木走日記

場末の時事評論

消費税増税でケミストリー(相性)が合う野田・谷垣・マスメディア〜戦時下の戦争ゴーゴー大政翼賛会と戦争ゴーゴー報道と同じ

 9日付け読売新聞記事から。

「ケミストリーが合う」首相・谷垣氏合意の背景

 野田首相自民党の谷垣総裁がトップ会談で、社会保障・税一体改革関連法案の成立で合意した背景には、厳しい財政事情への危機感を共有していることがある。

 「決められない政治」への世論の批判も考慮したと見られる。

 首相は8日夜、記者団に「日本のために局面打開しなければいけない中で、真摯(しんし)に意見交換した」と語った。

 財政事情は極めて悪化しており、今後、少子高齢化がいっそう進むことを考えると、消費増税は避けられないと首相は判断している。

 この点、谷垣氏も思いは同じだ。谷垣氏は財務相を経験し、財政、金融に造詣が深い。ギリシャの財政危機と、そのことが国際社会に与えた影響を踏まえ、「日本の財政再建も待ったなしだ」と指摘してきた。

 一体改革法案の先行きが不透明になり、このところ、国債市場は神経質になりつつあった。仮に、国債が売られるような事態になれば、国の財政や国民生活への影響は避けられない。こうした市場の動向も、両党首を合意へ向かわせたとみられる。

 そもそも、谷垣氏が、民主、自民、公明3党合意の破棄を辞さない態度で衆院解散にこだわったのは、自民党内の事情がある。自民党の若手議員や落選中の前議員らは、早期に衆院選に臨んで政権復帰を果たしたいと考え、谷垣氏を突き上げてきた。

 逆に、苦戦が予想される民主党は、解散は遅いほうが良いと考える議員が大半だ。首相と谷垣氏とも、足元の事情から、突っ張り合わざるを得ない事態になっていた。

 しかし、民主党のみならず、自民党の支持率もふるわない背景にあるのは、こうした「党利党略」で結果を出せない政治への世論の失望であり、首相、谷垣氏ともその点も考慮したと見られる。

 これまでも、首相は「谷垣総裁を尊敬している」と公言し、谷垣氏も「首相とはケミストリー(相性)が合う」と語ったこともある。2人の相性の良さも、合意を後押しした。

(2012年8月9日09時55分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20120809-OYT1T00330.htm?from=main2

 首相と谷垣自民党総裁は「ケミストリー(相性)が合う」との読売記事であります。

 なにがケミストリーなんだ、馬鹿じゃなかろうか?

 この首相・谷垣氏合意の背景には二人が「ケミストリーが合う」からだとする読売のお間抜けな記事ですが、マスメディアからして消費税増税法案成立にこんなダメ記事で大はしゃぎしているのですから、世も末であります。

 9日付け各紙社説は民自公合意を手放しで歓迎・評価しております。

【朝日社説】一体改革成立へ―解散前にやるべきこと
http://www.asahi.com/paper/editorial.html
【読売社説】民自公党首合意 一体改革の再確認を評価する
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20120809-OYT1T00143.htm
【毎日社説】党首会談合意 自民の譲歩を歓迎する
http://mainichi.jp/opinion/news/20120809k0000m070128000c.html
【産経社説】3党首会談 国益優先の合意評価する 残る懸案も早急に処理せよ
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120809/stt12080903210002-n1.htm
【日経社説】国益を見据えて「決める政治」を進めよ
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO44738030Z00C12A8EA1000/

 消費税増税法案成立に向けて世論の動向を無視し全紙が消費税増税賛成と言う異様な偏向報道メディアスクラムが続いているわけですが、各紙の社説タイトルには不思議な事に「消費税」とか「増税」の文字はなく、あるのは「改革」とか「国益」とか「決める政治」とか肯定的な言葉が並んでいるわけです。

 なんだこの気持ちの悪い財務省が泣いて喜ぶ「祝消費税増税法案成立」一色の翼賛報道体制は?

 どうやら野田さんと谷垣さんお二人にこの国のマスメディアも「ケミストリーが合う」ようです。

 確かに国民の利益のためではなく財務省の省益のための消費税増税法案に脳がケミストリー(化学)変化を起こしている点では、3者はまったくの同類なのでしょう。

 この同意で消費税増税法案10日成立し、14年4月に8%、15年10月に10%へ上がる見通しになりました。

 逆進性の強い消費税増税に対し低所得者層対策になお課題が残っており、マスメディアは食料品など生活必需品を中心に税率を掛けないか低く抑える軽減税率の導入を強く主張していますが、新聞購読料を「生活必需品」に含めよと手前勝手な提案をしています。

 今なお、他ならぬマスメディアの世論調査でこのタイミングでの消費税増税反対が国民の過半数を占めているにもかかわらず、大新聞が押し並べて増税賛成のメディアスクラムを構築し続けているのは、ひとつには自分達は消費税増税から例外の扱いをしてもらおうという魂胆なわけです。

 このデフレ経済の下で消費税を5%から10%に増税したら、成長を止めてしまっている日本経済にいかなる悪影響をもたらすか、中小零細企業を中心に消費税倒産が激増してしまう事態が強く危惧されます。

 例えば今オフィス街では昼食の弁当がワンコイン(500円)以下で売られていますが、消費税が5%から10%に倍になっても、おそらくどこも売価に増税分の転嫁などできないでしょう。

 また、大企業による下請け企業へのイジメのような価格抑制圧力も強まる事でしょう。

 大企業が増税分を顧客売価に価格転嫁できないために、消費税増税分を仕入中小零細企業に圧力を掛けてくるのは自明です、中小零細が否応なしに抱え込むことになります。

 増税で景気は冷え込み売上は落ち、さらに利益率まで悪化し倒産する企業が急増、失業者が増え、さらなる景気の冷え込みを招く、デフレ経済下の増税は日本経済にこのような負のスパイラルを招き、失業者や倒産に追い込まれる自営業者などを中心に自殺者も急増する事でしょう。

 ・・・

 政権与党の総理大臣と、野党第一党の総裁と、すべてのマスメディアが消費税増税でケミストリー(相性)が合っているのです、この気持ちの悪い言論封殺は、まるで戦時下の戦争ゴーゴー大政翼賛会と戦争ゴーゴー報道と同じでは有りませんか。

 ふう。



(木走まさみず)