祝!海江田氏民主党新代表〜民主党は組織としてのガバナビリティの改善を目指すべき
25日読売新聞電子版速報記事から。
海江田氏90票、民主新代表に…馬淵氏は54票
民主党は25日午後、都内で野田首相(党代表)の後継を決める代表選を行い、海江田万里元経済産業相が90票を獲得、馬淵澄夫元国土交通相の54票を上回り、新代表に選ばれた。
代表選には2氏が立候補し、投票は党所属国会議員によって行われた。
海江田氏は、ただちに党役員人事に着手。来年の参院選に向け、衆院選で惨敗した党の再生に取り組む。
(2012年12月25日14時56分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20121225-OYT1T00815.htm?from=top
海江田さん、まずはおめでとうございます。
さて、海江田さんが90票で馬淵さんは54票ですか、母数が国会議員145人(衆院57人、参院88人)ですから、無効票が1票あったようですが、それにしても失礼ながら候補者の顔ぶれも投票する国会議員の数もなにやら寂しい代表選ですね、現在の民主党の置かれている状況を象徴しているように思えるのは私だけではありますまい。
あれだけの大敗の後の代表選です、元気がないのは仕方がないとしてもです、ちょっと切ないのは「海江田新代表」と聞いても、我々国民にはあまり何も響いてこないことのほうです、別に海江田氏の政策能力うんぬんを批判するのではなく、要するに今の民主党に誰が代表になったとしても国民の関心が民主党にほとんど向かっていないと思われるのです。
これは切ないことです、所詮政治家も人気商売であり支持されるにしろ批判されるにしろ、国民から注目されなければその存在価値はないのです、国民から無視されるのが一番政党としてはつらいことでありましょう。
おそらく誰が代表になっても来年の参議院選挙での民主党の苦戦は避けれないでしょう、穿った見方をあえてすれば岡田さんや前原さんは今回は海江田さんに来年の参議院選挙の「敗戦処理」をやってもらおうという算段なのかも知れません。
さて新代表のもとで民主党はどのような手法で再建されていくのでしょうか、今回は組織論から民主党の現状を捉えてみたいと思います。
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今度の選挙で民主党は党そのものの存在理由を国民から厳しく問われたのだと思います、ならば民主党議員は相当の危機感を共有しなければならないでしょう、まさに民主党存亡の危機と申せましょう。
しかしながら代表選の日程は二転三転し相変わらずの内輪もめの様相を呈し、またしてもそのガバナンスの無さを国民に見せているように思えます。
では民主党がなぜガバナンス・統治能力が低く内輪もめばかり繰り返すのか、党の綱領すら作ることができない寄り合いの集団だからという批判がありますが、それは否定しないのですが、私は民主党のガバナンスの低さを組織論的視点で考察してみたいのです。
ある組織のガバナンス・統治能力が失われている場合、実に多くのケースでその組織構成員側に問題があることが多いのです。
単刀直入に言って、民主党議員は概してガバナビリティ・被統治能力が劣化していると思われます。
本来日本人は、ガバナビリティ・被統治能力が高いと国際的には評価されていますが、ガバナビリティとはルールを守って支配される能力です、人に責任を押し付けない、各人が自らの為すべきことを責任を持って行う、全体のために個人がルールを守る、そのような能力です。
3.11のとき、被災された方々が互いに助け合いながら騒乱も略奪もほとんど無く救援物資を奪い合うわけでもなく黙々と列に並んで各人が相応の物資を分け合う、この姿に海外のメディアは誇り高き日本人のメンタリティを絶賛していました。
これは日本人の美徳ともいえます、集団としてのガバナビリティが極めて高いのです。
欧米ではこのようにガバナビリティを評価されるべき能力として肯定的に使うわけですが、どうも日本では被統治能力というと従順とか没個性など否定的なイメージが伴ってしまうことが多いのですが、この価値ある能力は日本でももっと重視されてしかるべきでしょう。
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組織の構成員のガバナビリティを高める最も一般的な方法は、古今東西変わらない「制服効果」という手法があります。
ガバナビリティが強く求められる組織、例えば軍隊とか警察、あるいは電車やバスや飛行機などの交通機関関係者、彼らは例外なく共通の制服を着用しています、そして制服を着ている限りつまり勤務時間内においては、個人の意思ではなく組織のルールに拘束されます。
サッカーや野球などの集団スポーツにも見られます。
スポーツの事例ではガバナビリティとリーダーシップ、非統治能力と統治能力は見事に共存可能であることが理解できます。
プロスポーツの試合を見れば、彼らは極めて高いガバナビリティで見事にチームプレイに徹していますが、と同時に選手個々人はそれぞれの個性的な能力を示しています。
被統治能力の高さは必ずしも没個性を伴わないケースもあることを多くの集団スポーツで見ることが出来ます。
余談ですが、この「制服効果」を見事に利用したのがヒトラー率いるナチスでありました、彼らは党服、軍服にひじょうなこだわりを持って「かっこいい」「あこがれる」デザインを採用し、国民統治に悪用しました。
「制服効果」は多くの国の教育現場でも活用されています。
これも余談ですが、昔、都立高校の制服が廃止され自由服となったとき、たまたま都立の学力低下と時期が重なったために「制服を復活させてゆるんだ規律を元に戻そう」という一部の主張がありましたが、まあ制服と学力に相関関係があるのか私は疑問なのであります興味深い話ではあります。
ガバナビリティ・被統治能力に関して論じるときに、どうも日本では負のイメージが付きまとうのは、やはりこの「制服効果」が左右のイデオロギーに悪用されてきた現実があるかもしれません。
ヒトラーのナチスや現在の北朝鮮などの独裁国家に「制服効果」が悪用されてきたことは事実なのですが、しかし「ガバナビリティ」という能力自体は、本来イデオロギーとは関係の無いひとつの能力に過ぎません。
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政党に話を戻します。
日本の政党で構成員のガバナビリティが高いのは日本共産党と公明党です。
強いイデオロギーと強い宗教心は心理的な「制服効果」をもたらすものだからと私は考えています。
一方自民党は民主党ほどではないですが上記2党に比べればガバナビリティは低いほうです。
しかし自民党のほうが民主党より組織としてのルールがしっかりしています。
その分、民主党のような致命的な分裂はおこらないのだと思います。
民主党は組織としてのルールをなかなか決められない、ルールを決めても守れない構成員がいる、言うことを聞かない構成員がいる、自己の任務の責任を取れない、逆に発生する事象を他人の責任に転嫁する・・・
被統治能力がない組織はまとまることができません。
民主党は、どうすればガバナビリティの高い組織に生まれ変われますでしょうか。
私には特効薬のようなものは思い浮かべないのですが、月並みですが「綱領」という政党の基本的目標・ルールを作り、それを構成員がしっかり共有する、といった基本的なことから始めるしかないのではないしょうか。
海江田さんには是非民主党再生のため強い指導力を示して頂きたいものです。
大変な時期に代表となられるわけですがご健闘をお祈りします。
(木走まさみず)