木走日記

場末の時事評論

ねじれ政治家とねじれ政権とねじれマスメディア


 この国の政治状況は、なにもかもねじれてきています。

 17日付け毎日新聞電子版記事から。

与謝野経財相:海江田氏から引き継ぎ 同選挙区のライバル

2011年1月17日 12時43分 更新:1月17日 13時15分

 菅再改造内閣の発足に伴う新旧の経済財政担当相の事務引き継ぎが17日午前、内閣府で行われた。新任の与謝野馨氏と前任の海江田万里経済産業相は、選挙区が同じ衆院東京1区。ライバル同士が同じ内閣で大臣として席を並べるのは異例で、与謝野氏は「2人ともびっくりしている」と感想を述べた。

 大臣室で、2人は握手を交わした後に着座。海江田氏がデフレや為替の状況などを説明した後、順番に引き継ぎ書に署名した。改造前の会見で海江田氏は「人生は不条理」と与謝野氏の入閣に不満をもらしたが、この日の引き継ぎはなごやかな雰囲気で行われ、与謝野氏は「海江田さんとは前から親しい」とにこやかに話した。

 マスコミの世論調査では与謝野氏の入閣には反対意見が多いが、与謝野氏は「仕事をまだしていないので。仕事を一生懸命したいと思います」と述べ、成果を上げることで理解を求める姿勢を強調した。【高橋昌紀】

http://mainichi.jp/select/today/news/20110117k0000e010061000c.html

 09年の総選挙では民主党海江田万里氏に当時自民党だった与謝野馨氏は敗戦、かろうじて比例で復活当選となったわけですが、選挙で勝った海江田氏が大臣を辞し、負けた与謝野氏が新大臣なわけですから、海江田氏の立場で考えればたまったもんじゃないわけで「人生不条理」(海江田氏)との言葉もうなずけます、というか、そもそも小選挙区では敗北して比例で「自民党」枠で復活当選した与謝野氏なのでありますから、民主党政権入りするならば、本来なら議員辞職して議席を返納し一民間人として参加するのが筋と言うモノでしょう、自民党あたりから「平成の議席泥棒」など汚いヤジが聞こえてきますが、「仕事を一生懸命したい」(与謝野氏)と無邪気なこと言ってますが、この人の存在そのものが国会の火種と化す可能性大ですよね。

 ここで与謝野馨氏のここ4年の自民党政権時代をトレースしておくことは重要と想われます。

 4年前、安倍改造内閣において彼は内閣の要(かなめ)である内閣官房長官に就任、続く福田政権では自民党税制調査会の小委員長に就任し、福田内閣内閣改造により3年前には内閣府特命担当大臣(経済財政政策、規制改革担当)に就任、続く麻生太郎内閣では経済財政政策担当相に再任、2年前には、財務大臣並びに金融担当大臣である中川昭一氏が先進7ヶ国蔵相会議に於ける失態を理由として辞任、その後任に指名されたため、与謝野氏一人で経済関連3閣僚を兼任することとなります。

 あらためて整理するとすごいですね、最後には与謝野氏一人で経済関連3閣僚を兼任していましたよね。

 つまり彼こそ「ザ・自民」だったわけです。

 つまり、与謝野馨という政治家は、過去4年の自民党政権、安倍・福田・麻生と続いた自民党政権で、内閣官房長官自民党税制調査会委員長、内閣府特命担当大臣(経済財政政策、規制改革担当)、経済財政政策担当相、財務大臣、金融担当大臣、と経済財政部門の要職を歴任してきた、自民党政権の「顔」だったわけです。

 その彼がいまあれほど「ばらまき」と本人が批判してきた民主党政権のそれも「経済財政担当相」という要職につこうと言うのです。

 これでは何のための政権交代だったのか、せっかく民主党政権交代したのに自民党の「経済財政担当相」が復活するなんて、有権者にしてみれば「エイリアンから命がけでせっかく助けたのに、助けた人間の体から後からエイリアンが出てくる」ような騙し討ちみたいなもんでしょう。

 ポリシーがないです。

 無節操に政権を渡り歩く与謝野氏も与謝野氏ですが、それを受け入れる民主党政権の罪はもっと大きいと言えましょう。

 与謝野氏は自民党政権時代から、社会保障費を抑制しかつ消費税を上げるという「中福祉中負担」論者であり、その点では今もいっさいブレはないでしょう。

 一方、民主党政権は2年前、何と公約して政権交代を勝ち取ったのか。

 消費税を上げる前に、徹底した行政改革をし無駄を無くします、公務員の人件費を2割減らします、なおかつ経済政策を断行し景気を浮上させます、消費税増税は4年間しません、こういって当時の自民党政権と政策の差別化を行って有権者の支持を得たのではありませんか。

 徹底した行政改革はどうしたのです?

 公務員2割削減はどこいった?

 ・・・

 民主党管政権は自民党政権で経済閣僚を歴任してきた与謝野氏を経済閣僚として向かえました。

 これで民主党政権はこと経済政策に関しては自民党政権劣化コピー政権となることでしょう。

 まあ、ねじれ国会にふさわしい、政策もねじれるエイリアン政権であります。

 マスメディアはなぜかこの国の政府のこの世紀末的無節操さを批判しません。

 この国のマスメディアは消費税増税支持ですので、どんなに出鱈目な公約違反が起ころうとしていても批判しないのです。

 権力チェッカーとしてのメディアの存在価値を自ら放棄しているとしか思えません。

 ・・・

 国会論戦で激しく批判してきた政権にヌケヌケと閣僚入りするねじれ政治家。

 ねじれ政治家を受け入れて選挙公約と真逆なことを実行しようとしているねじれ政権。

 そんな出鱈目な政権人事を一切批判せず沈黙を守るねじれマスメディア。

 目が回りそうです。



(木走まさみず)