木走日記

場末の時事評論

早くも戦犯追及の気配漂う保守メディア〜産経インタビューと日経コラム

●保守産経の「懐(ふところ)の深さ」を感じるインタビュー記事

 昨日(5日)なんか特に顕著だったのですが、最近の産経新聞の紙面構成は異常(失礼)としか思えない民主批判の特集・記事・コラムで埋め尽くされていて、読み物としてはある意味でとても読み応えがあります、メディアリテラシー的にですが(苦笑

 で、ここ三日なのですがそんな民主批判記事が溢れる中で異彩を放ったのが、【話の肖像画】という政治学者・御厨貴氏の「自虐的自民党批判」(失礼)ともいえるインタビュー記事なんであります。

【話の肖像画】この国をどうする!!(上)政治学者・御厨貴
http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/090804/stt0908040238000-n1.htm
【話の肖像画】この国をどうする!!(中)政治学者・御厨貴
http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/090805/stt0908050311002-n1.htm
【話の肖像画】この国をどうする!!(下)政治学者・御厨貴
http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/090806/stt0908060404000-n1.htm

 もうインタビュー冒頭からしてこのやり取りですもの。

−−吉田茂元首相もまさか自分の孫が、こんな形で総選挙を迎えるとは思っていなかったでしょうね
 御厨 自民党の長い歴史の中でも、小泉内閣後の3年3首相の統治力の無さはひどかった。まさに小泉純一郎さんが「自民党をぶっ壊す」と宣言して、安倍(晋三)さん、福田(康夫)さんが引き継ぎ、最後の麻生(太郎)さんが見事に実現させましたね。

 「小泉純一郎さんが「自民党をぶっ壊す」と宣言して、安倍(晋三)さん、福田(康夫)さんが引き継ぎ、最後の麻生(太郎)さんが見事に実現」って、どうでしょう。

 インタビュー中には解散を決めた麻生さんのことを暗に「バカヤロー」呼ばわりしている下りもあります。

 ■コンビニ的政党が必要
 −−今回の解散劇を(政治評論家の)屋山太郎さんと(コラムニストの)勝谷誠彦さんは吉田茂元首相の“バカヤロー解散”にかけて「バカヤローの解散」と
 御厨 うまいですよね。本当に祖父と孫とはレベルが違いすぎました。もう自民党は正々堂々と政策論争で闘うしかないでしょう。だから経験のないマニフェストづくりは大変だったでしょう。慌ててつくったと思いますよ。それなのに民主党に対しては「財源はどうするんだ」など批判していますが、日本の今の800兆円の財政赤字をつくったのは自民党政権ですからね。やぶ蛇になりかねない。民主党の批判はやめたほうがいいですよ。

 また民主党に対しては「愛」があります、「初めて政権をとるのですから、誤りは即、正せばよい」とまで発言してます。

 −−財政赤字は官僚にも責任がある
 御厨 そう。だから民主党は官僚主導から政治家主導の政権を訴えているんです。しかし、民主党自民党を批判するだけでは国民の信頼は得られない。責任政党を目指す以上“何でも反対”の批判政党から脱却し、現実路線に軌道修正できる余裕を見せなければいけない。初めて政権をとるのですから、誤りは即、正せばよいのです。
 −−やはり政権交代
 御厨 そうですね。「政権をとったことのない民主党に国政はできない」という人もいるでしょうが、外交や防衛など難しい問題は現実路線を踏まえて軌道修正すればいいんです。わからない問題に無理やり答えを出す必要はない。うそをつくよりいい。

 民主はブレてるとした産経記者の突っ込みには「いや。自民党のブレからみたら大したことないでしょう」とうっちゃります。

 −−すでに「ブレた」と批判の声が
 御厨 いや。自民党のブレからみたら大したことないでしょう。むしろ初めてつくった自民党マニフェストにはかなり無理、矛盾があると思いますよ。これまでの自民党は何でもありの政党でしたから。でもこれからの日本にはそんな万屋よろずや)的政党は必要ありません。ムダなもの、古いものは置かず、お客のニーズに応えたものを必要なだけそろえたコンビニ的政党が必要なんです。

 全文は是非記事本文をお読みいただくとして、このインタビューが他ならぬ産経新聞に3日に渡って掲載されているところに、保守産経の「懐(ふところ)の深さ」を感じるのでありますよ。

 なんだ、産経も「自虐史観」好きなんだな、などと思ったり・・・

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●大企業の代弁者という特徴を余すことなく発揮する日経コラム

