木走日記

場末の時事評論

安倍内閣世襲議員批判が不評なのは『木走日記』が悪いんじゃない(涙目

 前回のエントリーでは、「我が第2次安倍内閣世襲議員率50%は何を意味するのか」を考察いたしました。

2014-10-20 我が第2次安倍内閣世襲議員率50%は何を意味するのか考察する
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20141020

 公明党太田昭宏国土交通大臣を除いた第2次安倍内閣 (改造)の自民党出身18人の閣僚のうち、安倍晋三内閣総理大臣を筆頭にそのうち9人が世襲議員が占めています、世襲議員率50%であります。

世襲 職名 氏名
内閣総理大臣 安倍晋三
副総理/財務大臣 麻生太郎
  総務大臣 高市早苗
  法務大臣 松島みどり
外務大臣 岸田文雄
  文部科学大臣 下村博文
厚生労働大臣 塩崎恭久
  農林水産大臣 西川公也
経済産業大臣 小渕優子
  環境大臣 望月義夫
  防衛大臣 江渡聡徳
  内閣官房長官 菅義偉
興大 竹下亘
  国家公安委員会委員長 山谷えり子
  国土強靱化担当 山口俊一
再チャレンジ担当 有村治子
経済財政政策担当 甘利明
国家戦略特別区域担当 石破茂

 日本における国会の世襲議員の実態を数字で押さえ、その割合が国際的に見てどうなのか客観的に分析したうえで、次のようにエントリーを結びました。

 世襲議員の問題は、いきつくところ国会議員の地位を、立派な「政治家」(Statesman)からただの「政治屋」(Politician)におとしめていくことになりましょう。
 国会議員の3人に1人とか5人に2人とかの異常な割合で世襲議員が発生していると言うことは、世襲議員の優秀さと捉えるのは科学的ではありません、そうではなく、選挙の時に世襲である候補者になんらかの強いアドバンテージが働いている結果であると考えるのが普通です。
 本来能力本意で抽出すべきエリート層なのに、抽出段階で「親の後を継ぐ」ものにアドバンテージが働くならば、そのエリート層が劣化するのは必然です。
 そんなことを代々続ければ政治エリートの性質の変質を招くわけです、「政治家」(Statesman)よりも「政治屋」(Politician)が幅を利かせるようになります。
 この国の世襲議員の問題点は根が深いです、単に「親の後を継ぐ」ものにアドバンテージが働くのが選挙だけではないからです、数の力で政局を動かすのにも世襲政治家は能力以上のアドバンテージを発揮して跋扈しています。
 「親の後を継ぐ」ものに能力に関係なくアドバンテージが働くならばその集団が劣化するのは必然です。
 健全な適者選択システムが機能しないことは日本の政治にとって不幸なことかもしれません。

 うむ、この結論は「国会議員の3人に1人とか5人に2人とかの異常な割合で世襲議員が発生している」状況は、健全な適者選択システムが機能していないことを示しており、「日本の政治にとって不幸なこと」であると結論付けました。

 このエントリーにはいろいろなコメントがツイッターや提携先BLOGOSコメント欄を通じていただいたわけですが、評判があまりよろしくない(苦笑)のであります。

 非世襲議員より世襲議員のほうがまだましだろうと。

 異論反論は大歓迎の当ブログですが、これは納得してしまいました。

 そうです、三代続いた民主党政権の体たらくがいけないのです。

 例えば4年前の民主党菅政権の顔ぶれをチェックしてみれば、

世襲 役職 氏名 年齢
  総理 菅直人 63
  総務 原口一博 50
  法務 千葉景子 62
  外務 岡田克也 56
  財務 野田佳彦 53
  文部科学 川端達夫 65
  厚生労働 長妻昭 49
  農林水産 山田正彦 68
  経済産業 直嶋正行 64
  国土交通・沖縄北方 前原誠司 48
  環境 小沢鋭仁 56
防衛 北沢俊美 72
  官房 仙谷由人 64
国家公安・拉致・防災 中井洽 67
  行政刷新 蓮舫 42
  国家戦略 荒井聡 64
  金融・郵政 亀井静香 73
公務員改革 玄葉光一郎 46

★・・・・世襲議員
☆・・・・親族に政治関係者有り

 ご覧のとおり菅氏を含めた18閣僚中いわゆる世襲議員は、日本社会党衆議院議員中井徳次郎を父に持つ中井洽氏ただ一人であります。

 他に親族に政治家を有する閣僚は、父が県会議員だった北沢俊美氏と岳父が佐藤福島県知事であった玄葉光一郎氏の二人だけであり、国会議員として地盤を引き継いだわけではありません。

 菅政権は、18閣僚中いわゆる世襲議員はわずか一人という清新さだったのであります。

 ああそれなのに・・・多くの国民にとって現在トラウマ政権であるとも言える民主党菅政権の評価は、ここではあらためて触れませんが、これでは世襲議員のほうがまだましであるとのご指摘ももっともであります。

