木走日記

場末の時事評論

[新聞]軽減税率の特権を受ける朝日新聞社に軽減税率を論じる資格なし~業界をあげて軽減税率を辞退すればよろしい

 財団法人日本新聞協会の公式サイトでは、2000年からの全国の新聞の発行部数総数の推移が見られます。

財団法人 日本新聞協会
新聞の発行部数と普及度

https://www.pressnet.or.jp/data/circulation/circulation05.php

 見やすいようにグラフにしてみました。


日本新聞協会資料より『木走日記』作成

 ご覧いただくように、2000年に7189万6千部あった新聞発行部数は、昨年2018年には4892万7千部まで落ち込んでいます。

 この19年間で2296万9千部減、実に31.95%も減少しているのです。

 今世紀に入り3割も市場が縮小してしまった業界は新聞業界だけではないでしょうか。

 要因はインターネットの普及にあることは明らかです。

 もちろん各紙は電子版対応して、ネットでの売り上げを増やそうと必死です。

 読売新聞オンラインは電子版を単体では販売せず、紙の読売新聞の購読者にのみ電子版を提供します。

 朝日新聞デジタルは3,800円、デジタル毎日は3,456円、日経電子版は4,200円、産経電子版1,944円となっています。
 各紙は電子版読者を増やすためには電子版の料金を下げればよいのですが、電子版のほうを安くしますと紙の発行部数減に拍車をかけてしまいますので、電子版の料金は安くできないというジレンマに陥っています。

 こんな斜陽な産業が、消費税軽減税率の対象、つまり食料品とともに生活必需品と認められてしまったのですから噴飯物です。

 紙の新聞は「『知識には課税しない』という考えは、だれもが情報を入手しやすい環境を整え、民主主義を支えるうえで不可欠である」などと社説でもさかんに訴え、ものすごいロビー活動を展開するのでした。

 5年前の当ブログのエントリーはなりふり構わぬ新聞業界のロビー活動を批判しています。

恥ずかしくないのか?新聞業界!〜不遜な朝日社説となりふり構わぬ新聞業界のロビー活動
https://kibashiri.hatenablog.com/entry/20141116/1416120961

 新聞業界のロビー活動を批判した箇所を抜粋。

 この小冊子「新聞の軽減税率はこの国の明日へのともしび」ですが、今確認いただいたとおり、社団法人日本新聞販売協会が国民にではなく「衆参両院議員先生をはじめ、日本の指導的立場におられる各位」に圧力をかけるためにまいたパンフです。

 自分達がよく報道で批判する密室で政府に懇願するみっともない圧力団体に自らなり下がっているわけです。

 それにしても新聞の軽減税率は「この国の明日へのともしび」だの「世界の常識」だの、よく臆面もなく言えたものです。

 あれほど各紙メディアで消費税増税の旗振り役をしていたくせに、いざ消費税増税法案が国会通過の見通しになると、自分達だけは例外扱いをしろと、よく主張できましたよね。

 新聞は「軽減税率こそ、弱者対策、言論の多様性の保護につながる」という神話ばかり報道してきたように思います。

 新聞協会は「知識に課税させない」とまで言い切りました。NHKの視聴料、新聞社が提供している電子版は軽減税率の対象外という矛盾を承知の主張です。

 当ブログは軽減税率導入そのものに反対しています。

 低所得者対策は給付金で解決、すなわち消費税が上がり、生活が苦しくなる低所得者対策としては、単一税率のもとで、当初からあった給付型措置(生活補助金の支給)を導入することが正しい選択です。

 軽減税率導入は複数の税率を同時に会計処理しなければならなく事務の煩雑化は計り知れません。

 紙の新聞はもちろん食料品もそもそも軽減税率の対象とすべきではなかったと考えます。

 ・・・

 一月前、朝日新聞は政府の消費税対策を批判する社説を掲げます。

(社説)消費増税対策 あまりに問題が多い
2018年12月29日05時00分
https://www.asahi.com/articles/DA3S13831587.html

 社説の中で真っ先にやり玉にあげたのが「飲食料品と新聞の税率を8%に据え置く軽減税率」です。

 まず、飲食料品と新聞の税率を8%に据え置く軽減税率は、毎年1兆1千億円かかる財源に問題を残したままだ。

 軽減税率で「毎年1兆1千億円かかる財源に問題を残したまま」と批判、さらに「政府・与党は「安定的な恒久財源の確保」を約束した」のに確保できていないと批判を続けます。

 所得の低い人向けの対策の柱として3年前に決まり、政府・与党は「安定的な恒久財源の確保」を約束した。ところが、昨年までに決定済みの所得税とたばこ税の増税や、これまでの社会保障改革の削減効果の一部を充てることで、決着とした。

 新たに財源を見つけるのではなく、過去の努力の成果を付け替えただけだ。政府内には当初、株式の配当などにかかる金融所得課税を増税する案もあった。しかし株価への悪影響を気にする官邸の意向も踏まえ、議論にも入らなかった。

 非常に不愉快な朝日新聞社説です。

 自分たちが数年の長きにわたり熱心にロビー活動をして姑息にも勝ち取った軽減税率、それを今このタイミングになって「軽減税率は、毎年1兆1千億円かかる財源に問題を残したまま」じゃないかと上から目線で政府批判です。

 軽減税率の財源の問題を解決するには新聞業界をあげて軽減税率を辞退すればいいじゃないですか。

 この苦しい予算の中で軽減税率のための「安定的な恒久財源の確保」は非常に厳しいのが現実です。

 自分たちは軽減税率でいい思いをしているのに能天気に軽減税率の財源で政府を批判する、朝日新聞の社説なのです。

 ふざけないでいただきたいです。

 軽減税率の特権を受ける朝日新聞社に軽減税率を論じる資格はないのです。

 そこまで財源が心配ならば、業界をあげて軽減税率を辞退すればよろしいのです。



(木走まさみず)