 で、保守産経で「小泉「自民党をぶっ壊す」と宣言し、安倍、福田が引き継ぎ、最後の麻生が見事に実現」という「みんなダメだ総懺悔」論とも言える「自虐的自民党批判」インタビュー記事が掲載されている同じとき、日本経済を自民とともに支えてきたという自負心を有する我らが日本経済新聞は、「自民党衰退の経緯」という興味深いコラムを掲載するのであります。

 電子化されていないようですのでテキスト化してご紹介。

自民党衰退の経緯

 8月30日が衆議院選挙の投票日と決まった。直近の都議選を含め与党は地方選で連戦連敗しており、今回の総選挙では政権交代が必至とみられている。4年前の小泉純一郎首相による郵政選挙で大勝した自民党にとっては悪夢のような展開であろう。ここまで自民党を国民が見放した経緯を振り返ってみたい。
 「自民党をぶっ壊す」と言って登場した小泉政権を国民が熱狂的に支持したのは、構造改革で既存秩序を破壊し、全く新しい制度や仕組みによって「失われた10年」から脱却するのを期待したからだ。「国から地方へ」「官から民へ」「大きな政府から小さな政府へ」など、掲げたどのテーマも国民の心をとらえた。
 一方、小泉氏が後継指名した安倍晋三首相は、構造改革路線を継承するといいながら、総理就任直後に郵政造反組の復党を認め、早々と改革路線からの逆戻りを始めた。安倍首相は「美しい国」を掲げ教育基本法の改正や憲法改正に道を開く国民投票法案を成立させ、防衛庁防衛省に昇格させるなど、国民が必ずしも急いでやってほしいと思っていないことに注力した。
 安倍内閣では閣僚の度重なる不祥事という不運にも見舞われ、年金の記録漏れ問題が大きく足を引っ張る形となって参議院選挙で民主党に惨敗した。自らの健康問題もあり在任1年で退陣になったが、この参院選の敗北で参院過半数を野党に取られ、福田康夫内閣、麻生太郎内閣は与党が衆議院での3分の2以上の圧倒的多数を占めながらも国政運営が困難を極めることとなったのである。自民党衰退の最大の責任が安倍内閣にあると言われるゆえんである。
 インド洋の自衛隊による給油活動の停止、ガソリンの暫定税率の廃止、国会承認人事への不同意による日銀総裁不在など、野党は政府与党の最も痛いところを突き、政府自民党に対する国民の信頼を失墜させるのに成功した。ぶれる自民党政治に飽きて「チェンジ」を求める国民に対し、民主党は「政権交代」の4文字で変化をアピールすることに成功しつつある。民主党マニフェストに示される政策は多分にバラマキの色彩が濃いが、ポピュリズムに乗って支持を獲得してきている。
 民主党に対抗してバラマキ合戦をするだけでは自民党の復活はない。国家100年の計を立てて政策実現に取り組むぶれない政治こそ、国民が望む方向である。(枯山水

 日経新聞2009年8月6日紙面 マーケット総合2 15ページ「大機小機」より

 これねえ、「ここまで自民党を国民が見放した経緯」がよくまとまっていると思いました。

 ただ、ちょっと全体的に安倍さんの悪口が目立つんですよね、「自民党衰退の最大の責任が安倍内閣にあると言われるゆえん」あたりとか、読者としてはここは正しくこの記事をリテラシーしておきたい箇所です。

 ご承知の通り、日経は今でも経団連の主張をなぞるように、規制緩和・民営化推進の立場ですから、彼らにとって小泉改革郵政民営化をはじめ原則今でも支持しているわけです。

 ところが「安倍晋三首相は、構造改革路線を継承するといいながら、総理就任直後に郵政造反組の復党を認め、早々と改革路線からの逆戻りを始め」ちゃったわけで、「防衛庁防衛省に昇格させる」など、「国民が必ずしも急いでやってほしいと思っていないことに注力」してばかりで、日経的にはこの「改革路線からの逆戻りを始め」た安倍政権こそが、自民党衰退の主犯であるといいたいわけですね。

 つまりこの記事はですね、「自民党衰退の経緯」とタイトルして過去4年の自民の政策をトレースしつつ、実は日本経済新聞のメディアとしての本音、小泉改革路線が安倍政権のせいでぶれたから自民党は衰退した、と言いたいんですね。

 このコラム、経団連など日本の大企業の代弁者という特徴を余すことなく発揮して見事に日経の本音をモロ出ししている点でも興味深いのですね。

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「みんなダメだ総懺悔」論の産経インタビュー記事と「安倍A級戦犯」説を唱える日経コラム。

 まだ勝敗は出ていないのに、早くも戦犯追及の気配漂う保守メディアなのでした。



(木走まさみず)