東電にとって実に『不都合な真実』(An Inconvenient Truth)が現出するのか!?〜福島第一で放射能汚染の海洋流出が止まっていない可能性が浮上
東京電力福島第1原発付近の観測用井戸から高濃度の放射性物質が検出されている問題について最近の報道を時系列でまとめておきます。
6月19日、「東京電力は19日、福島第一原子力発電所の2号機タービン建屋東側(海側)にある観測用井戸の水から、法定許容限度の30倍の放射性ストロンチウムと、同8倍のトリチウムを検出したと発表」します。
【6月19日】
福島第一の観測用井戸から法定値超す放射性物質
(2013年6月19日13時27分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/feature/20110316-866921/news/20130619-OYT1T00260.htm?from=popin
24日、「東京電力は24日、福島第一原子力発電所に隣接する港湾内の海水から、原発事故直後の2011年6月の観測開始以来、最も高い濃度の放射性物質のトリチウムが検出されたと発表」します。
【6月24日】
福島第一原発に隣接の港湾で高濃度のトリチウム東京電力は24日、福島第一原子力発電所に隣接する港湾内の海水から、原発事故直後の2011年6月の観測開始以来、最も高い濃度の放射性物質のトリチウムが検出されたと発表した。
検出場所は、19日に高濃度のトリチウムや放射性ストロンチウムの検出が明らかになった2号機タービン建屋東側(海側)の井戸の北約150メートルの地点。東電は「注意すべき値」としながら、トリチウム以外の放射性物質の濃度に変化がないため、「井戸から海水に漏れたとは言い切れない」としている。
今回、最高値が検出された地点では、今年4月以降、4回の測定で濃度が上昇傾向を示しており、21日の調査で、トリチウムが1リットルあたり1100ベクレル(法定許容限度は6万ベクレル)検出された。これまでの最高値は11年10月の920ベクレルだった。周辺海域への放射性物質の拡散を防ぐための水中カーテンの内側にあるため、東電は外部への流出はないとみている。
(2013年6月24日21時28分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/feature/20110316-866921/news/20130624-OYT1T01220.htm?from=popin
興味深いのは、この時点で東電は「井戸から海水に漏れたとは言い切れない」としていること、さらに「周辺海域への放射性物質の拡散を防ぐための水中カーテンの内側にあるため、東電は外部への流出はない」としている点です。
この時点で汚染水の海洋流出を東京電力は強く否定しているのですが、この二日後の原子力規制委員会の定例会で、更田(ふけた)豊志(とよし)委員は「汚染水漏えいの影響が海水に及んでいる可能性が強く疑われる」と指摘しています。
【6月26日】
過去最高濃度のトリチウム、福島第一取水口で東京電力は26日、福島第一原子力発電所の港湾内で24日に採取した海水から、1リットルあたり1500ベクレルに上る放射性物質のトリチウム(三重水素)を検出したと発表した。
採取場所は1〜4号機の取水口付近で、2年前の観測開始以来、最も高い濃度。国が定めた許容限度(同6万ベクレル)より低いが、4月の同110ベクレルから今月21日は同1100ベクレルと、上昇し続けている。
約150メートル南西にある井戸の地下水からは、5月下旬以降、1リットルあたり50万ベクレルのトリチウムが検出されている。26日の原子力規制委員会の定例会で、更田ふけた豊志とよし委員は「汚染水漏えいの影響が海水に及んでいる可能性が強く疑われる」と指摘。詳細な調査や、港湾の地盤を薬剤で固めて地下水の海への流出を防ぐ工事を急ぐよう求めた。
(2013年6月26日22時34分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/feature/20110316-866921/news/20130626-OYT1T01309.htm?from=popin
29日には別の「海に近い井戸でも高濃度汚染」が新たに検出されます。
【6月29日】
海に近い井戸でも高濃度汚染…福島第一原発
(2013年6月29日20時04分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/feature/20110316-866921/news/20130629-OYT1T00726.htm?from=blist
二日になると、さらに新たに「東電は2日、海から6メートル地点に新設した井戸から、ストロンチウムなどベータ線を出す放射性物質を1リットル当たり4300ベクレル(1日採取)検出したと発表」します。
【7月3日】
福島第1原発:高濃度汚染水検出 放射性物質濃度、海側井戸で上昇
毎日新聞 2013年07月03日 東京朝刊
http://mainichi.jp/feature/20110311/news/20130703ddm041040084000c.html
五日になると、「東電は5日、2号機タービン建屋に近い、海から約25メートル離れた別の井戸の水から、ストロンチウム90などベータ線を出す放射性物質が1リットルあたり90万ベクレル検出された」と発表、これは「事故後に検出された地下水や海水の汚染としては最も高い濃度」であります。
