『オリンピック東京開催決定』報道をお休みする『新聞休刊日』の七不思議〜「私達の休息の権利のほうが国民の知る権利よりも優先される」(日本新聞協会)(キリッ
うーん、56年ぶりのオリンピック東京開催が決定して日本中で歓喜の渦・祝福の嵐が巻き起こっています中、一人冷や水を浴びせるといいますか、空気を読めてないといいますか、いつ報道するの?今でしょ、といいますか、お馬鹿なタイミングで仕事を休んでしまったのが、決定翌日に『新聞休刊日』により全国一斉に休刊おわしました我らが日本新聞協会なのであります。
オリンピック東京開催が決定した翌日・9日(月曜)の朝、新聞の朝刊が休刊(駅売りスポーツ紙除く)でがっかりした読者も多かったことでしょう。
さすがにこのタイミングはまずいのではと、元読売新聞記者の方がエントリーで警鐘を鳴らしています。
さすがに五輪決定で休刊日はマズくねー?
http://blogos.com/article/69737/
そもそも「新聞休刊日は販売店のため」だと説明しています、エントリーより該当箇所を抜粋ご紹介。
そもそも新聞休刊日とは何なのか?デジタル大辞泉の定義ではこうある。
日刊の新聞が発行されない日。多くの新聞社がおよそ月に1日、新聞配達員の休養のために設定し、新聞の発行を休む。新聞休刊日。◆スポーツ紙・夕刊紙などは宅配分は休刊となり、駅売り・店売り分は発行されることが多い。
というわけで基本的には、販売店のためだ。一応、11年、新聞業界にいた人間として補足しておくと、新聞社も全社的に休業。もちろん事件事故警戒で休日出勤している社会部や地方支局の記者は当然いるし、スポーツ記者は日曜や祝日に大概試合があるので休刊日でも当然休むことはない。編集局の当番社員以外にも、印刷工場やITシステムのメンテナンス作業を行うことが多い。
なるほど、「多くの新聞社がおよそ月に1日、新聞配達員の休養のために設定し、新聞の発行を休む」ためなのだそうであります。
当ブログでは実は過去にこの日本の新聞特有の制度である「新聞休刊日」について徹底的に調査したことがあります。
お時間の許す読者は是非ご一読あれ。
2006-04-10 新聞休刊日の七不思議〜北朝鮮も真っ青なスバラシイ言論統率!
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20060410
この「新聞休刊日」制度ですが、調べれば調べるほど不思議な制度であることが検証できました。
当時の調査で「7不思議」形式でまとめてありますので引用してご紹介。
●新聞休刊日の七不思議〜全ては「偶然」の産物です by 日本新聞協会
【不思議1】その年の新聞休刊日は誰が決めるの?
答えは「誰」も決めていません。
業界団体の日本新聞協会によると、「休刊日は、各社の自主性に任されており、新聞協会が、ガイドラインを設定したり、指導したことはない」のであります。
つまり誰かが音頭をとって強制的に決定しているのではなく、あくまでも新聞各社が「自主的」に「独自判断」で決定しているのだそうです。
不思議なこともあるモノです。
【不思議2】どうして全国紙も地方紙も新聞休刊日が同じ日なの?
ここに朝日新聞販売社の新聞休刊日のサイトを見てみましょう。
新聞休刊日
下記の日は朝刊がお休みになります。
2006年新聞休刊日
1月2日(月) 元旦の翌日 記事
2月13日(月) 第2月曜日
4月10日(月) 第2月曜日
5月6日(土) 第1土曜日・子供の日の翌日
7月10日(月) 第2月曜日
8月14日(月) 第2月曜日
9月11日(月) 第2月曜日
10月10日(火) 第2火曜日・体育の日の翌日
11月13日(月) 第2月曜日
12月11日(月) 第2月曜日
国政選挙・その他の事態により、日程が変更になる場合があります。
http://www.ync-net.co.jp/?%5B%5B%BF%B7%CA%B9%B5%D9%B4%A9%C6%FC%5D%5D
次に秋田の地方紙のサイトから
平成18年 新聞休刊日
休刊日
1月 2日(月)付朝刊
2月13日(月)付朝刊
3月13日(月)付朝刊
4月10日(月)付朝刊
5月 6日(土)付朝刊
6月12日(月)付朝刊
7月10日(月)付朝刊
8月14日(月)付朝刊
9月11日(月)付朝刊
10月10日(火)付朝刊
11月13日(月)付朝刊
12月11日(月)付朝刊
※ 選挙など緊急の場合は発行することがあります。
備考の補足説明まで似ていますが・・・
発行部数800万部の全国紙である朝日新聞も数万部であろう秋田魁新聞も「偶然」にも同じ休刊日でありますね。
すごい「偶然」なのであります。
【不思議3】休刊日に駅の売店でスポーツ紙などは売っているのは何故?
