がれき受け入れは東日本中心にいこう
18日付けlivedoorニュース記事から。
がれき受け入れ、徳島県の説明が核心を突く(ゆかしメディア)
http://news.livedoor.com/article/detail/6379732/
記事は「60歳 男性」から寄せられた質問、「徳島県の市民は、自分だけ良ければいいって言う人間ばっかりなのか。声を大にして正義を叫ぶ人間はいないのか? 情け無い君たち東京を見習え」などというものに対して、徳島県の回答が核心を突いていると評価しています。
記事の結語より。
余りにも当たり前すぎる回答だが、環境省から提示された8000ベクレルの基準の理由は説明がないまま。放射能は封じ込めが原則であり、それを地方自治体に押し付けるのは酷でしかない。徳島県の説明は、ひじょうに核心を突いたものだ。
本当にこの徳島県の回答が「核心を突」いたものか、この記事では一部文章がカットされているようなのでここは原文で確認いたしましょう。
徳島県の「ようこそ知事室へ」の以下のページが当該の質問と回答です、直接引用いたします。
ようこそ知事室へ
http://www.pref.tokushima.jp/governor/opinion/form/652
■ご意見
登録・更新日:2012-03-15
60歳 男性
タイトル:放射線が怖い? いいえ本当に怖いのは無知から来る恐怖
東北がんばれ!!それってただ言葉だけだったのか?東北の瓦礫は今だ5%しか処理されていない。東京、山形県を除く日本全国の道府県そして市民が瓦礫搬入を拒んで
いるからだ。ただ放射能が怖いと言う無知から来る身勝手な言い分で、マスコミの垂れ流した風評を真に受けて、自分から勉強もせず大きな声で醜い感情を露わにして反対している人々よ、恥を知れ!!
徳島県の市民は、自分だけ良ければいいって言う人間ばっかりなのか。声を大にして正義を叫ぶ人間はいないのか? 情け無い君たち東京を見習え。
■回答
【環境整備課からの回答】
貴重なご意見ありがとうございます。せっかくの機会でございますので、徳島県としての見解を述べさせていただきます。
このたびの東日本大震災では,想定をはるかに超える大津波により膨大な量の災害廃棄物が発生しており,被災自治体だけでは処理しきれない量と考えられます。こうしたことから,徳島県や県内のいくつかの市町村は,協力できる部分は協力したいという思いで,国に対し協力する姿勢を表明しておりました。
しかしながら,現行の法体制で想定していなかった放射能を帯びた震災がれきも発生していることから,その処理について,国においては1kgあたり8000ベクレルまでは全国において埋立処分できるといたしました。
(なお,徳島県においては,放射能を帯びた震災がれきは,国の責任で,国において処理すべきであると政策提言しております。)放射性物質については、封じ込め、拡散させないことが原則であり、その観点から、東日本大震災前は、IAEAの国際的な基準に基づき、放射性セシウム濃度が1kgあたり100ベクレルを超える場合は、特別な管理下に置かれ、低レベル放射性廃棄物処分場に封じ込めてきました。(クリアランス制度)
ところが、国においては、東日本大震災後、当初、福島県内限定の基準として出された8,000ベクレル(従来の基準の80倍)を、その十分な説明も根拠の明示もないまま、広域処理の基準にも転用いたしました。
(したがって、現在、原子力発電所の事業所内から出た廃棄物は、100ベクレルを超えれば、低レベル放射性廃棄物処分場で厳格に管理されているのに、事業所の外では、8000ベクレルまで、東京都をはじめとする東日本では埋立処分されております。)ひとつ、お考えいただきたいのは、この8000ベクレルという水準は国際的には低レベル放射性廃棄物として、厳格に管理されているということです。
例えばフランスやドイツでは、低レベル放射性廃棄物処分場は、国内に1カ所だけであり、しかも鉱山の跡地など、放射性セシウム等が水に溶出して外部にでないように、地下水と接触しないように、注意深く保管されています。
