木走日記

場末の時事評論

資生堂TUBAKIのCM制作チームと橋下さん英文原稿作成チームについての一考察

 今回は少し肩の力を抜いたコラムです。

 CM総合研究所の調査によれば、「2013年4月度 業類別CM好感度No.1銘柄」の「生活雑貨」部門好感度第一位は「資生堂TSUBAKI」であります。

2013年4月度 業類別CM好感度No.1銘柄
生活雑貨
資生堂TSUBAKI
http://www.cmdb.jp/ranking/3000/201305_cmtop10_2.html

 うむ、資生堂のCMのコンテンツ・クオリティの高さは昔から有名ですが、中でも今回のTSUBAKIのCMはすごい好評のようであります。


 ネットでも以下の公式サイトでCMを閲覧できますので見ていない読者は必見でありますよ。(職場のPCなどでは再生時の音には注意いたしましょう)

TSUBAKI CMギャラリー
http://www.shiseido.co.jp/tsubaki/cm/

 で、資生堂のCMが「一粒で二度おいしい」と呼ばれているのは、CMに採用した音楽が高確率でヒットすることなんですよね。
 ちょっとネットで調べたら、今回の印象的な歌唱力の歌姫はデビュー半月前の無名の女性アーティストLUHICA(読み方:ルヒカ)嬢なのであります。
 資生堂のやり口のうまいのは、CMは3月から流しているのに、この歌いまだ発売されていないのです、なんという「タメ」でしょう、このデビュー曲のスーパーメガヒットが約束されているわけです。
 で、ルヒカさんは歌唱力もさることながら、バイリンガルなので、日本語バージョンと英語バージョンが同時に聞くことができるというのであります。

 ルヒカさんの公式サイトには「◆幼稚園からインターナショナルスクールに通うバイリンガル 」との説明がありました。

 YouTubeの公式動画をご紹介。

(英語)

(日本語)

 見事なプロモーション展開だと言えるでしょう。
 で、資生堂のCM制作チームのすごいところは、CMをヒットさせるためには、
 手段は選ばない、悪魔とでも手を結ぶ
 というプロ根性(苦笑)であります。
 実はこのルヒカさん発掘および曲作り、資生堂自らの少女趣味を見事なビジネスにまで昇華したスケベ親父(失礼)に依頼していたのです。
 そうです、ルヒカさんは秋元康プロデュースなのであります。
 ルヒカさんの公式サイトに秋元康氏のいやらしいコメントが乗っていますのでご紹介。

【プロデューサー秋元康氏コメント】
まだ、一度もLUHICA本人と会っていない。
声しか知らない。
何百本のデモの中から、何かに引き寄せられるように、
彼女の歌を選んだ。
一度聴いたら、忘れない声。
また、聴きたくなる声。
ミステリアスな魅力だ。

http://www.luhica.com/

 なんだか少し気になるのは、秋元氏が「まだ、一度もLUHICA本人と会っていない。声しか知らない。」と言っていることと、公式動画が微妙に顔を隠していることです。

 どんなお顔なのでしょう、興味は尽きないのです。

 余談になりますが、ルヒカさんのプロモーションビデオもオフィシャルサイトも、資生堂CM制作チームが全面協力して作ったのだそうです、すべてのイメージを統一しているのだとか。

 いかがでしょう、この資生堂CM制作チームのすごい企画力は、プロとして徹底していますよね、いや見事です。

 ・・・

 で、情けないのが橋下氏および日本維新の会チームのプレゼン能力の低さです。

 多くの人が指摘していますが、公表された英訳文を見てがっかりしちゃいました。

 例えば「政治家」は英語で(Statesman)を使います、一方「政治屋」は(Politician)ですね、もちろん後者は「悪代官」のような香りがします。

 そういえば当ブログの昔のエントリーで「政治家」(Statesman)と「政治屋」(Politician)の違いを説明したのがあるので抜粋してご紹介。

 それはさておき日本の政治の世界では「政治家」と「政治屋」がいるようであります。

 本当の意味で政治指導者と呼びえる「政治家」(Statesman)は、私利私欲・党利党略は二の次にして国民、国家の利益のために文字通り無私の境地で政治を「天職」としておこなう人々であります。

 「党利党略は二の次に」と表現しましたが、本来は「党利党略はなくして」と言いたいところですが、現実問題政治はパワーゲームですから、マザーテレサのようにはいかないようです。

 対して「政治屋」(Politician)は、逆に国民、国家の利益は二の次に、私利私欲・党利党略を主目的にして、「政治」を食い扶持を稼ぐ道具として利用している、すくなくとも国民からはそのように写ってしまう人々であります。

 しかも残念なことに「政治家」(Statesman)よりも「政治屋」(Politician)の割合が圧倒的に多いのがこの国の立法機関国会の現状のようであります。

 「政治屋」(Politician)は、「権力を手にしてふんぞり返りたい」とか「いばりたい」とか「大臣になりたい」とか「利権にありつきたい」とか、「とにかく政治家であり続けたい」とか、利己主義者と規定できるでしょう。

 そういう「政治屋」たちは、定見や見識というものがあるはずはありません。悪知恵は働くかもしれませんが、世界に通用するコモン・センスはありません。哲学はないし、価値観は不明だし、世界観は不在です。実行の約束はするが、実際には何もしないのです。

 彼らは、選挙で有権者に約束した政策や公約を選挙後に平気で投げ捨てることができるのです。

 なぜならば「政治屋」(Politician)は、「政治家」(Statesman)とは行動の優先順位が違います。

 「政治家」(Statesman)は国家・国民のためにと信じて掲げた政策を理由もなくなげうったり捨てたりはしません。


[政治]無節操な「政治屋」(Politician)だらけの「造反復党組」の中で筋の通った「政治家」(Statesman)平沼赳夫
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20061113/1163385406

 でですね、橋下さんの公表された原稿の冒頭部分の日本語と英語の比較してみたいんですが。

(日本語)
 まず、私の政治家としての基本的な理念、そして一人の人間としての価値観について、お話ししたいと思います。
(英語)
 Today, I want to start by talking about my basic ideals as a politician and my values as a human being.

 「政治家として」が"as a politician"って「政治屋」なっちゃっているわけです、英米の政治家なら絶対自己に使わない表現です。

 あと「一人の人間として」も"as a human being"はおかしいです、「一人の人間」対して"human being"じゃ、うまく言えないですが「科学的」すぎるというか「スケールが無意味にでかすぎる」というか「さよなら人類」的ズレまくり感が醸し出されています。

 最初の1行読んだだけで脱力してしまいました。

 内容はともかく、文法的にレベルが低すぎて読みづらくてひどいのです。

 どうした、なぜネーティブな翻訳スタッフを使わなかったのでしょうか。

 日本国内にもルヒカさんのように「◆幼稚園からインターナショナルスクールに通うバイリンガル」はいっぱいいるでしょうに。

 内容以前の問題で大変残念でありました。



(木走まさみず)