木走日記

場末の時事評論

岡田先生是不是笨蛋?〜馬鹿野郎的「中国至上主義」的民主党岡田幹事長発言。

 いやはやなんともであります。

 4日付けRecord China配信ヤフーニュース記事から。

民主党幹事長、政権交代後は「首相の靖国参拝内政干渉は行わない」―中国紙
8月4日14時30分配信 Record China

2009年8月3日、民主党岡田克也幹事長は都内で中国メディアの合同取材を受け、今月末の衆議院選挙で民主党政権が誕生すれば、首相の靖国神社公式参拝や中国への内政干渉は一切行わないと述べた。中国新聞網が伝えた。

岡田幹事長は、「民主党は結党以来、一貫して日中関係を重視してきた。鳩山由紀夫代表や小沢一郎代表代行を始めとする党幹部たちは各々の政治活動において常に日中関係重視の姿勢を示してきた」と述べ、政権交代が実現すれば日中関係はより一層発展すると強調した。同幹事長自身も年に1度は訪中しており、すでに15回の訪中歴があるという。

また、第2次大戦中のA級戦犯が祀られている靖国神社に日本の首相が公式参拝することに中国が強く反発している問題については、「A級戦犯先の大戦の罪人だ。首相が公式参拝すべきではない」と述べ、チベット問題やウイグル問題については「中国国内の事情だ」とし、「中国への内政干渉は行うべきではない」との見解を示した。(翻訳・編集/NN)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090804-00000017-rcdc-cn

 民主党岡田克也幹事長が中国メディアの合同取材の席で、靖国神社参拝問題では「A級戦犯先の大戦の罪人だ。首相が公式参拝すべきではない」と述べ、チベット問題やウイグル問題については「中国国内の事情だ」とし、「中国への内政干渉は行うべきではない」と発言したそうであります。

 痛いなあ、岡田さんのこのタイミングでのこの発言は・・・

 さっそく『大石英司の代替空港』さんではこんな批判意見が語られています。

 極めて外交センスに欠ける、見識のない不用意な発言ですね。
 外交には原理原則があって、人類社会には「人権」という不変の哲学の追究があり、そこに国境はありません。自国内の外国人権利問題を積極的に解決しよう、と掲げる集団が、一方では、他国のそれには介入しません、などというダブル・スタンダードを掲げるのは許し難いペテンです。しかも、こっちはせいぜい戦前戦中の問題や参政権程度の問題。あっちは今起こっている集団殺戮、民族浄化ですよ。それを口出しする気がない、というのは、自民党媚中派に匹敵するヘタレ、害悪です。

 原理原則で言えば、靖国問題は、公式な場で持ち出しちゃ行けないんです。向こうが何か言ってきたら「いやそれは内政問題です」ときっぱり断る。その上で、結果的に「行かなかった」という姿勢を中国側に示せば筋は通るんです。
 挙げ句に、人権問題には介入しません、なんてのは愚の骨頂としか言いようがない。政治家としての理想はあんたには無いのか? いったいこの党の外交は誰が仕切っているんだ。一度、まともな講師を招いて一週間くらい軽井沢に缶詰して、外交舞台で言って良いこと、スルーすべきことの区別をたたき込め。この程度のことは、大学の国際政治学の基本で教えることでしょうが…‥。

 だいたい選挙の最中で、それ言って得かどうかくらい計算しなさい。

大石英司の代替空港』
http://eiji.txt-nifty.com/diary/

 最後の一行「だいたい選挙の最中で、それ言って得かどうかくらい計算しなさい」に強く同感です。

 ポピュリズムに走れとは言いませんが、月末に投票日を控えている現在、日本人の対中世論は毒餃子事件よりこの方極めて悪化して徐々に緩和し始めてはいますがまだ中国に「親しみを感じない」人が過半数であることをもう少し意識して発言の内容を吟味して注意しなくてはなりません。

 中国が反対しているから「靖国参拝は絶対しない」と、日本の内政問題である首相の参拝問題を中国の意向に則するかたちで応じつつ、国際的にも問題になっている中国によるチベット問題やウイグル問題については「中国国内の事情だから内政干渉は行うべきではない」とのダブスタは、これでは媚中派福田元首相達となんら変わらんじゃないじゃないか、と多くの国民にマイナスの印象を与えかねません。