【7月5日】
井戸から放射性物質90万ベクレル…事故後最高
(2013年7月5日21時48分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/feature/20110316-866921/news/20130705-OYT1T00952.htm?from=blist
8日、今度は「東電は7日、海から約6メートルの井戸で5日に採取した水から、1リットルあたり60万ベクレルの放射性トリチウム(三重水素)を検出したと発表」します。
【7月8日】
福島第1原発:高濃度汚染水検出 2号機、海側の井戸で最高の60万ベクレル
毎日新聞 2013年07月08日 東京朝刊東京電力福島第1原発2号機付近の観測用井戸から高濃度の放射性物質が検出されている問題で、東電は7日、海から約6メートルの井戸で5日に採取した水から、1リットルあたり60万ベクレルの放射性トリチウム(三重水素)を検出したと発表した。海への放出基準の10倍にあたる。この井戸ではこれまでで最も高い濃度。東電によると、観測は昨年12月に始めた。東電は「2011年4月に海に漏れた高濃度汚染水の一部が地中に残留した影響とみられ、海に流出しているか確認中」としている。【奥山智己】
http://mainichi.jp/feature/20110311/news/20130708ddm002040130000c.html
この記事で重要なのは「60万ベクレル」という高濃度数値そのものだけでなく、昨年12月に始めたこの井戸の観測の中で、この値は「この井戸ではこれまでで最も高い濃度」である点です。
この段階で、東電はこれまで一連の検出を「2011年4月に海に漏れた高濃度汚染水の一部が地中に残留した影響」によるもので、新たに漏れ出していることは否定、また海洋に流出していることも否定してきましたが、ここで「海に流出しているか確認中」と初めて海洋流出の可能性についてふれています。
そして9日、福島第1原発の港湾近くの観測用井戸で、ここに来て地下水セシウム濃度が約90倍に上昇していることが判明します。
【7月9日】
福島第1原発:井戸のセシウム濃度急上昇 3日で90倍
毎日新聞 2013年07月09日 10時37分(最終更新 07月09日 12時54分)東京電力福島第1原発の海側の地下水観測用井戸で高濃度のトリチウム(三重水素)などが検出されている問題で、東電は9日、追加で掘った4本の調査用井戸のうち1本で、放射性セシウムの濃度が3日間で約90倍に急上昇し、過去最高値になったと発表した。
濃度が上がったのは、2号機の海側で、地下水の観測用井戸の南23メートルに6月末に新設した井戸。今月5日時点で1リットル当たりセシウム134が99ベクレル、セシウム137が210ベクレルだったのが、8日に採取した井戸水では、セシウム134が9000ベクレル、セシウム137が1万8000ベクレルに上昇した。井戸は事故直後の2011年4月に高濃度の放射性汚染水が漏れた2号機取水口付近にある。
一方、この井戸から約100メートル南にある別の地下水監視用の井戸でも、ストロンチウムなどのベータ線を出す放射性物質が8日採取の水から1リットル当たり1700ベクレル検出され、1日採取の水の6・5倍に上昇した。
東電は濃度上昇について、原子炉や建屋内にたまっている汚染水が漏れた可能性があるほか、事故直後の汚染水漏れで土の中などにたまっていた放射性セシウムがしみ出した可能性もあると説明している。一方で井戸水が約25メートル離れた海に流出していることは認めていない。東電は8日から、海側の護岸沿いに水ガラスを注入し、土壌を固めて海への流出を防ぐ工事を始めている。【西川拓】
http://mainichi.jp/feature/20110311/news/20130709k0000e040146000c2.html
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一連の報道をダイジェストでまとめましたが、ここへ来ての濃度上昇は、今現在も汚染水が原子炉から地下へ漏れ出し続けている可能性が高いことを強く示唆しているものであり、東電の「2011年4月に海に漏れた高濃度汚染水の一部が地中に残留した影響」だけではこの濃度上昇を科学的に説明することは難しいでしょう。
あわせて同時に港湾域内でも汚染数値が上昇していることは、原子力規制委員会の更田豊志委員が厳しく指摘しているように、「汚染水漏えいの影響が海水に及んでいる可能性が強く疑われる」と考える方が、東電の「井戸水が約25メートル離れた海に流出していることは認めていない」立場よりも、科学的な妥当性があると思えます。
いずれにしても、福島第一で放射能汚染の海洋流出が今この瞬間も実は止まっていないという極めて深刻な事態が可能性して示唆される検出が続いています。
もしこれが真実ならば、東電にとって実に『不都合な真実』(An Inconvenient Truth)となりましょう。
しかしどんな結果が得られようと、そしてそれが政治的には不都合であったとしても、ここはあくまでも科学的な立場を堅持し、東電には詳細なかつ真摯な実態調査を行っていただきたいものです。
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http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20130423/1366697365
(木走まさみず)