木走日記

場末の時事評論

大企業神話から目覚めよ、学生諸君〜彼らは国内の雇用や君たちのことなど眼中にない

 22日付け東京新聞(千葉県版)記事に非常に深刻な数値が報道されています。

就職活動依然厳しく 大学生など内定率48.7%
2011年1月22日

 今春、県内の大学や短大などを卒業する学生の就職内定率は、昨年十二月一日現在で48・7%となり、前年同期比で1・7ポイント増だったことが、千葉労働局の調べで分かった。一九九九年以降では、最低だった昨年に続いて低く、同局は「非常に厳しい状況」としている。
 県内の大学、短大、高等専門学校を含む専修学校計百二校からの報告をまとめた。それによると、新卒予定者の求職者数は二万二千四百九十二人、内定者数は一万九百五十四人。内定率の内訳は大学・大学院が47・9%(前年同期比1・0ポイント増)、短大が36・9%(同2・1ポイント増)、専修学校が56・4%(同4・7ポイント増)だった。
 一方、今春に高校を卒業する生徒の求職者数は五千百七十六人。そのうち三千三百四十五人が内定し、内定率は64・6%(同0・8ポイント増)だった。
 同局は大学、企業、行政の関係者でつくる「新卒者就職応援本部」を中心に、引き続き就職希望者への支援を続ける方針。 (平松功嗣)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/chiba/20110122/CK2011012202000058.html

 千葉労働局の調べで県内の大学や短大などを卒業する学生の就職内定率は、昨年十二月一日現在で48・7%と50%割れが続いており、「非常に厳しい状況」(千葉労働局)であるとされています。

 今春卒業予定の大学生の昨年12月1日時点の就職内定率が過去最低の68.8%と発表されたのですが、この記事によれば短大、高等専門学校を含む専修学校計百二校まで含めると千葉県では50%割れしているのであります。

 内定率48・7%ですか、うむ、これは二人に一人が就職できない、このままでは50%の若者がいきなり若年失業者になってしまうという深刻な数値であります。

 中小企業経営者の立場で言えば、まだまだ求人している中小企業も多くあるのですが、学生達はあまり中小企業には動こうとしないわけで、一部学生達の大企業指向も問題だと思うのですが、大企業側は逆にどんどん新卒採用の日本人枠を減らしているわけです。

 20日付け日経新聞記事から。

ソニー、新卒採用の3割を外国人に アジアの理工系に的
13年採用、比率2倍に
2011/1/20 2:04

 ソニーは2013年をめどに日本の新卒採用に占める外国人の割合を全体の30%まで高める。中国やインドなどアジアの学生の採用を増やし、外国人比率を11年予定の2倍にする。国籍を問わず優秀な人材を集めることでグローバル競争力を高める狙いだ。

 ソニーは国内の大学に留学している外国人を採用したり、アジアの理工系大学などに人事担当者が出向いて現地の新卒者を採用したりする人数を大幅に増やす。採用した外国人は入社後はまず日本で勤務してもらう。仕事で成果を上げた場合は、日本の本社や海外グループ会社の幹部候補生として育成する。

 これまで中国とインドの大学から採用してきたが、今後はインドネシアベトナムなどでも理工系を中心に採用する。

 11年の新卒採用に占める外国人は35人の予定で全体の約14%。10年の4%から大幅に増やし、12年以後もさらに拡大する。今後全体の採用人数は横ばい傾向が続く見込みで、13年の外国人採用は70人程度となる見通しだ。

 産業界では楽天が11年度の新卒社員約600人のうち、3割を外国籍とする見通しなど外国人採用が広がっている。パナソニックファーストリテイリングは、本社と海外法人を合わせた採用の多くを外国人にする考えだ。

