「がれき受け入れ」非科学的な反対運動が展開されている神奈川などの自治体は参加しなくていい
5日付け河北新報記事によれば、共同通信が実施した全国自治体アンケートで、岩手、宮城両県のがれきの受け入れについて、回答した市区町村の33%が「現時点では困難」、53%が「まったく考えていない」とし、全体の86%が難色を示しているとのことです。
全国自治体調査 がれき受け入れ86%難色 放射性物質懸念
http://www.kahoku.co.jp/news/2012/03/20120305t71002.htm
受け入れ困難の理由ですが、「処理できる施設がない」が53%で最多。「放射性物質への懸念」(41%)、「地理的に運び込みが困難」(24%)、「処理能力を超える」(22%)、「汚染を心配する住民の反発」(20%)と続いています。
中小規模の自治体が「処理できる施設がない」(53%)、「処理能力を超える」(22%)という理由を掲げるのはまだ理解できるのですが、「放射性物質への懸念」(41%)や「汚染を心配する住民の反発」(20%)などの理由が含まれているのは、政府や環境省の説明不足もあるのでしょうが、誤解や偏見に基く反発があるとすればとても悲しいことです。
今回はこのがれき処理の問題について、冷静に数字を追いかけて検証してみましょう。
政府発表によれば、岩手・宮城・福島三県におけるがれき推計量は、それぞれ、475.5万t、1569.1万t、208.2万tの総計2252.8万tと推計されています。
沿岸市町村の災害廃棄物処理の進捗状況(平成24年2月27日) [PDF:147KB]
http://www.env.go.jp/jishin/shori120227.pdf
平成26年3月までにすべてのがれきを処分する計画ですが、現在までに処分完了したがれきはそれぞれ38.0万t、78.7万t、9.5万tの合計126.2万t(全体の5.6%)に留まっております。
こうした中で、岩手・宮城県では、それぞれ57.0万tと344.0万t(総計401万t)のがれきを他県に委託、すなわち広域処理を希望しているわけです。
図表でまとめてみます。
■表1:県別災害がれき推計量と処分完了量
項目 岩手県 宮城県 福島県 総計 がれき推計量 475.5 1569.1 208.2 2252.8 広域処理希望量 57.0 344.0 0.0 401.0 処分完了量 38.0 78.7 9.5 126.2
まずここで押さえておきたい重要な事実として次の2点が挙げられるでしょう。
・福島県はがれきの広域処理希望が0.0、すなわちがれきの県外処理を完全に自粛している。
・がれき総量2252.8万tのうち広域処理希望は401万t、17.8%に過ぎない。
いうまでもなくがれき処理は被災3県で82.2%と大半を行なう予定(福島県にいたっては100%)であり、処理を他県にまかせることにより復興効果のあるプライオリティの高いがれきが広域処理希望になっています。
一部の議論で「がれきの広域処理などせずにすべて現地で処理をすればいい」という意見がありますが、例えば阪神・淡路大震災の際には、兵庫県で発生した可燃性の災害廃棄物のうち約14%が県外で焼却され埋め立てられましたように、今回の17.8%という割合も、迅速な被災地復興という目的を達成するための手段としては過去事例と比較しても適正な規模だと言えます。
次にがれきの放射能汚染の問題について数値に基き検討してみましょう。
広域処理のがれきを発生地域別に整理します。
■表2:県別地域別広域処理希望がれき量
地域 量(万t) 岩手県 57 宮城県 344 (石巻ブロック) 294 (亘理名取ブロック) 44 (東部ブロック) 6 総計 401 環境省広域処理情報サイト より
http://kouikishori.env.go.jp/conditions/
これらのがれきは言うまでも無く岩手・宮城両県で津波被害にあった太平洋沿岸部に集中しています。
平成23年11月11日に文部科学省による広域の航空機モニタリング調査の結果で土壌表層への放射性セシウム237の分布状況を押さえておきます。
■図2:土壌表層への放射性セシウム237の分布状況
図で明らかですが、岩手・宮城両県太平洋沿岸部において深刻な土壌表層汚染はほとんど分布していません。
がれきを燃焼することによる放射性物質放出の懸念ですが、科学的には岩手・宮城両県太平洋沿岸部がれきを燃やすことより、北関東の山林の落ち葉を燃やして焚き火するほうがはるかに高濃度の放射性物質が確認されることでしょう。
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具体的に数値を追ってみれば、がれき受け入れによる放射性物質の懸念は、ほとんど可能性が無いことがわかります。
くどいですが北関東での落ち葉焚きより安全です。
私は東京都民の一人ですが、個人的には東京都は50万トンの受け入れを発表していますが401万トンすべてを受け入れても構わないと思っています。
東京都だけで現実的でないならば、山形、青森、今手を上げている数県も含めてでいいでしょう。
非科学的な反対運動が展開されている神奈川などの自治体は参加しなくていいでしょう。
予定より遅れますが、なに数年でけりがつきます。
それで被災地復興に少しでもお役に立つとしたら幸いです。
(木走まさみず)