木走日記

場末の時事評論

あんたが言うな、竹中平蔵!!〜「豊かで子供の多い家庭が多くの支給を受け、貧しくて子供のいない家庭が負担するという制度」

 5日付け産経新聞記事から。

親の年収、学力左右 文科省 小6調査
2009.8.5 06:19
 
算数 1200万円以上と200万未満で23ポイント差

 昨年実施した全国学力テストの公立小6年生の結果について追加調査した文部科学省の専門家会議は4日、保護者の年収が高い世帯ほど子供の学力が高いとする調査結果を報告した。年収1200万円以上では国語、算数とも正答率が平均より8〜10ポイント高く、200万円未満は逆に10ポイント以上低かった。所得の高低により算数(B問題)で最大23ポイントの差が開いた。
 全国学力テストの結果と年収の相関関係を裏付けるデータの公表は初めて。公教育をめぐり低所得者の支援が改めて課題となりそうだ。
 調査は5つの政令市の公立小計100校を選んで6年生8093人を対象にし、5847人の児童の保護者が回答した。
 結果によると、知識の活用力を問う算数Bの平均正答率は年収による差が最も大きかった。年収700万円未満では平均の55・8%を下回り、「700万円以上800万円未満」は57・1%。「1200万円以上1500万円未満」は65・9%と平均を10・1ポイント上回り、「200万円未満」の42・6%とは23・3ポイントの開きがあった。
 学校外の教育費支出を調べたところ「月に5万円以上」は、算数Bの正答率が71・2%だったが、「支出なし」は44・4%で26・8ポイントの差。専門家会議は「年収が高いほど、塾など子供の教育費に投資するため、差が生じた」と分析している。

http://sankei.jp.msn.com/life/trend/090805/trd0908050619000-n1.htm

 うーん、親の所得の高低が子供の学力に見事に相関していることが文部科学省の専門家会議の調査で判明したわけです。

 専門家会議は「年収が高いほど、塾など子供の教育費に投資するため、差が生じた」と分析してるそうですが、私も2児の親として、またある私学の講師として教育現場に関わるものとして、これは日頃から感じていたこの国の教育の深刻な状況を、あらためて国が数値化して示したかんじですね。

 先進国と比較してもとにかくこの国の教育費は高すぎます。

 世帯主の年齢が四十代の世帯の平均では、2008年までの十年間で教育支出の可処分所得比が0.5ポイント上昇し、6.8%となりました。

 日本政策金融公庫が教育ローン利用者に対して08年に行ったアンケート調査によると、小学生以上の子供の教育支出と習い事などの月謝の合計は、平均で世帯年収の34.1%に達しています。

 こうした家計の教育支出負担は諸外国に比べても重くなっていて、日本の教育に対する私費負担の国内総生産(GDP)比は1.5%と経済開発機構(OECD)加盟国平均の0.8%を上回り、韓国・米国などに次いで高く、一方、日本の公的な教育支出のGDP比は3.4%とOECD諸国(平均5.0%)のなかでも最低水準にあり、このため教育支出全体を見ても平均を大きく下回っているのが現状です。

 日本とは違い私費負担の軽い国もあり、フランスや北欧諸国では日本の三分の一程度です、こうした国々では、基礎教育だけでなく、大学の授業料もすべて政府が負担しているため、家計が負担が軽くなっているわけです。

 これからの日本は産業の高度化・知識集約化に伴い、今後も求められる教育水準はより高くなり、費用が膨らんでいくことが見込まれます。

 低所得所帯では、すでに教育費負担がかなり重いものになっているうえ、奨学金制度も欧米に比べると手薄であることは否めません。

 この記事にあるとおり、このままでは教育格差を招き、それが所得格差を世代にわたって固定化させていくことにつながりかねません。

 その意味で私は財源に不安要素は確かにありますが、民主党の月2万6000円の子供手当政策を少子化対策としてだけでなく、所得格差を世代にわたって固定化することを回避する対策として、強く支持するものです。

 ・・・


●あんたが言うな、竹中平蔵!!

 7日付けの産経「正論」で、竹中平蔵氏が民主党の「子供手当」に対して『住宅一軒贈るに同じ「子供手当」』と題して批判しています。

【正論】慶応大学教授・竹中平蔵 住宅一軒贈るに同じ「子供手当
http://sankei.jp.msn.com/life/welfare/090807/wlf0908070305000-n1.htm

 興味のある読者は是非本文をお読みください。

 私にとっては、この人の弱者に無感覚な論考そのものがとてもおぞましく感じられ、引用もしたくありませんが・・・

 ただ一カ所、どうしても許せない記述箇所だけ指摘しておきたいです。

 しかし、よく考えてみるとこの政策は、子供を持たない家庭から、子供を持つ家庭への所得のトランスファー(移転)である。高所得者から低所得者への移転ならまだ理解できるが、子供のない家庭は一種のペナルティーを受け、子供の多い家庭は恩恵を受けるという仕組みだ。豊かで子供の多い家庭が多くの支給を受け、貧しくて子供のいない家庭が負担するという制度であるとすれば、一体どこまで支持されるだろうか。

 「豊かで子供の多い家庭が多くの支給を受け、貧しくて子供のいない家庭が負担するという制度」・・・

 ハア?

 子供が多い家庭は豊かで子供のいない家庭は貧しい家庭・・・

 何をトンチンカンな戯言(たわごと)をいうのか。

 一歩譲ってそのような格差があるとして、誰がそんな格差社会を招いたのか。

 あんたでしょ。

 ・・・

 親の所得によって学力差がつまり教育格差を招きつつあり、それが所得格差を世代にわたって固定化させていくことにつながりかねないこの国の現状を、竹中氏はどう考えているのか?

 教育現場で今日問題になっているこの親の所得格差は、セーフティネットもろくに用意せず新自由主義規制緩和・弱肉強食民営改革路線の招いた結果でもあるんじゃないですか。

 この人は弱者に無感覚すぎます。

 ・・・

 竹中平蔵氏に民主党の「子供手当」を批判する資格は全くありません。



(木走まさみず)