 ソニーはグローバルな製品のニーズを吸い上げたり、海外企業との交渉力を高めたりするため、国内本社で働く人材のグローバル化をさらに加速する必要があると判断した。日本本社と海外子会社との間で中堅社員が交代する人事異動を増やすことに加え、より若い年代層でも外国人の活用を増やす。

http://www.nikkei.com/news/headline/archive/article/g=96958A9C93819696E3EBE2E5878DE3EBE2E3E0E2E3E39F9FEAE2E2E2

 「ソニー、新卒採用の3割を外国人」を報じていますこの記事ですが、楽天が11年度の新卒社員約600人のうち、3割を外国籍とする見通し、またパナソニックファーストリテイリングも外国人枠を増加しています。

 「国籍を問わず優秀な人材を集めることでグローバル競争力を高める狙い」だそうですが、輸出産業を中心に海外進出は加速しています、日本国内の産業の空洞化は進み、新卒だけでなく国内雇用は一層冷え込むことになるでしょう。

 21日付け朝日新聞記事から。

海外進出進めば「日本で雇用、5分の1」 シャープ会長

 シャープの町田勝彦会長は21日、副会頭を務める大阪商工会議所の記者会見で、国内の雇用について「電機業界は日本のウエートをどこも5分の1ぐらいにしか考えていない。海外進出を進める限りは雇用も5分の1になる」と語った。円高や負担の重い法人税、貿易自由化の遅れなど国内生産の障害が解消されなければ、雇用は維持できないとの見方を示した発言だ。

 12月1日時点の大学生の就職内定率が過去最低の68.8%となったことなどへの感想として述べた。4月に定期採用を行う慣行についても「海外では新卒とかは関係ない。拠点が海外に移って現地採用が増えるなかで、国内での定期採用が何人かと聞かれても、そういうことは考えなくなった」と話した。

 来年度の税制改正で、法人税減税が研究開発減税の縮小とセットになったことについては、手代木功副会頭(塩野義製薬社長)が「国内に雇用を残すなら国際競争力のある分野しかないが、研究開発減税を減らされると『研究も米国で』となる」と語った。

http://www.asahi.com/business/update/0121/OSK201101210174.html

 シャープの会長が「電機業界は日本のウエートをどこも5分の1ぐらいにしか考えていない。海外進出を進める限りは雇用も5分の1になる」と宣ったそうであります。

 さらに塩野義製薬の社長が「国内に雇用を残すなら国際競争力のある分野しかないが、研究開発減税を減らされると『研究も米国で』となる」と駄目押しの発言。

 このシャープ会長の「日本で雇用、5分の1」発言ですが、ちっとも「目の付け所がシャープ」じゃないですね。

 この国のことよりも会社のこと中心でしか考えていないのでしょう。

 どうにも最近、経団連などの法人税減税要求など大企業トップの欲むき出しの発言が続いていますが、国を憂いての発言というよりも、欲望の赴くままの発言に聞こえてしまいお下品で嫌になります。

 企業の社会的責任、CSR(Corporate Social Responsibility)は、どこへいったんだ?

 企業は、利益を追求するだけでなく、組織活動が社会へ与える影響に責任をもち、あらゆるステークホルダー(利害関係者:消費者、投資家等、及び社会全体)からの要求に対して適切な意思決定をするんじゃないのでしたっけ?

 そもそも日本の商いは、江戸時代から一人で儲けすぎない奥ゆかしさ、耐えず社会に還元する視点を持つ伝統があったはずです、シャープも関西企業のはずですが、有名な近江商人の家訓「三方よし」(売り手よし、買い手よし、世間よし)の精神はどこへいったのでしょうか?

 これじゃ、売り手(シャープ)は精神が悪く、買い手(海外しか見ていない)も悪く、世間(国内の景気と雇用)にも最悪、という「三方悪し」じゃないですか。

 ・・・

 内定のない学生諸君。

 まだ遅くはない。

 多くの中小企業がまだまだ君たちの訪問を待っています。

 大企業神話から目覚めるのです。

 彼らは国内の雇用や君たちのことなど眼中にないのです。



(木走まさみず)