これも「偶然」です。
あれは特別版といって、駅売りだけを目的としたモノで宅配はされない版です。
スポーツ紙の特権でありますが、これも各社独自の判断で「偶然」にも各スポーツ紙が「独自判断」した結果です。
【不思議4】休刊日を勝手に増やしても、月決め定期購読者の価格に反映されないのは問題ないの?
問題ありません。
普通一般的に考えれば、休刊日が増えたら月に届ける商品(新聞)数は当然減るわけですから価格に反映されそうですがそうはなりません。
まあそんなこといったら、コストの差を正しく価格に反映などそもそもできていたら、スタンド売り(店頭販売)の新聞はもっと安くできるはずです。ところが日本の新聞価格は配達料込みの宅配の方が安くなっています。
なぜなら、独禁法特例と再販制度により法律で守られているからです。
ですからいくら休刊日が増えても新聞の契約料は安くなりません。
不思議な商品もあるものですね。
【不思議5】海外の新聞にも休刊日はあるの?
世界の一般紙で新聞の「休刊日」というのは聞いたことがありません。
もっとも専門誌ならば、例えば米国のウォール・ストリート・ジャーナルや英国のフィナンシャル・タイムズなどの経済専門紙は、土曜と日曜を休刊日にしている例はあります。
どうやら日本の休刊日は日本独特の宅配の購読者がほとんどという特殊事情によるものなのであります。
つまり販売店の休暇を取りやすくするための制度なのであります。
いずれにしても国中の新聞が特定の日に休んじゃうなんて北朝鮮も真っ青な言論統制が実現されているのは、我が日本国のみであります。
しかも「自主的」に「偶然」にであります。
素晴らしいじゃないですか(苦笑
【不思議6】抜け駆けして休刊日に発行した新聞はないの?
かつて一度だけ産経新聞が反乱を起こしました。
休刊日を廻る事件
2002年は2月から4月にかけて新聞休刊日を廻る事件があった。
産経新聞は、2002年3月で首都圏向けの夕刊を休刊にする事を前年(2001年)夏に発表したが、それをPRする事を狙って2002年2月12日付け(この年は2月11日=建国記念の日が月曜日だったため翌火曜日にあたる12日の朝刊が休刊だった)にスポーツ紙の方式を採って駅売り専売の特別朝刊を発行する事を決めた。しかし、他紙がそれに疑問を投げかけたのか『ソルトレークシティーオリンピック・冬季オリンピックの報道態勢を取るため』という理由を付けて特別朝刊(通算号数加算なし)を発行し、地域によっては宅配された。
さらに翌3月10日の休刊日の翌日である11日も産経は駅売り専売の朝刊を発行したものの、他紙は通常と同じ通算号数に加算する朝刊を発行した(折りしもこの日は鈴木宗男議員の参考人質疑が開催された日でもあった。)。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%B0%E8%81%9E%E4%BC%91%E5%88%8A%E6%97%A5
このときの「偶然」にも各紙が休刊日返上した、特別朝刊(通算号数加算なし)を発行を強行した経費ですが読売だけでも7億円の経費が掛かったといいます。
すごいですね、「休刊日」の輪を乱すモノは徹底的に許さないということであります。
まあ新聞協会によれば、『ソルトレークシティーオリンピック・冬季オリンピックの報道態勢を取るため』の、これも単なる「偶然」だそうですが(苦笑
【不思議7】胡散臭い「偶然」だらけの新聞休刊日って、いったいなんなのさ?
