エボラと中国、最悪の組み合わせが現実味を帯びてきた
22日付けエキサイトニュース記事から。(※リンク切れています)
エボラウイルス陽性43人、流行地域から戻った人を検査―中国
中国メディアが現地衛生当局の情報として伝えたところによると、同国南部の広東省でエボラウイルスを保有しているとみられる人、43人が見つかった。露国営メディア「ロシアの声」の中国語電子版が22日伝えた。
広東省衛生・計画生育委員会の陳元勝主任によると、エボラ出血熱の流行地域から戻った人を対象に検査を行った結果、43人が陽性だった。
今年8月23日以降、世界で最も危険とされるエボラ出血熱の流行地域から広東省に戻った人は8672人。
広東省広州市で22日に始まった中国輸出入商品交易会(広州交易会)の第2期では外国から多くの人が訪れるため、現地当局は入国者の管理を厳しくし、ウイルス感染の防止に努めることを決めた。
現地メディアは「中国ではまだ、エボラ出血熱の症例は確認されていない」と強調している。http://www.excite.co.jp/News/chn_soc/20141022/Xinhua_99145.html
うむ、露国営メディア「ロシアの声」の中国語電子版が22日伝えたところ、「広東省でエボラウイルスを保有しているとみられる人、43人が見つかった」ということであります。
上記記事はデマであったようでエキサイトニュースもネット上から削除しています、また上記情報源の「ロシアの声」においても、「43人は、分析の結果、陰性だった」という新華社通信の内容を報道、事実上誤報を認めた形です。
エボラ実験薬 患者で直接臨床試験
中国南部の広東省でエボラ出血熱に感染している疑いが持たれていた43人は、分析の結果、陰性だった。新華社通信が伝えた。だが広東では、衛生管理の強化が続いている。アフリカ諸国からの入国者たちは、エボラ出血熱の感染拡大を引き起こす潜在的な危険性を持っている。
(後略)
うむ、今回はデマでよかったわけですが、中国でのエボラ発症の可能性は逼迫している模様で、このような状況下、中国ではここ数日エボラ発症のデマが流れては消えています。
22日付け日経ビジネス記事から。
エボラとSARSと香港
(前略)
エボラ出血熱の問題が連日、国際メディアのトップニュースになっている。このニュースには中国人も香港人も敏感になっていて、その証拠に中国のネット上では、初のエボラ出血熱患者発見、といったデマがちらほら流れている。
先日、「浙江省寧波で中国初のエボラ熱患者が発見された。この病気は致死率90%以上。専門家の推測ではエボラが中国に流入したのは10日前だという。子供たちや家族には帰宅したら必ず石鹸での手洗いをさせ、露店での食事は控えさせるように。食事は家で必ず熱を通したものを食べること」という書き込みが微博で流れた。寧波市衛生当局の公式アカウントはすぐさま、この情報をデマだと否定し、「寧波の某病院でナイジェリア男性が10月16日に(エボラの疑いで)観察入院したが、体温は正常であり医学的に問題ないと判断し、きょう(20日)に観察を解除した。目下、寧波市ではエボラの疑いの患者はいない」と説明した。17日には広州の交易会の会場で、エボラ患者が見つかり、広東省第二病院に隔離されている、という情報がネット上に流れた。地元紙記者がすぐさま地元衛生当局に確認し、それがデマであると発表した。このほか、北京、上海、香港などでも、エボラ発生!のデマは流れては消えた。
(後略)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20141021/272828/?P=1
うむ、エボラに関して中国人がかなりナーバスになっています、浙江省、広州、北京、上海、香港各地のデマ流布につながっているようです。
上記「ロシアの声」記事は「広東省では今も3000人以上が、エボラ出血熱に感染している疑いが持たれている。これらの人々は全員、エボラが猛威を振るっているアフリカ諸国から戻ったばかりで、その後、隔離された」ことや、「中国政府は、エボラの流行が深刻な脅威を与えていることを認めている」事実を強調しています。
広東省では今も3000人以上が、エボラ出血熱に感染している疑いが持たれている。これらの人々は全員、エボラが猛威を振るっているアフリカ諸国から戻ったばかりで、その後、隔離された。今のところ中国、そしてアジア地域全体でも、エボラ出血熱の感染は確認されていない。しかし中国政府は、エボラの流行が深刻な脅威を与えていることを認めている。これを受け、アフリカに実験ワクチンJK-05を数千回分送ることが決まった。JK-05は、中国軍向けに中国の軍事医学アカデミーで開発されたもので、エボラ出血熱の治療薬としての臨床試験は完了していない。高等経済学院の教授で、エビデンスに基づく医療(EBM)専門家協会の会長を務めるワシリー・ヴラソフ氏は、現在の状況を受け、中国の医療関係者たちは、必要な場合に、アフリカにいる中国人に実験薬を投与する許可を得たと述べ、次のように語っている。
