「8割を超える国民が軽減税率の導入を求めている」だと?〜日本新聞協会の大ウソを徹底検証する
日本新聞協会の公式サイトはこちら。
で、一般社団法人日本新聞協会には、朝日・読売を初めとする104の新聞社と4の通信社、22の放送事業社の合計130社のメディア関係社が加入しています。
そしてこのマスメディア130社が加盟する日本新聞協会が、今総力を挙げてキャンペーンしているのが、サイトのトップで案内している「聞いてください!新聞への消費税軽減税率適用のこと」キャンペーンという恥ずかしい運動であります。
なぜ新聞に軽減税率が必要なのですか?
http://www.pressnet.or.jp/keigen/qa/#q2
この恥ずかしい運動の中でひときわ恥ずかしいQ/Aをご紹介。
Q:なぜ新聞に軽減税率が必要なのですか?
A:みなさんがニュースや知識を得るための負担を減らすためです。新聞界が軽減税率を求めているのは購読料金に対してです。読者の負担を軽くすることは、活字文化の維持、普及にとって不可欠だと考えています。新聞協会が実施した調査でも、8割を超える国民が軽減税率の導入を求めていて、そのうち4分の3が新聞や書籍にも軽減税率を適用するよう望んでいます。新聞協会は、書籍や雑誌への適用も併せて求めています。
なるほど「みなさんがニュースや知識を得るための負担を減らすため」、「読者の負担を軽くすることは、活字文化の維持、普及にとって不可欠」、すべては読者のためなのだそうです。
そして「新聞協会が実施した調査でも、8割を超える国民が軽減税率の導入を求めていて、そのうち4分の3が新聞や書籍にも軽減税率を適用するよう望んでいます」なのだそうです。
8割を超える国民のそのうち4分の3といえば、国民の6割が新聞の軽減税率を望んでいるというわけですね。
・・・
日本新聞協会は「大嘘つき」です。
新聞に軽減税率が必要なのは、「みなさんがニュースや知識を得るための負担を減らすため」つまり読者のためなどと言っておりますが、そんなはずないでしょ、斜陽著しい新聞業界の生き残りのためでしょ。
後でデータを示しますが、そもそも「みなさんがニュースや知識を得るため」にすでに媒体として紙の新聞を選択する必要性はなくなりつつあるわけです。
多くの国民が紙の新聞の購読を止めているのが現状です。
国民が情報収集するために、紙の新聞は必須アイテムではなくなっています。
さらに「新聞協会が実施した調査」の胡散臭い結果を徹底検証しましょう。
まず、新聞だけでは支持が少ないので「書籍や雑誌への適用」を混ぜていることが姑息です。
それはさておき「軽減税率に関する調査結果 - 日本新聞協会」はこちらにPDFファイルがあります。
軽減税率に関する調査結果 - 日本新聞協会
http://www.pressnet.or.jp/statement/pdf/keigen_zeiritsu_chousa.pdf
日本新聞協会は、消費税が引き上げられた際の軽減税率導入についての調査を昨年11月に実施した。その結果、生活必需品などの税率を低くする軽減税率を日本でも導入することについて肯定的な人は84.0%で、否定的な人は10.3%だった。
さらに、導入に肯定的な人のうち、新聞・書籍も軽減税率の対象にすることについて肯定的な人は75.3%、否定的な人は20.3%だった。
調査は、全国の満20歳以上の男女4000人を対象に個別面接調査(オムニバス)で実施、回収率は30.3%だった。
新聞協会は「新聞協会が実施した調査でも、8割を超える国民が軽減税率の導入を求めていて、そのうち4分の3が新聞や書籍にも軽減税率を適用するよう望んでいます」と高らかに「8割を超える国民」などと「国民」という母集団を用いていますが、その実態は、たった「全国の満20歳以上の男女4000人」であります。
しかも、よほど新聞協会の世論調査など不人気だったのでしょう、「回収率は30.3%」なんと7割の人が調査を拒否しているわけです。
実態は母集団男女4000人を分母とすれば、「新聞や書籍にも軽減税率を適用する」ことを望んでいる人は「どちらかといえば」という消極的支持を含めても母集団の2割にも達していないことがわかります、19%に過ぎません。
0.303 * 0.840 * 0.753 = 0.19
この調査をもって日本新聞協会は「8割を超える国民が軽減税率の導入を求めていて、そのうち4分の3が新聞や書籍にも軽減税率を適用するよう望んでいます」とあたかも国民の過半数が新聞の軽減税率を望んでいるような印象操作をしているわけです。
これ印象操作というかわいいレベルではなく、事実を報道することを使命とするメディアで構成されている協会としては、単なる「大嘘つき」でしょう。
・・・
さて今世紀に入って日本の新聞の発行部数が壊滅的減少を記録していてしかも減少に加速がついていることを押さえておきましょう。
日本新聞協会の公表している発行部数など押し紙の問題もあり、底上げされていてまったく信用できないのは常識ですが、その信用できない公表数値をあえて使って差し上げましょう。
日本新聞協会のサイトで「新聞の発行部数と普及度」が公表されています。
新聞の発行部数と普及度
http://www.pressnet.or.jp/data/circulation/circulation05.php
このデータから過去15年間の日本の新聞の総発行部数の推移をグラフ化してみましょう。
■日本の新聞の総発行部数の推移
年 部数(単位:千部) 前年度比 2000年 71,896 ----- 2001年 71,694 - 202 2002年 70,815 - 879 2003年 70,340 - 475 2004年 70,364 + 24 2005年 69,680 - 660 2006年 69,100 - 580 2007年 68,437 - 663 2008年 67,207 -1230 2009年 65,080 -2127 2010年 63,199 -1881 2011年 61,581 -1618 2012年 60,655 - 926 2013年 59,396 -1259 2014年 56,719 -2777
この15年間で協会の公表数値ですら1517万7千部も減少しているわけです、21.1%減であります。
しかもグラフを見れば一目瞭然ですが、明らかに減少のペースが加速していることが見て取れます。
これが「みなさんがニュースや知識を得るための負担を減らすため」軽減税率を望んでいる新聞業界の実態です。
もはや「みなさんがニュースや知識を得るため」にすでに媒体として紙の新聞を選択する必要性はなくなりつつあるわけです。
多くの国民が紙の新聞の購読を止めているのが現状です。
国民が情報収集するために、紙の新聞は必須アイテムではなくなっています。
彼らが読者のためではなく斜陽する彼ら自身のためにだけ軽減税率導入を望んでいることは明らかです。
そのために「国民の8割」とか自らの調査データを「印象操作」までして支持を得ようとしているわけです。
読者のみなさん。
「大ウソ」ついてまで自分たちだけは消費税から免れたい、これがこの国の新聞業界の本音なのであります。
(木走まさみず)