全ての種明かしをしましょう。
日本の新聞、特に一般紙はどの新聞社も一斉に休刊日をとるわけですが、ある新聞社が抜け駆けして発行するなんて話があると一斉に休刊日が無くなります。
公正取引委員会がカルテルの疑いがあるとクレームをつけたこともあるわけで、新聞協会、各新聞社、いずれも「独自の判断」「偶然」という建前があるわけです。
これは日本の新聞特有の現象です。
海外の多くの国では新聞は自分から買いに行くものだから、一社が休めば他を買えばいいわけです。
対して日本は朝刊と夕刊の両方を1つの新聞社が発行、それを定期購読、各顧客まで宅配するのが主流で、新聞販売店にとってはものすごい負担となるのです。
加えて、新聞販売店の中には、一紙だけでなく経済紙や地方紙など何種類もの新聞を扱うところがあります。
一斉に休刊日にならない限り、販売店は休みにはならないわけですね。
そんな労務問題から、あくまでも「偶然」、各社の休刊日が重なっているのであります。
どうでしょう、あくまで「自主的」に各社が決めているのに「偶然」にも全国で月日が綺麗に統一されている新聞休刊日、実に不思議な制度でしょう。
・・・
まとめです。
カラクリはこうです。
日本の最も有力なA新聞社が年の初めに「我が社の休刊日はこの日です」と、年間の休刊日を独断で発表します。
これを見た他の会社が翌日に「うちの会社の休刊日はこの日です」と、「偶然」にも同じ日程の休刊日を独自に発表します。
これを末端の地方紙までが繰り返しているうちに、日本全体の新聞業界の事実上「既定の」休刊日がおのずと決定されていくのです。
確かに談合はありません。表面上、話し合って決めているわけではないのです。
しかし、議論こそないが、ここには胡散臭い「おきて」が厳然として存在しています。
誰が見てもこれは独禁法が禁じている特定業界の「カルテル」に相当します。
事実、公正取引委員会の公式見解が今でも「新聞休刊日」に対してカルテルの疑いがあると違法性の極めて高い「灰色」としているのも、うなずけるではありませんか。
法律違反でないためには、あくまで「自主的」に各社が決めているのに「偶然」にも全国で月日が綺麗に統一される必要があるわけです。
「社会の公器」である新聞業界のこの主張が2重でインチキなのは、例えば同じく公共のメディアであるTV局やラジオ局などでは365日報道がなされていて「休業日」などは存在しません。
また社会サービスの点から言えば、販売店の労務管理の問題に過ぎない休日数の問題を「新聞休刊日」制度としてユーザーサービスを犠牲にして実現していますが、例えば多くのコンビニでは365日24時間開店していますがそれをもってバイトの労働時間をどうシフト管理するかは店側の労務管理の問題に過ぎません、それを理由に定期的に店を休業する、つまりユーザーサービスを犠牲にするなど考えられません。
普通に競争に負けてしまいます。
これは実は問題になっている新聞の全国一律購読料金の大矛盾問題と構造は同じなのです。
20部を定期購読しようが、1部だけ定期購読しようが、1部あたりの値段は同じ。
「たくさん買うから値引きしてよ」が通じない。
長く何十年と同じ新聞を取り続けても、これまた値引きはない。
むしろ、3カ月ごとに契約すると、契約ごとに洗剤や映画の券がもらえたりする。
これらは、いくつかの悪名高い法律に守られているから初めて可能なのです。
公然の秘密のように、独禁法特例と再販制度に守られて、「カルテル」休刊日を設定し、値段を勝手に決めている、まったく競争力のない胡散臭い業界、それが日本の新聞業界です。
・・・
さんざん消費税増税の旗振り役をしてきた新聞協会は今、「新聞購読料」を軽減税率対象にしろ、消費税から免税せよ、と主張しています。
理由は言論の自由を守るため、国民の知る権利を守るためだそうです。
新聞がもし「社会の公器」を自認するならば、この全国一斉休刊日を私たち国民はどう考えたらいいのでしょう。
現在、年に10日あるこの新聞休刊日では、発行部数1000万部を誇る全国紙から数万部の地方紙まで一律になかよく休刊してしまいます。
この普通の業界だったら間違いなく「カルテル違反」の新聞休刊日、皮肉なことに、別に新聞が一斉に休刊してもテレビもあるしネットメディアもあるし全然国民生活に差し障りがないことが証明されており、実はいかに新聞がすでに「社会の公器」ではなく国民にとり必要性が薄まっているなによりの証左にもなってはいるのであります。
それにしても、興味深いことです。
新聞休刊日は談合していない違法ではなく偶然である、とか、新聞購読料の消費税を免除せよ、とか身勝手なその主張の裏には、「私達の休息の権利のほうが国民の知る権利よりも優先される」(日本新聞協会)(キリッ、まるで私には新聞協会の主張がこう聞こえてくるのです。
今回は『オリンピック東京開催決定』報道をお休みする鉄のオキテ『新聞休刊日』の七不思議を取り上げてみました。
(木走まさみず)