 ふう。

 さてしかし、それでも国会議員の世襲の割合が3人に1人とか、自民党に至っては5人に2人とか、異常な割合なのは健全とはいえないでしょう。

 私は小さなITコンサル会社を経営していますが、親の力を借りず自分一代で会社を興した自負心がささやかながらあるのですが、それはさておき、仕事上、二代目社長や三代目社長とよく話をする機会があります。

 4年前、自民党に離党届を提出した鳩山邦夫総務相が人望なく完全に孤立無援に陥ったことを、エントリーで取り上げました。

2010-03-17■「坂本龍馬」になれない鳩山邦夫氏の残念〜リーダーの人望の有無は「口」ではなく「背中」が生み出すもの
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20100317

 鳩山邦夫氏は大物政治家が四代続く名門鳩山家の出身であります。

 政界再編を目指し新党設立を宣言し自民党を離党した彼ですが、残念ながら彼の大志につきあおうとする政治家があらわれません、孤立感漂ってしまっているのであります。

 彼の口は「坂本龍馬になる」など相変わらず多弁なのですが、その背中は無口のようであります。

 「坂本龍馬」になれない鳩山邦夫氏の残念な状況を見るに付け、リーダーの人望の有無は「口」ではなく「背中」が生み出すものであるとあらためて思うのであります。

 このエントリーの中で私は本業のコンサル経験から、2代目、3代目社長の「ひ弱さ」について解説しています。

 本業で不肖・木走は経営コンサルをさせていただいております、また各種経営者セミナーの講師などもさせていただいておりまして、中小企業の経営者の相談事を数多く聞かせていただく立場にあります。

 で、相談の定番のひとつが「私は社員に人望がない」という悩み事であります。

 おもしろいなあと思うのはこの悩みを相談する社長さん達には一つの傾向があるようで、いわゆる社名に創業者の名字が含まれるようなオーナー企業の2代目、3代目社長が多いのであります。

 彼らには共通の悩みがあります、いわゆるたたきあげで創業したカリスマ性を有する先代に何かに付け比較され、「苦労知らず」、「ぼんぼん」などの偏見に日々悩んでいるという図式であります。

 彼らは例外なく自らの人望の無さを自分の出自つまり「創業者の子」とか「オーナー一族」であることを理由にします。

 私はそのような社長さんにはいつもある単純なアドバイスをして差し上げます。

 「社員の誰よりも早く出社しなさい」

 アドバイスはこれだけです。

 オーナー企業の2代目3代目社長で「私は社員に人望がない」という悩みを抱えている人たちは、ほぼ例外なく「重役出勤」しております。

 始業が9時ならば10時とかひどい例では午後出社も当たり前のようなケースも少なくありません。

 ただでさえ親が築いた会社を血筋だけで引き継いだ「ボンボン」社長という偏見を持たれているのに、そんな「苦労知らず」社長が重役出勤などをしていたら、どうして一般社員が「この人に付いていきたい」と発想できうるでしょうか。

 始業が9時ならば誰よりも早く例えば8時には出社する、この習慣を持つことをアドバイスします。

 狙いは2つです。

 ひとつは社員の持つ偏見に対するイメージチェンジ効果を狙ったものです。

 単純ですが「いつもうちの社長は誰よりも早く出社している」事実の持つ効果は絶大です。

 会社の規模にもよりましょうが、事務所が狭く社長と社員が顔を見合わせることが普通であり、社長の存在が身近である規模の零細企業ほどこの効果は大きいようです。

 で、本当の狙いは本人の意識改革です。

 もちろん2代目、3代目社長がすべてひ弱いわけでもなく、同様に世襲議員がすべて能力不足であるわけでもないのは当然です。

 しかし、今回の小渕議員がまさにそうであるように、地盤・看板・カバンが親族からすべて用意されているような2世・3世議員の少なからずは、お金に「甘い」といわざるをえないのです。

 彼らは決してお金に「汚く」はない、しかしお金に「厳しく」もない、お金に苦労した経験が決定的に一般人に比較して欠落しているのであります。

 国権の最高機関である「立法府」において、このようなお金に「甘い」議員が増加することは、決してよろしいこととは思えないのです。

 経済政策などで地に足の着いた議論がはたしてできうるのか・・・

 民主党政権の体たらくはありますが、世襲議員が増えることは決して健全とはいえないと思うのです。

 もちろん世襲議員がいたっていい、でもこんなにいっぱいはいらないでしょ。

 例えばビジネスで一代でたたき上げの経験を持つオーナーなど、豊かな経験と知恵を有する幅広い人材を選択できるような政治システムを考えられないものでしょうか。

 世襲はいないけど政権担当能力に著しい問題があった民主党政権

 民主党政権よりはるかにまともだけど、世襲だらけでわきがいかにも甘い自民党政権

 この二択だけでは、いかにも寂しいのであります。

 そうはおもいませんか、読者のみなさん(涙目。



(木走まさみず)