可能な日程としては麻生首相にとってベストチョイス、次善策と考えられますでしょう。

 しかしながら、大局的にみれば、「政権交代」というワンフレーズの民主党暴風雨にさらされている、そのピークでのあまりにも最悪のタイミングでの解散と見なせましょう、解散するなら去年の就任早々の秋がベストだったのでしょう。

 このような熱情(パッショ)をともなったときの民意は愚直です、小選挙区制では恐ろしいワンサイドゲームが展開されることは、4年前の小泉郵政選挙が証明しております。

 自民党の立場から自民を救う戦略はあるのか、関係者に電話にて取材をしてみました。

 相手は先述した自民党都議後援者であります。

 彼は、私の経営するIT会社のクライアント企業の社長でもあります。

 木走「麻生さんはついに解散を決断したが、自民党にとって勝算なき戦いとなりそうだがどうか」

 後援者氏「麻生さんの決断は将棋に喩えれば神懸かりのような悪手の連続、はっきりいってすべてが後手、特に都連(自民党東京都連)としては最悪のタイミングだ」

 木「選挙区情勢はどうか」

 後援者氏「苦しいの一言。ここまで中央(自民党政府)に足を引っ張られてはどうしようもないというのが、正直なところだ」

 木「自民を救う戦略はあるのか」

 後援者氏「もはや時間がない、党全体のことなどかまってる余裕はない、自分の選挙区でいかに戦うかだけに集中するしかない」

 木「覚悟を決めてバンザイ突撃するというわけか」

 後援者氏「いや、中央では民主鳩山代表故人献金疑惑を集中的に攻めるだろう。また、麻生降ろしの動きもくすぶり続けるだろうから看板の挿げ替えもあるかもしれない。しかし麻生さんを降ろしたところで誰が総裁になっても余計世論の反発を買うだけじゃないのか」

 木「鳩山代表の敵失頼みで、麻生さんを降ろすのは効果がないということか」

 後援者氏「効果がないとはいわないが、そんな姑息な手法では有権者の反発もあるからその効果は相殺されるんじゃないのか。だいたい中央は何も民意を理解してはいないのは、東国原宮崎県知事の擁立劇で世論の猛反発を喰っていることでも自明だ、あんな露骨な客寄せパンダ人事で、しかも東京比例区のトップに入れるなんて話も出ていたが、冗談じゃない、ますます票が減るだけだ」

 木「最後に自民党支持者としての今度の選挙の覚悟を」

 後援者氏「とにかく今は先生(自分の支持している衆議院議員)が議席を守り抜くことを最優先に、8月30日まで票まとめに全力をつくすだけだ。おそらく自民は下野することになるかもしれないが、なあに民主政権など1年も持たないで必ず馬脚を現すに決まってる。防衛も外交政策民主党内はばらばらだ、それに総理になれば鳩山代表の疑惑も本格的に追及されるだろう。来年の参院選の同日選挙も十分ありえる。それまでに風向きは必ずかわると確信している」

 ふう。



●権力欲以外のポリシーなき政治家たちが私利私欲の保身に走り醜態を晒す

 なるほど、一部自民党後援者からは今度の選挙はあきらめムードが漂い始めているようです。

 しかしながら、選挙現場ではとにかく地元候補者をこの逆風からがまんして守り抜いてなんとか議席を維持し、そして自民がいったん下野しても、「民主政権など1年も持たないで必ず馬脚を現す」のだから、ここは我慢のしどころといった感じなのでしょう。

 地元後援者としては極めて現実的な話ではあります。 

 ただこの後援者にはとても語れませんでしたが、不肖・木走の見立てでは、もし自民が下野する場合、自民党分裂の危機の可能性はそうとう高まると思うのです。

 つまり、ドロ船自民丸が沈みかけている今、下野したときに少なからずの先生方が右往左往の挙句、ドロ船からの脱出を試みるであろうことであります。

 長期に渡る政権政党が野に下るとき、権力欲以外のポリシーなき政治家たちが私利私欲の保身に走り醜態を晒す事になるかもしれません。

 もっとも、健全な保守再生のためには、魑魅魍魎たちを一斉処分するのにはちょうどよろしかろうとも私には思えます。

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(木走まさみず)



<テキスト修正履歴>14:49 テキスト冒頭に朝日速報記事を追加しました。