木走日記

場末の時事評論

菅新政権は清新な「脱・世襲」内閣だ

 5日付け朝日新聞記事から。

 菅新首相「期待」59%、民主は回復 朝日新聞世論調査

 朝日新聞社が4、5の両日実施した全国緊急世論調査(電話)によると、菅直人新首相に「期待する」人は59%で、「期待しない」33%を大きく上回った。参院選比例区の投票先で民主は33%と、鳩山由紀夫首相の辞任表明に伴う前回調査(2、3日)の28%からさらに上昇し、自民の17%(前回20%)と大きな差がついた。首相交代の効果はいまのところくっきり表れている。

 昨年の衆院選直後の調査で、首相就任が確実だった鳩山氏に「期待する」は63%だった。菅氏はこの時とほぼ同程度の期待を集めている。

 背景には菅氏の「脱小沢」の姿勢に加え、改革の進展や民主党の変化への期待があるようだ。

 民主党幹事長の小沢一郎氏と距離を置く菅氏の姿勢を「評価する」は82%、「評価しない」10%で、高い評価を受けている。

 菅氏が首相になることで民主党が「変わると思う」は42%、「そうは思わない」49%と悲観派が多いが、「変わると思う」人の中では菅新首相に「期待する」が87%に達する。

 参院選比例区の投票先は、鳩山首相が米軍普天間飛行場沖縄県名護市移設を決めた直後の先月29、30日の調査では、民主20%、自民20%と並んでいた。しかし、首相交代で急速に回復、1週間で自民のほぼ倍になった。政党支持率も民主は32%(同27%)に上がり、自民は14%(同16%)に下がった。

 一方、民主党中心の政権が「続いた方がよい」は38%、「そうは思わない」38%と伯仲。民主党政権の将来については必ずしも信認されているとはいえないようだ。無党派層では「続いた方がよい」25%より「そうは思わない」45%が多くなっている。

 政治が「大きく変わってほしい」は78%、「それほどでもない」は15%。政治そのものへの変化の願望も強い。衆院の解散・総選挙を「早く実施すべきだ」33%、「急ぐ必要はない」57%だった。

http://www.asahi.com/politics/update/0605/TKY201006050315.html

 各メディアの緊急世論調査によれば、菅直人新首相に対する期待値が軒並み6割前後を示しています、また自民党に逆転を許していた民主党支持率もV字回復、朝日の調査でも民主33%と自民17%にダブルスコアの差になっております

 有権者は鳩山・小沢のダブル辞任を評価しており、特に小沢氏と距離を置く菅氏の姿勢は、「評価する」82%と高評価になっています。

 みんなの党自民党当たりは単なる選挙目当ての表面上の「小沢隠し」にすぎないと批判を強めていますが、新政権にしてみれば小沢氏が議員辞職でもしないかぎり150人の小沢グループを完全に無視することも現実的には不可能なわけで、その中での菅氏の今回の人事はしっかりと「脱小沢」色を打ち出していると評価できます。

 脱小沢など当然のことであり、ここで小沢支配を終焉しなければ早晩民主党有権者から見放されましょう、一部で参院戦後の9月の民主党代表選で小沢氏が反転攻勢にでるなどの推測もあるようですが、小沢氏本人の復権はよもや世論が許さないでしょうし、また小沢傀儡の候補者を擁立するとするならば、その時点で民主党は脱小沢で闘う参院選の結果に対して世論を裏切ることになります。

 「脱」とか「反」「親」など民主党はいつまでもコップの中の不毛な議論している余地はありませんでしょう。

 ・・・

 さて菅新政権ですが報道によれば新政権閣僚に内定した顔ぶれはなかなか新鮮であり評価できます。

 「脱小沢」などの馬鹿の一つ覚えのレッテル張りに忙しいメディアなのでありますが、それよりも今回の新政権のメンバーには顕著な興味深い特徴があり、なぜメディアが取り上げないのか不思議なのであります。

 8日夕刻に正式に組閣する内閣に内定した顔ぶれを見てみましょう。

◇入閣が固まった顔ぶれ

役職 氏名 年齢
  総理 菅直人 63
  総務 原口一博 50
  法務 千葉景子 62
  外務 岡田克也 56
  財務 野田佳彦 53
  文部科学 川端達夫 65
  厚生労働 長妻昭 49
  農林水産 山田正彦 68
  経済産業 直嶋正行 64
  国土交通・沖縄北方 前原誠司 48
  環境 小沢鋭仁 56
防衛 北沢俊美 72
  官房 仙谷由人 64
国家公安・拉致・防災 中井洽 67
  行政刷新 蓮舫 42
  国家戦略 荒井聡 64
  金融・郵政 亀井静香 73
公務員改革 玄葉光一郎 46

民主党役員

役職 氏名 年齢
  幹事長 枝野幸男 46
  国会対策委員長 樽床伸二 50
  選挙対策委員長 安住淳 48

※・・・・再任
★・・・・世襲議員
☆・・・・親族に政治関係者有り

 ご覧のとおり菅氏を含めた18閣僚中いわゆる世襲議員は、日本社会党衆議院議員中井徳次郎を父に持つ中井洽氏ただ一人であります。

 他に親族に政治家を有する閣僚は、父が県会議員だった北沢俊美氏と岳父が佐藤福島県知事であった玄葉光一郎氏の二人だけであり、国会議員として地盤を引き継いだわけではありません。

 菅新政権は、18閣僚中いわゆる世襲議員はわずか一人という清新さなのであります。

 これは歴代の自民党政権と比較しても非常に顕著な特徴だと指摘できます。

 鳩山・小沢W辞任の意味するもうひとつの重要な側面は、結果的にですが民主党権力から世襲議員の陰をも排除したことです。

 そして新政権が日本政治史的に画期的なのは、実はメディアが騒ぐ「脱・小沢」などの小さなスケールの話よりも、こちらの「脱・世襲」内閣の誕生こそなのだと私は考えます。

 自民党凋落の一因にはびこる世襲議員の問題を再三取り上げてきた当ブログですが、参考までに自民党最後の政権・麻生政権の顔ぶれと比較してみましょう。

麻生内閣の顔ぶれ

役職 氏名
総理 麻生太郎
総務 鳩山邦夫
法務 森英介
外務 中曽根弘文
財務・金融 中川昭一
文部科学 塩谷立
  厚生労働 舛添要一
農水 石破茂
経済産業 二階俊博
  国土交通 中山成彬
  環境 斉藤鉄夫(公明)
防衛 浜田靖一
内閣官房 河村建夫
  国家公安 佐藤勉
  経済財政 与謝野馨
行政改革 甘利明
消費者行政 野田聖子
少子化 小渕優子

 どうでしょう、18閣僚中麻生首相を始め過半数の10閣僚が世襲議員であり、野田聖子氏など祖父から引き継いだ政治関係者を親族に有する政治家を含めると実に13人を数えます。

 ・・・

 メディアはなぜ取り上げないのか不思議であります。

 今回の菅新政権は「脱・小沢」内閣であるだけでなく「脱・世襲」内閣の様相を示しています。

 実に清新であります。



(木走まさみず)