 私は別に「民主党は結党以来、一貫して日中関係を重視してきた」ことにも、中国との関係を良好に保つことにも何ら異議を唱えるものではありませんが、岡田さんの政治家センスを疑うのはこのタイミングでなぜ一部の人々を刺激するようなつたない言い回しをするのか、靖国参拝問題はまだしも、チベットウイグルの問題を中国の内政問題と片付けるなんて、保守人権派の支持者は我が民主党には不要だ、いらない、自民に返してしまえ、とでも考えているのでしょうか。

 ・・・

 ふう。

 岡田さんのこの発言で2ヶ月ほど前の中国の経済学者・呉稼祥氏の言葉を思い出してしまいました。

 馬鹿野郎的「中国至上主義」

 呉稼祥氏は、なんでもかんでも中国が正しいと中国至上主義を主張する過激な扇動者・劉仰氏の新著『中国に模範はない』を、同じ中国人の良識派として、「馬鹿者の説」などと、手厳しく批判したときの単語です。

【識者の見方】馬鹿野郎的「中国至上主義」を排す
【政治ニュース】 Y! 2009/05/21(木) 22:38
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2009&d=0521&f=politics_0521_010.shtml
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2009&d=0527&f=politics_0527_008.shtml

 この記事の中で、呉稼祥氏は、なんでもかんでも偏狭な民族主義をあおる劉仰氏の論を「馬鹿野郎」議論であると痛罵します。

 劉仰氏の煽る「民主主義だから戦争を発動」だのといったトンデモ論を学者らしく論理的に見事に論破していくのですが、特に私が関心したのは、「人権」などの普遍的価値観に対しての呉稼祥氏の冷静な良識派としての賞賛すべき立ち位置です。

 チベット問題などで中国政府の「人権」問題が国際問題化したことを受け、劉仰氏は「すべての国家は、自己の利益を追及する。いわゆる『普遍的な価値』のため、自己の利益を放棄する国家など存在しない。ゆえに、『普遍的な価値』などは、虚偽であることが証明される」とトンデモ論を主張します。

 対して呉稼祥氏は、「他国が樹立した「普遍的価値」は、学習の価値あり」と真っ向から否定します。

 当該部分を記事より抜粋。

(前略)

■国際的ルール否定する「馬鹿野郎」議論を排す

  劉仰氏が議論をごっちゃにしている部分は、ほかにもある。彼は「すべての国家は、自己の利益を追及する。いわゆる『普遍的な価値』のため、自己の利益を放棄する国家など存在しない。ゆえに、『普遍的な価値』などは、虚偽であることが証明される」と主張した。

  彼の論理のでたらめさは、スポーツにたとえると分かりやすい。「すべてのチームは優勝を目指している。目的は、競技のルールを守ることではない。したがって、競技にルールなど存在しない」と主張しているに等しいわけだ。

  国際政治の実際の舞台を考えてみよう。あらゆる国家が自国の利益と権力の維持・拡大を目指すことは事実だ。ただし、国家というものは国際的なルールを守らなければならない。さもないと、水面下に押さえられていた戦争が、ただちに発生することになる。

■他国が樹立した「普遍的価値」は、学習の価値あり

  普遍的な価値というものはさらに、国際関係だけなく、人と人の関係や国民と政府の間にもみられるものだ。人権、統治者の権力の制限、憲法などによる法治のシステムなどだ。これらを認めて、うまく実行している国もある。認めようとせず、実行するつもりなどない国もある。

 普遍的価値とルールを認め、他国から学習することは、短期的にみれば、国家利益の維持とは別のことかもしれない。しかし、長期的な利益になるものだ。「普遍的な価値は存在しない。したがって、他国に学ぶ必要は一切ない」などという主張は、根本的に間違っている。

(後略)

 「普遍的価値とルールを認め、他国から学習することは、短期的にみれば、国家利益の維持とは別のことかもしれない。しかし、長期的な利益になるものだ。」

 この呉稼祥氏の結語の主張は、チベットウイグルなどの国際化した敏感な問題に関しては特に体制批判が許されない今の中国においてはギリギリの勇気ある論説でありましょう。

 ・・・

 馬鹿野郎的「中国至上主義」は他ならぬ中国人の中からも冷静な批判が上がっています。

 岡田さん、今月は選挙の月なのです。

 あまりこれ以上余計な無駄な発言をしないでほしいです。

 岡田先生是不是笨蛋?



(木走まさみず)