「アフリカには中国人が大勢いる。そのため、彼らが第一の保護対象となる。しかし、この実験薬は、実際に保護の役目を果たすのだろうか?この薬は本当に効果があるのだろうか?それを確かめることができるのは、臨床試験だけだ。しかし残念なことに、現在、エボラのような致死率の高い病気の治療法に関する質の高い臨床試験を行うことが大きな問題となっている。少なくとも、いま米国が計画しているワクチンの臨床実験をアフリカで実施するのは、非常に難しいだろう。」
うむ、エボラと中国、最悪の組み合わせが現実味を帯びてきています。
エボラがアジアで発症するとしたら中国の可能性が一番高いと言えましょう。
言うまでもなく中国とアフリカの交易は過去最大化しています。
例えば貿易都市の広州市では人口の2%、20万人以上がアフリカ系で、アフリカ人街が出現しています。
広州、アフリカ人が最も多く住むアジア都市に―中国メディア
http://www.recordchina.co.jp/a93497.html
中国で深刻なのはアフリカ人などの外国人の「三不(不法入国、不法滞在、不法就労)」問題は、これまでずっと、広州全体が頭を抱える難問となっていることです。
入出国の管理がずさんなのです。
また、アフリカ全体に暮らす中国人は数百万人にのぼるとされ、シエラレオネ、リベリア、ギニアなどエボラ感染地域に暮らす中国人も2万人以上いるといいます。
アフリカに立つ100万人の中国人
http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20131217/257142/
毎月、膨大な数の人々がアフリカと中国の間で流動しているわけです。
中国政府が「エボラの流行が深刻な脅威」と認めていることも理解できます。
そして中国の感染症対策がもともと甘いことも不安要因です。
2014.10.6 20:29
中国広東省でデング熱2万人超 6人死亡
http://www.sankei.com/world/news/141006/wor1410060049-n1.html
日本ではデング熱感染が今年159例でたということで大流行だと騒がれましたが、中国では広東省だけで3万7000例以上の感染者を出しています。死者こそ全国で6人に収まったので、日本でもあまり問題視されませんでしたが、広東省の人口が96,38万人と日本より少ないことを考慮すると、これは実は深刻な事態であったといっていいでしょう。
人口が密集し公衆衛生意識が薄い中国では、一旦ウイルスが広がると、当局の感染症対策の脆弱さとあいまって、その流行の速度も規模も桁が違います。
さらに最悪の事態は、もしエボラ患者出現が起こっても中国当局がその事実を隠蔽し、エボラ流行への初動対策が大きく後手を踏んでしまい、大流行を許してしまうことです。
これは杞憂ではありません、発症の事実が発覚しても過去に中国では、エイズやSARSといった感染症の拡大を当局の情報隠ぺいと報道統制によって許してしまった前科があるからです。
SARS蔓延の2003年、すでに200人以上の感染者が出ていたというのに、中国衛生当局は感染は完全にコントロールできているというコメントを繰り返すだけで、感染者拡大の事実を完全に隠蔽いたしました。
もし、退役軍医の蒋彦永が米TIME誌に命がけで告発しなかったならば、SARSによる死者がどれだけ増えていたかわからないのです。
このときの隠蔽は、江沢民政権から胡錦濤政権に移行して最初に開かれる全人代(全国人民代表大会=国会のようなもの)を無事に行うためだった。国民の命より政治イベントを優先させたわけです。
失敗事例 > SARS流行 - 畑村創造工学研究所
http://www.sozogaku.com/fkd/cf/CZ0200721.html
2008年、北京五輪の無事開催のために、メラミンミルク事件の発生を隠蔽し、赤ん坊の健康被害拡大を許した事件もありました。
中国メラミン混入事件(2008/09)
http://www.safefood.jp/2010/09/30/%E3%83%A1%E3%83%A9%E3%83%9F%E3%83%B3%E3%83%9F%E3%83%AB%E3%82%AF%E9%A8%92%E5%8B%95200809/
もし、中国国内でエボラ出血熱が発生した場合、中国が自国の立場を守るために、過去の失敗を繰り返し初期に情報統制して事実を隠蔽した場合、そしてその隠蔽期間に、患者と接触した少なからずの感染者が中国国内や海外に流動してしまった場合、エボラ拡散は不可避となりましょう。
まさに悪夢です。
エボラと中国、最悪の組み合わせが現実味を帯びてきています。
(木走まさみず)