民主党の5つの約束の3つの矛盾
堂々と、かつ、一生懸命にその工程と財源を明示しようと努力したことは肯定的に評価したいです。
麻生首相はさっそく「財源が無責任、極めてあいまいだ。ばらまきの話は、極めて危ない」などと批判しておりますが、まずは自分とこのマニフェスト出してからよその政党を批判しましょうね、同じ土俵にのってから相撲は取らないとイケません。
ネットでも公開されている民主党のマニフェストでありますが、その最終ページには「変わるのは、あなたの生活です。」というキャッチのもとに「民主党の5つの約束」が掲げられています。
変わるのは、あなたの生活です。
民主党の5つの約束
1【ムダつかい】
国の総予算207兆円を全面組み替え。
税金のムダづかいと天下りを根絶します。
議員の世襲と企業団体献金は廃止し、衆議院定数を80削減します。2【子育て・教育】
中学卒業まで、一人当たり年31万2000円の「子ども手当」を支給します。
高校は実質無償化し、大学は奨学金を大幅に拡充します。3【年金・医療】
「年金通帳」で消えない年金。
年金制度を一元化し、月額7万円の最低保障年金を実現します。
後期高齢者医療制度は廃止し、医師の数を1.5倍にします。4【地域主権】
「地域主権」を確立し、第一歩として、地方の自主財源を大幅に増やします。
農業の個別所得保障制度の創設。
高速道路の無料化、郵政事業の抜本見直しで地域を元気にします。5【雇用・経済】
中小企業の法人税率を11%に引き下げます。
月額10万円の手当つき職業訓練制度により、求職者を支援します。
地球温暖化対策を強力に推進し、新産業を育てます。民主党マニフェストより
http://www.dpj.or.jp/special/manifesto2009/index.html
強引にワンセンテンスでまとめれば、税金のムダづかいと天下りを根絶し、一人当たり年31万2000円の「子ども手当」を支給し、「年金通帳」で消えない年金を実現し、医師の数を1.5倍にし、地方の自主財源を大幅に増やし、農業の個別所得保障制度の創設し、高速道路の無料化をし、郵政事業の抜本見直しをし、地域を元気にし、中小企業の法人税率を11%に引き下げ、月額10万円の手当つき職業訓練制度により求職者を支援し、なおかつ、地球温暖化対策を強力に推進し、新産業を育てます、というわけです。
税金のムダづかいと天下りの根絶、また「子ども手当」支給、「年金通帳」で消えない年金を実現等、たいへんすばらしい政策が並んでいます、個人的には財源根拠をより明確に示していただければより安心して支持できると思います。
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さて、不肖・木走は、今回は自民は下野すべき、そして健全な保守政党再生のため猛省すべき、との立場をとっております、ですので民主党のマニフェストには愛を持って(?苦笑)受け止めており、麻生首相のように揚げ足取りをするつもりはありません。
野党なんだもん、与党に比べりゃ現状で財源の根拠なんてあいまいでもしかたないでしょ、という愛であります。
しかし、その上でですが、この民主党のマニフェストの内容をよく読んだ上でですが、海外メディアの外国人記者が有するであろう当然の3つの単純な疑問がどうしても払拭できないのであります、おそらく外国人は疑問というよりも、Contradiction=矛盾を感じることでしょう、根拠があいまいというレベルではなくです。
共産党は民主党中心連合政権に対して建設的野党を目指すといいますが、不肖・木走は、民主党関係者に海外メディアに対する理論武装を促すために、民主党マニフェストにあえて3つの建設的批判を試みたいと思います。
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民主党マニフェストを精読すると、環境問題で、温室効果ガスの削減量を政府目標の倍になる「1990年比で25%削減」という中期目標を掲げています。
これはかなり厳しい数字で経済界などからは「国内工場の新増設が不可能になる」などと批判が出ていますが、それはよしとして、あわせて民主党は「高速道路の無料化」とともに、次の減税策を明示しています。
「ガソリン税、軽油引取税、自動車重量税、自動車取得税の暫定税率を廃止し、2.5兆円の減税を実現します」
「1990年比で25%削減」という政策が民主が政権をとり「国際公約」となればまちがいなく海外からは次のつっこみが入ります。
ならば、なぜガソリン税を廃止し高速道路を無料化するという、温室効果ガス排出促進策を掲げているのかと。
これは単純なしかし深刻な矛盾です。
【Contradiction 2】「地方の自主財源を大幅に」減らす「ガソリン税の廃止」
「「地域主権」を確立し、第一歩として、地方の自主財源を大幅に増やします」とする民主党ですが、現在2.7兆円ほどの「ガソリン税、軽油引取税、自動車重量税、自動車取得税の暫定税率」ですが、これは一般財源として国1・5兆円、地方1.2兆円ほどに振り分けられていますが、これを廃止するとなると、地方にとって1.2兆円という大幅な自主財源減少を招きます。
民主党の言い分がその他の財政措置でそれを上回る「地方の自主財源を大幅に増やす」のだとするのだとしても、私が読み解く限り恒久的な措置としては、数字のつじつまが合いそうにありません。
これも必ずつっこまれると思います。
【Contradiction 3】「米国との自由貿易協定(FTA)締結」に反する「農業の個別所得保障制度の創設」
最後に「農業の個別所得保障制度の創設」ですが、これをマニフェストで掲げるのは国際的には勇気あることであります。
健全な自由な相互貿易の観点からいえば、この政策は保護貿易的補助金であることは明白であり、WTO的には完全にアウト、つまり違反であります。
アメリカあたりからは思いっきり突っ込まれそうです。
しかし特定産業保護策は何も日本だけじゃないわけでそれはそれでよしとしましょう。
しかしです。
民主党マニフェストを精読すると、「51.緊密で対等な日米関係を築く」の第二項でこうあります。
○米国との間で自由貿易協定(FTA)を締結し、貿易・投資の自由化を進める。
これはアメリカ人にとっては特に理解に苦しむことでしょう。
農家保護策と米国との自由貿易協定(FTA)締結を、どう整合性を持たせて説明するのか・・・
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もし民主党が本当に政権をとる気なら、海外メディアにも堂々と政策の説明が求められます。
私が指摘した三つの疑問(Contradiction(=矛盾))にも、理屈はこうであるから矛盾しないと、しっかり説明できるように理論武装しないといけません。
民主党執行部の健闘を祈ります。
(木走まさみず)