木走日記

場末の時事評論

日経新聞電子版が出鱈目な購読料金月額4,000円である悲しき理由〜あまりにも悲しいユーザーを無視した発想

 25日付け日経新聞朝刊紙面一面で「「日本経済新聞 電子版」(Web刊)を3月23日に創刊」のお知らせが掲載されています。

 ネットでのこちらの記事から。

日経新聞、「日本経済新聞 電子版」(Web刊)を3月23日に創刊
日本経済新聞 電子版」(Web刊)創刊のお知らせ

http://www.nikkei.com

 日本経済新聞社代表取締役社長:喜多恒雄)は2010年3月23日に、インターネット上に「日本経済新聞 電子版」(Web刊)を創刊します。登録の受け付けは3月1日より始めます。

 電子版は今年で135年目の歴史を迎える日本経済新聞社がデジタル技術を基盤にお届けする新しい媒体です。日本経済新聞の朝刊と夕刊の最終版の記事全文はもとより、日経編集局が24時間体制で取材・編集して随時更新する国内外の最新ニュース、日経BP社など日経グループ各社が集めた専門分野の情報・データやコラム・映像、英フィナンシャル・タイムズなど有力な海外コンテンツパートナーの翻訳記事を厳選して配信します。朝刊と夕刊の間でも最新情報を刻々と編集して読者に届ける意味合いを込めて愛称を「Web刊」としました。また、一人ひとりの読者の興味や関心を分析して適切な記事を選んで届ける「おすすめ」機能、登録したキーワードを含む記事が配信されると自動表示する「自動記事収集」をはじめとする「My日経」機能など、デジタル技術を活用した新しい記事の読み方も提案します。パソコンと携帯電話機で利用でき、電子書籍端末やデジタルテレビでの提供も検討していきます。

 「日本経済新聞 電子版」(Web刊)は日本最大級のアクセス数があるニュースサイト「NIKKEI NET(日経ネット)」を継承し発展させるもので、無料でも利用できますが、すべてのコンテンツや機能を閲覧・利用するには毎月の購読料がかかる有料会員になる必要があります。本格的な有料のインターネットメディアを通じ、良質なジャーナリズムの維持・発展に努めるとともに、新聞事業の更なる拡大を目指してまいります。

<「日本経済新聞 電子版」の概要>
■サービス開始日  2010年3月23日(火) 登録受け付けは3月1日(月)から
■サービス名     日本経済新聞 電子版(Web刊)
■内容         日本経済新聞朝刊・夕刊の記事全文、24時間体制で更新する
             国内外のニュースや特集、日経グループ各社が提供する
             専門情報やデータ、映像
■URL         http://www.nikkei.com
■利用機器      パソコン、携帯電話機、携帯端末など
■購読料       日経新聞定期購読者  月額1,000円(税込み)
             (総額は朝・夕刊セット版地域5,383円、全日版地域4,568円)
             電子版のみの購読者  月額4,000円(税込み)
■申し込み方法   パソコン上の日経電子版サイトから
■運営         株式会社日本経済新聞社

http://it.nikkei.co.jp/internet/news/release.aspx?i=244764

 別に日経新聞の宣伝に協力するつもりはありませんが、不肖・木走は経営する会社の方で日経を購読していますので、月額1,000円(税込み)で購読できるわけですね。

 で日経を購読していない人で電子版のみの購読者は月額4,000円(税込み)だそうです。

 タカッいすね。

 ・・・

 ふう。

 日経のこのネット記事の有料化ビジネス、うまくいくかどうか固唾をのんで見守っているのは日経よりIT化で後れをとる朝日読売大新聞だけではありません、地方紙も含めて業界全体が注目していることでしょう。

 ネットでなんとかビジネスを成立させたい、これは彼らにとって後がない戦略なのであります、広告媒体としては紙の方は明日がないことは前回のエントリーで紹介した電通リポートでもシビアな数字が出ているのであります。

■[メディア]21世紀の広告媒体としては終わっている新聞業界〜電通プレスリリース徹底検証
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20100222

 でもですね、申し訳ないですが今回のこのビジネスはうまくいかないと思います。

 ユーザー視点が決定的に欠落しています、いや古い体質の彼らには気づきがないのです。

日経新聞定期購読者は月額1,000円の悲しきプライド

 まずこれですね愚かしいですよね、日経購読者は無料にしなければダメでしょ。

 なぜ姑息にも既存購読者からもカネを取ろうとするのか、それはですね、彼らにとってネットはあくまで便利ツールの位置づけなんですよね、だから紙媒体の購読者からもツール代を取ろうとするわけです。

■出鱈目な購読料金月額4,000円の悲しき理由 

 この月額4,000円というのが悲しすぎますよね。

 月額4,000円という購読料金の設定ですがこれは彼らが正しくマーケティングしてビジネスモデル化して出した数字とはとても思えません。

 無料記事と有料記事をどう差別化するのかという課題もありますが月4000円はいかにも高すぎます。

 なぜ日経は自らこんなハードルを高めてしまうのでしょうか?

 それはですね、彼らの紙媒体の部数を守るためには、この値段でしか設定できなかったのは疑う余地はありません。

 紙のほうで日経は他紙より少し高い朝・夕刊セット版で月4,383円、朝刊のみで3,568円の価格であります。

 もしネットの月額購読料をただしくマーケティングして月200円とかに設定すると、紙の方を買う価値がなくなるということを恐れたわけです。

 しかしこれはあまりにも悲しいユーザーを無視した発想であります。
 コスト原価で考えても見てください、貴重な紙原料を使用し輪転機を回して何百万部も物理的に毎日印刷してたくさんのトラックで輸送し新聞販売店人海戦術で配られる紙の新聞にどれだけの費用が発生しているか。
 バーチャルなネットで記事を公開するのは圧倒的に低コストのはずにもかかわらず、彼らは愚かにも高コストの紙媒体を守るためにネットの価格を紙に合わせているわけです。
 ・・・

 ネットビジネスを本気で成功させようと思えば最初の立ち上げ時のサイト来場者数が勝負なのは常識です。

 出鱈目な購読料金月額4,000円といい、既存購読者からも月額1000円を取るという自らハードルを上げるだけ上げてしまってはこれで成功する方が不思議だと思います。

 

(木走まさみず)