朝日新聞社よ、まず自ら『均等待遇原則の導入』を実践したまえ!〜格差固定化を「戦略的ビジネス」として確立している朝日新聞が何をほざく(怒)
10月30日付けの朝日社説は「派遣法審議 目指すべきは均等待遇」と題して、均等待遇原則の導入を強く主張しています。
(社説)派遣法審議 目指すべきは均等待遇
2014年10月30日05時00分
http://www.asahi.com/articles/DA3S11428800.html?ref=editorial_backnumber
社説は、「目指すべき方向ははっきりしている」とし、「同じ価値のある仕事をしている人には同じ待遇を義務づける「均等待遇原則」を導入すること」と主張しています。
しかし、目指すべき方向ははっきりしている。同じ価値のある仕事をしている人には同じ待遇を義務づける「均等待遇原則」を導入することだ。
この原則があれば、派遣会社に支払うマージンが必要な派遣労働は直接雇用よりも割高になり、コスト目的で派遣労働を使うことへの歯止めにもなる。
改正案のとりまとめ過程で均等待遇原則の導入が提案されたが、経営者側の反対で見送られた経緯がある。確かに、いきなり賃金の均等待遇を実現させるには、無理もあるだろう。しかし、交通費などの手当や福利厚生面で待遇に違いがある。まず、そんな扱いをやめて、原則の実現を目標にするべきだ。
社説は「派遣労働者の所得が向上する道筋をつけること。その責任が、この国会にはある」と、結ばれています。
改正案には、これまで一部の派遣会社に認められていた届け出制をやめ、全てを許可制にすることも盛り込まれた。条件を満たせば届け出だけですんだことが、不適切な業者がはびこる一因になっていたからだ。
改正案に盛り込まれた改善の流れを太くするためにも、派遣労働者の所得が向上する道筋をつけること。その責任が、この国会にはある。
・・・
この朝日新聞の社説は格差是正社会の実現を目指す一方法論として「一般論」としては正論だと思われます。
しかしながら、これほど偽善性に満ちた「一般論」もないものです。
新聞の社説などというものが、いかに美辞麗句を並べた「建前論」であり、机上の空論であるかを、この朝日新聞社説は見事に表出させているのであります。
私が知る限り、日本の一般企業で正規労働者と派遣労働者の賃金の待遇格差が大きいブラックな企業の中でも格差が平均で3倍を越えるであろう会社のひとつが朝日新聞社自身だからです。
ここに直近(平成26年3月末)の株式会社朝日新聞社 の有価証券報告書がネット上で公開されています。
株式会社朝日新聞社 の有価証券報告書
http://www.uforeader.com/v1/se/E00718_S10026WO_4_5.html##E0007
この資料の『5 【従業員の状況】』の『(2) 提出会社の状況』によれば、平成26年3月31日現在、朝日新聞社の従業員数(人)は4,172人、平均年齢(歳)は43.4歳、平均勤続年数(年)は19.4年、平均年間給与(円)は12,991,232円とあります。
朝日新聞社の正社員の平均年収は1300万円です、もちろんこれは年収が高い国内新聞社の中でもトップであります、ちなみに毎日新聞社で770万円、産業経済新聞社で741万円です。
さて朝日で働いている非正規の労働者数ですが、同じくこの資料では、690人とあり、資料の脚注には『(2. 顧問、嘱託(非常勤)、アルバイトなどの臨時従業員は〔 〕内に年間の平均人員を外数で記載している)』と補足説明がされています。
この人数は実際はかなり不正確です、派遣の形態でも「外注契約」で朝日で働いている下請け会社が用意している労働者はカウントされていません。
朝日新聞社の業務は、多くの派遣社員に支えられています、編集、校閲、制作/OA事務/営業事務/経理事務/総務・人事/ファイリング/IT関連/テレマーケティング/受付・案内/翻訳/Web編集/テクニカルサポート等、重要な仕事の多くを「外注」もしくは派遣社員が担当しているからこそ成立しているのであります。
ですから、おそらく実数はこの人数の倍近くは非正規で働いているでしょう(実数はさすがに不明ですが)。
さて、国税庁調査によれば、民間企業で働く人の去年の平均年収は414万円で、非正規労働者の平均年収は168万円とのことであります。
リンクは切れていますが9月26日付けNHKニュースから。
非正規労働者の年収は男女とも前年より減少、正社員との格差が拡大
サラリーマンなど民間企業で働く人の去年の平均年収は414万円で、3年ぶりに前の年を上回ったことが国税庁の調査で分かりました。
一方、非正規労働者に限ってみれば年収は下がっていて、正社員との格差が広がりました。国税庁が去年1年間を通して民間企業で働いた会社員やパート従業員などの給料を調査したところ、平均年収は前の年より6万円多いおよそ414万円でした。
平均年収が前の年を上回るのは3年ぶりです。
このうち役員を除く正社員は男性が527万円、女性が356万円、全体では473万円で前の年より5万円増えました。これに対して非正規雇用の労働者は男女とも年収が減りました。
男性が225万円、女性が143万円で、全体では前の年より2000円少なくなり168万円でした。
年収別でも、1000万円を超える人が前の年より14万人増えて
186万人、全体の4%となった一方、200万円以下の人は30万人増えて1120万人に上り、全体の24.1%を占めていて格差が広がった形です。http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140926/k10014903141000.html
さて正社員の平均年収1300万円の朝日新聞社で、非正規雇用者の平均年収はまさか168万円(国税庁調べ)という低水準ではないと思いますが、しかしここにも巧妙なカラクリがあります。
株式会社朝日新聞社 の有価証券報告書によれば、朝日新聞社は100%出資子会社として朝日新聞総合サービス株式会社(AGS)という人材派遣会社を有しています。
そのサイトにはこう謳われています。
戦略的ビジネスは有能な「人材確保」から
朝日新聞総合サービスは朝日新聞グループ唯一の人材派遣会社として朝日新聞社に即戦力となる有能な人材を派遣して参りました。その豊かな経験と実績を生かし、「人材」をお求めの企業のみなさまの「信頼できるパートナー」として、貴社の人材戦略の一端をお手伝いいたします。
「朝日新聞社に即戦力となる有能な人材を派遣して」いた経験を生かし「貴社の人材戦略の一端をお手伝いいたします」とあります。
つまり朝日新聞社に派遣されている派遣労働者は100%出資子会社AGSから派遣されているわけです。
正社員には業界トップの超高給を与え、一方低賃金の非正規は子会社AGSに管理させ、朝日社説「派遣法審議 目指すべきは均等待遇」で均等待遇原則の導入を主張しているわけですが、現実の朝日新聞社の経営実態は社説の「一般論」「建前論」と、真逆の格差固定化を「戦略的ビジネス」として確立しているわけです。
再度、朝日社説の結語。
改正案に盛り込まれた改善の流れを太くするためにも、派遣労働者の所得が向上する道筋をつけること。その責任が、この国会にはある。
「派遣労働者の所得が向上する道筋をつけること」その責任は国会にあるとしています。
先ず隗より始めよ
【読み】 まずかいよりはじめよ
【意味】 先ず隗より始めよとは、遠大な事業や計画を始めるときには、まずは手近なところから着手するのがいいというたとえ。また、物事は言い出した者から始めよというたとえ。
正論を吐くならば、『先ず隗より始めよ』です。
朝日新聞社よ、まず自ら『均等待遇原則の導入』を実践したまえ!
(木走まさみず)