また、群馬県伊勢崎市の処分場では1キロ当たり1800ベクレルという国の基準より、大幅に低い焼却灰を埋め立てていたにもかかわらず、大雨により放射性セシウムが水に溶け出し、排水基準を超えたという報道がございました。
徳島県としては、県民の安心・安全を何より重視しなければならないことから、一度、生活環境上に流出すれば、大きな影響のある放射性物質を含むがれきについて、十分な検討もなく受け入れることは難しいと考えております。
もちろん、放射能に汚染されていない廃棄物など、安全性が確認された廃棄物まで受け入れないということではありません。安全な瓦礫については協力したいという思いはございます。
ただ、瓦礫を処理する施設を県は保有していないため、受け入れについては、施設を有する各市町村及び県民の理解と同意が不可欠です。
われわれとしては国に対し、上記のような事柄に対する丁寧で明確な説明を求めているところであり、県民の理解が進めば、協力できる部分は協力していきたいと考えております。
(※3/13に公表しておりました回答文に、配慮に欠ける表現がありましたので、一部訂正して掲載いたします。)
ポイントはここ。
放射性物質については、封じ込め、拡散させないことが原則であり、その観点から、東日本大震災前は、IAEAの国際的な基準に基づき、放射性セシウム濃度が1kgあたり100ベクレルを超える場合は、特別な管理下に置かれ、低レベル放射性廃棄物処分場に封じ込めてきました。(クリアランス制度)
ところが、国においては、東日本大震災後、当初、福島県内限定の基準として出された8,000ベクレル(従来の基準の80倍)を、その十分な説明も根拠の明示もないまま、広域処理の基準にも転用いたしました。
従来100ベクレル/キログラム(Bq/kg)だったクリアランスレベルを十分な説明も根拠の明示もないまま8,000Bq/kgに80倍にしたことへの不信があるわけですね。
国に成り代わり、徳島県にわかりやすくご説明しましょう。
がれきを焼却すると2つの灰が生じます。
ひとつは主灰といって焼却炉の炉底に溜まる灰で、当然ながら元のがれきより放射性物質は濃縮されます。
もうひとつは飛灰といって煙突からモクモク飛び出す灰です、これもさらに濃縮されています。
産廃焼却炉は排ガス出口手前に集塵機がありそこでほとんどの飛灰は集められるのでほとんどの飛灰は外部に漏れることはないはずです。
それはともかくこれらの放射性物質が濃縮した灰が今この問題の正に核心部分なのであります。
さてここに、平成23年11月11日に文部科学省による広域の航空機モニタリング調査の結果があります、土壌表層への放射性セシウム134の分布状況が広範囲でよくわかりますので押さえておきます。
■図1:文部科学省による土壌表層への放射性セシウム134の分布状況
http://radioactivity.mext.go.jp/ja/1910/2011/11/1910_111112.pdf
凡例が見辛いので拡大してみましょう。
■図2:凡例
ここでの単位はベクレル/キログラム(Bq/kg)ではなく、ベクレル/平方メートル(Bq/m2)と紛らわしいですが、それはともかく10k(=1万)Bq/m2以上の汚染地域が福島県を中心に栃木県、群馬県と続き、また茨城県から千葉県、東京都に掛けても汚染域があることがわかります。さらに宮城県から岩手県にかけての一部地域も汚染されていることが分かります。
さてこれらの地域でも当然昨年来から焼却炉を使用して廃棄物を焼却してきているわけですが、ここに16都県を対象とした一般廃棄物焼却施設における焼却灰の放射性セシウム濃度測定結果があります。
対象は、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、山梨県、長野県、静岡県、調査期間は昨年で6月28日以降の時期で当然ながらまだ東京都もがれきの受け入れをする以前です。
■表1:一般廃棄物焼却施設における焼却灰の放射性セシウム濃度測定結果
都県名 | 報告施設数 | 測定結果(Bq/kg) | 8,000Bq/kgを超える主灰 | 8,000Bq/kgを超える飛灰 |
---|---|---|---|---|
