木走日記

場末の時事評論

星一徹を髣髴とさせる谷垣自民党の突然「ちゃぶ台返し」に人の世の不条理性を見る

 8日付け読売新聞電子版記事から。

自民党、解散時期「近い将来」では不十分

 民主党城島光力国会対策委員長は8日午前、国会内で自民党岸田文雄公明党の漆原良夫両国対委員長と会談し、同日中にも3党党首会談を開催するよう申し入れた。

 城島氏は、党首会談で野田首相民主党代表)が伝える内容として、自民党が確約を求める衆院解散の時期について「社会保障・税一体改革関連法案成立の暁には、近い将来、国民の信を問う」と言及すると伝えた。

 党首会談では、一体改革関連法案の早期成立と、新党「国民の生活が第一」などが7日夕に提出した内閣不信任決議案と首相問責決議案の否決を要請することも説明し、協力を求めた。

 自民党は「『近い将来』では不十分」として難色を示し、時期の明確化などを求めており、大詰めの調整が続いている。

 3党国対委員長会談では、城島氏の提案に対し、岸田、漆原両氏が「党首会談に向けては積み上げが必要だ」とし、合意文書の作成などを求めた。

 自民党は、首相が8日午前中に解散を確約しなければ、同日午後に不信任、問責両決議案を独自に提出する構えだ。ただ、石原幹事長は同日昼、公明党の井上幹事長と国会内で会談し、「協議が継続している」として、首相側の対応を見極める方針を確認した。

(2012年8月8日14時30分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20120808-OYT1T00712.htm?from=top

 うむ、自民党がアニメ「巨人の星」の頑固オヤジ星一徹を髣髴とさせる、ちゃぶ台返しを国会で展開しております。

 理不尽な突然のちゃぶ台返しであります。

 消費税増税を柱とする「社会保障と税の一体改革」関連法案の採決前に、早期の衆院解散・総選挙を確約しない限り、衆院に内閣不信任案と参院野田首相の問責決議案を独自に提出するというのです。

 ここにきて谷垣自民党が強硬路線に舵を切りました、消費税増税に政治生命を掛けてきた野田首相は土壇場で梯子をはずされて大ピンチと相成りました。

 うーむ、八月のアツい太陽が谷垣総裁の心変わりを促したのでしょうか、一部報道では今回の「ちゃぶ台返し」を裏で煽っていたのは小泉元首相との情報も有りますが。

野田政権が緊迫!小泉元首相も猛ハッパ「ちゃぶ台返しをやれ」
2012.08.06
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20120806/plt1208061540002-n1.htm

 独自の政局勘を持つ小泉氏が先月28日、都内のホテルのロビーで、石原伸晃幹事長を呼び止め、約10分間にわたって活を入れた。

 「一体何をやっているんだ! 野党が解散権を握ってる政局なんてない。こんなチャンスは珍しいんだぞ」

 小泉氏は、他の党幹部や派閥領袖らにも電話で「勝負時だ」「ちゃぶ台返しをやれ」と説得したという。その後、国民的人気の高い息子の小泉進次郎青年局長ら若手議員が1日、谷垣氏に3党合意破棄を申し入れたこともあり、流れができた。

 この自民党の土壇場「ちゃぶ台返し」で大慌てなのが消費税増税法案成立を一貫して後押ししてきた大新聞であります。

 各紙はいっせいに社説を掲げて「ちゃぶ台返し」を批判しております。

【朝日社説】民・自対立―3党合意に立ちかえれ
http://www.asahi.com/paper/editorial.html
【読売社説】内閣不信任案 一体改革を党利党略で弄ぶな
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20120808-OYT1T00130.htm
【毎日社説】混迷する国会 政争の愚を党首は悟れ
http://mainichi.jp/opinion/news/20120808k0000m070149000c.html
【産経社説】野田首相 政治生命かけ解散決めよ 問責前に党首会談で打開を
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120808/stt12080803290002-n1.htm
【日経社説】最優先すべきは消費増税法案の成立だ
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO44643600X00C12A8EA1000/

 日経社説の結びは「法案が不成立の場合、民自公3党はみな敗者である」とお怒りモード全開でございます。

 首相と自民党谷垣禎一総裁は党首会談で、率直に意見交換し、関連法案の成立に万全を期してもらいたい。ここで頓挫することになれば、衆院選後にどのような枠組みの政権ができても、容易に消費増税法案を成立させることはできないだろう。

 法案が不成立の場合、市場の混乱なども懸念される。「決められない政治」に戻ってしまえば、民自公3党はみな敗者である。

 この自民党の突然の「ちゃぶ台返し」は、法案成立の最後まで自公は協力してくれるものと信じていたであろう野田首相にとって、理不尽・不条理そのものでありましょう。

 うむ、不条理と言えばアルベール・カミュの小説『異邦人』を連想します。

 『異邦人』において、主人公ムルソーは裁判の最後で殺人の動機を「太陽が眩しかったから」と述べます、人を殺したのは夏の太陽のせいだと人間社会の不条理性を浮き上がらせるこの有名なセリフは、映画化されたときも名場面のひとつになっております。

 増税反対派の当ブログとしては、谷垣さんの突然の「ちゃぶ台返し」を、理不尽ながら支持いたします。

 その理由が、小泉元首相に煽られたためなのか、八月の太陽がまぶしすぎたためなのか、それともオリンピックのなでしこジャパンの活躍に刺激を受けたためなのか、いかなる不条理性が働いたのか、私にはまったくわかりませんが、増税法案が頓挫する一点だけで、谷垣自民党の今回の「ちゃぶ台返し」を支持いたします。

 そして日経社説の結びの言葉、「法案が不成立の場合、民自公3党はみな敗者である」点も支持します。

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 7日は、暦の上で秋の始まりとなる立秋

 しかし、気温はまだ夏真っ盛り、今年は残暑も厳しそうですね。



(木走まさみず)