少しの増税で国を捨て逃げ出すような富裕層はこの国にはそもそも必要ない〜「富裕層が国外に逃げ出す税制」(日経記事)の竹中平蔵氏に反論する
22日付け日経電子版記事から
富裕層が国外に逃げ出す税制 竹中平蔵 慶大教授
(1/2ページ)2010/12/22 7:00日本経済新聞 電子版政府は16日の臨時閣議で、2011年度税制改正大綱を決定した。法人税を12年ぶりに引き下げ、実行税率(地方税を含む)を40%から5%下げる。個人向けには所得税の控除縮小など、高額所得者、富裕層に多くの負担を求める内容となった。
今回の税制改革の中で、とりわけ注目された項目の一つは、世界で最も高いといわれる法人税率の引き下げ問題だった。これが5%引き下げられたことについては、最初の一歩として前向き…
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なんという煽り記事なのでしょう。
例によって会員限定記事なわけですが、竹中平蔵氏がこたびの民主党税制改正大綱を「富裕層が国外に逃げ出す税制」だと批判しているわけです。
不肖・木走は会員ですので記事全文を読ましてもらいましたが、まあタイトル通りの想像通りの論説でした、会員限定記事なので引用は控えますが、この後の議論のため記事の結びだけ皆様にご紹介。
法人税の引き下げが不十分であることで、企業の海外移転(空洞化)は引き続き起こるだろう。さらに今回の税制改革で懸念されるのは、高額所得者・富裕層の国外脱出である。
この方に掛かると海外との税率の差があれば「企業の海外移転(空洞化)」と「高額所得者・富裕層の国外脱出」が同列に語られちゃうわけですが、竹中氏らしい単純な分析ではあります。
確かに民主党の税制改正大綱の内容がほめられたものではない中途半端なことは認めるものです。
まず法人税の引き下げが不十分であることとは関係無しにこの先も「企業の海外移転(空洞化)は引き続き起こる」可能性が大なのは同意いたします。
企業は純粋に利益を追求します、韓国など海外の企業との厳しい価格競争に晒されている企業は製造コスト削減のため、円高の影響もあり生産拠点を海外に移転する動きが止まりません。
また国内市場の閉塞感から企業そのものをシンガポールなど法人税制が有利な海外に移す動きもあることでしょう。
厳しい景気の中で企業存続を真剣に追求すれば、国外移転というシビアな選択をする企業も少なからずあらわれることは否定しません。
一方、増税により「高額所得者・富裕層の国外脱出」を竹中氏は懸念されていますが、これどうなのか。
竹中氏だけではないですが、この「金持ちに増税すれば金持ちは日本を捨て海外に逃げ出す」論は、少しばかり私には「金持ち」というカテゴリーを単純化しすぎてはいないか、ある意味で富裕層をひとくくりに馬鹿にしてはいないか、と異論・反論があるのです。
私は仕事で経営コンサルもさせていただいておりますので、企業経営者やその親族ともお話しする機会が多いです、そしてその中にはいわゆる富裕層と呼ばれるカテゴリーに属する方々もいらっしゃいます。
先祖代々の名家もあれば一代で財を成した立志の人もいらっしゃいますが、総じて彼らはこの国・日本に愛着を持ってらっしゃいます。
海外勤務の経験がある人ほど日本という国のかけがえのない長所、美しい自然と秩序ある社会、知的で勤勉な国民性と比類無き治安の良さなどを、客観的に評価されているのも興味深いです。
私が観るところ彼らには、この国で財産を築いた者としての義務感、模範となるように振る舞うべきだという社会的責任、そうですねヨーロッパでいうところの「ノブレス・オブリージュ」のような使命感を持っている人が多い気がします。
納税に対しても次のような表現を何度聞いたことでしょう。
「企業として、また個人として、今年もしっかり納税できたことは社会の一員として嬉しい」
読者のみなさんはこれを金持ちの戯れ言と思われますか、私はそうは感じません、この国で成功した者のつとめとしてこの国に納税できることに感謝の気持ちすら感じられました。
「富裕層が国外に逃げ出す税制」というタイトル記事を書いた竹中氏ももちろん「富裕層」なのでしょうが、「富裕層」がすべて貴兄のような「お金が全て」という発想であるわけではないのですよ。
「お金がすべて」、すきあらば脱税しようと守銭奴のような成金も一部にいることを認めた上でですが、増税されたから国を逃げ出す「富裕層」が多数派だとは思えません。
むしろ、この国のために高貴な「ノブレス・オブリージュ」のような使命感を持ち喜んで納税している人たちもいっぱいいるのです。
この程度の増税で「富裕層が国外に逃げ出す税制」と煽るのは、貴兄には富裕層としての高貴な「ノブレス・オブリージュ」がないからでしょう。
平民どもより高額の納税をするのがそんなにお嫌なのか。
でしたら竹中平蔵さん、まずは貴兄から国外に逃げ出すのがよろしいでしょう。
それがあなたのためにも、この国のためにも最善と思うのです。
少しの増税で国を捨て逃げ出すような富裕層はこの国にはそもそも必要ないです。
(木走まさみず)