岩手県 | 19 | 不検出〜30,000 | なし | 2 |
宮城県 | 18 | 不検出〜2,581 | なし | なし |
秋田県 | 16 | 不検出〜196 | なし | なし |
山形県 | 14 | 不検出〜7,800 | なし | なし |
福島県 | 22 | 不検出〜95,300 | 7 | 16 |
茨城県 | 30 | 42〜31,000 | なし | 10 |
栃木県 | 18 | 217〜48,600 | なし | 3 |
群馬県 | 24 | 20〜8,940 | なし | 2 |
埼玉県 | 48 | 93〜5,740 | なし | なし |
千葉県 | 58 | 不検出〜70,800 | なし | 8 |
東京都 | 54 | 不検出〜12,920 | なし | 1 |
神奈川県 | 39 | 不検出〜3,123 | なし | なし |
新潟県 | 35 | 不検出〜3,000 | なし | なし |
山梨県 | 13 | 不検出〜813 | なし | なし |
長野県 | 27 | 不検出〜1,970 | なし | なし |
静岡県 | 34 | 不検出〜2,300 | なし | なし |
計 | 469 | 7 | 42 |
http://www.env.go.jp/jishin/attach/waste_koiki_mat20120202.pdf
ご覧のとおり、8,000Bq/kgを超える主灰が確認されたのは福島県の7施設のみですが、8,000Bq/kgを超える飛灰は469施設中42施設で7都県に及んでいます。
確認された施設が多い順に、福島県、茨城県、千葉県、栃木県、群馬県、岩手県、東京都と続いていますが、文部科学省による土壌表層への放射性セシウム134の分布状況による汚染地域と強く相関があることがよく理解できます。
測定結果のmax値に注目すると福島の95,300を筆頭に千葉の70,800、栃木の48,600、東京でも12,920Bq/kgと数値的には8000を軽く超えていることが分かります。
再び徳島県の回答から。
東日本大震災後、当初、福島県内限定の基準として出された8,000ベクレル(従来の基準の80倍)を、その十分な説明も根拠の明示もないまま、広域処理の基準にも転用いたしました。
事実として今までの100Bq/kgというクリアランスレベルでは、昨年のうちから福島県以外でもそれを遥かに越える焼却灰がすでに発生していたことがわかります。
汚染の事態は広範囲に拡大されており100ベクレルでは現実には話にならないのです。
現実に合わせる、おそらくこれが8,000Bq/kgの決定理由でありましょう。
・・・
東京都が岩手県のがれきを50万トン受け入れていますが、まったく問題ありません、もともと東京のがれきも8,000Bq/kg超えていたのでありますから。
なお、焼却灰が8,000Bq/kgを超えているといっても、それが拡散している事実はありません。
逆に昨年来のモニタリングの結果、次のことが確認されています。
1:廃棄物焼却炉の実証試験で、バグフィルターにより99.9%以上のセシウム137が除去されることが確認されている。
2:別の廃棄物焼却炉の実証試験で、バグフィルター、湿式ガス洗浄装置、触媒脱硝装置という組み合わせにより、99.99%の除去効率があることが確認されている。
3:放射性物質が汚泥から検出されている焼却施設(汚泥処理施設)において、排ガスの放射能濃度を測定したところ不検出という結果が得られている。
現実として、福島県、茨城県、千葉県、栃木県、群馬県、岩手県、東京都の地域で昨年来8,000ベクレルを超える灰が確認されています、そして問題なくずっと廃棄物焼却が続けられています。
事実に即していえば、東北・関東のこれらの都県は積極的にがれき受け入れに応じていいのです。
今と何も変わらないのです。
そういうわけで西日本のみなさんはがれき処理に応じなくていい。
うどんでもすすっていて下さい。
私は東京都民ですが、関東地方が中心になって受け入れましょう、と提案したい。
積極的にがれきを受け入れましょう。
大丈夫です、何も変わりません。
(木走まさみず)