マスメディア複合不況〜すべて彼らの自業自得だ
●朝日の大赤字を報道して大恥書いた産経の小赤字
少し古いですが22日付けの産経新聞から。
朝日新聞が初の赤字転落
2008.11.22 01:49大手新聞社の朝日新聞社が21日発表した平成20年9月中間連結決算によると、最終損益が前年同期の47億円の黒字から103億円の赤字に転落した。営業損益も74億円の黒字から5億円の赤字となった。朝日新聞社が中間決算で最終損失と営業損失を計上したのは、中間決算の公表を始めた12年9月以来初めて。
原材料である紙の価格が大幅に値上がりしていることに加え、広告収入、部数ともに減少したことが響き、営業損失を計上。またグループ会社のテレビ朝日株などを売却したことによる投資有価証券売却損として44億円を計上したことなどから103億円の最終損失となった。
売上高は前年同期比4・4%減の2698億円。減収は中間決算としては4期連続。
http://sankei.jp.msn.com/economy/business/081122/biz0811220149000-n1.htm
うむ、他紙が遠慮してかあるいは自分とこの中間決算も悲惨な目くそ鼻くそなので報道を自粛する中、産経だけは紙面でもネットでも大きく報道しております。
しかし「最終損益が前年同期の47億円の黒字から103億円の赤字に転落」とはこれは厳しい数字であります。
「原材料である紙の価格が大幅に値上がりしていることに加え、広告収入、部数ともに減少したことが響」いたそうですが、この中間決算は9月までの集計であり10月以降に始まったと思われる今回の不況の影響はまだ反映されていないことを考えると、来年3月の通期決算でも初の赤字転落という恐れも可能性としてはでてきましたね、実に厳しい状況であります。
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で、28日のフジサンケイ・ビジネスアイの記事から。
産経新聞中間決算を発表2008/11/28
産経新聞社が27日発表した2008年9月中間連結決算によると、最終損益は19億円の赤字(前年同期は1億円の黒字)となった。営業損益は4億円の赤字(前年同期は9億円の黒字)だった。売上高は808億円で、前年同期(978億円)から17.4%減少した。
一方、産経新聞社の08年9月中間単独決算は、原材料の新聞用紙の値上がりのほか、景気減退による広告収入の落ち込みなどが響いて13億円の経常赤字となったが、保有株式の売却で5億円の最終黒字を確保した。
http://www.business-i.jp/news/ind-page/news/200811280067a.nwc
えっと、朝日の赤字転落報道を真っ先にネットで記事化した産経新聞ですが、少々かっこが悪いことに一週間後に自らの経常赤字転落を報道しなければならない羽目に陥ったのであります、なぜか系列紙でありますが、正直でよろしいです。
まあ産経の場合、「保有株式の売却で5億円の最終黒字を確保」したとありますので最終赤は免れたようですが、これはもう身を切って数字だけ維持しただけでありますから、やはり10月以降の本格不況の影響が出るであろう来年3月の通年決算では、そうとうに厳しい数字になるかも知れません。
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ふう。
●興味深い週刊ダイアモンド今週号特集記事〜新聞・テレビ複合不況
こうなると、ただでさえ経営状態が悲惨な毎日新聞はどうなのよ、発行部数世界一の読売と利益率では優等生と呼ばれてる日経だって本当に大丈夫なのか、って感じで他紙の決算状況はどうなのよ、と当然の興味が沸いてきますですね。
で、タイムリーな記事を掲載しているのが今週号の週刊ダイアモンドであります。
週刊ダイアモンド12月5日号
特集 新聞・テレビ複合不況
http://dw.diamond.ne.jp/index.shtml
興味のある人は是非週刊ダイヤモンドを購入して読んでみてください。
お勧めであります。
この記事によれば、もう新聞もTVもダメダメのようですね。
朝日や産経だけでなく、毎日・読売・日経ももう総崩れの減収・減益のようであります。
特に倒産しそうな毎日にいたっては、もうだめだからと、メインバンクの三菱東京UFJに名古屋と北海道から新聞事業の撤退、「サンデー毎日」の廃刊、本社ビルの売却まで迫られてるそうです。
で、毎日側の北海道からの撤退ができない理由てのが「北海道の毎日の印刷工場では聖教新聞の印刷を下請け受託してるからできない」っていう悲しい理由なのであります。
ふう。
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で、読者もよくご存知のとおり日本のTV局は、ぜーんぶ新聞社との関連グループ企業でありまして、朝日新聞=TV朝日、読売新聞=日本TV、毎日新聞=TBS、産経新聞=フジTV、日経新聞=TV東京、てな関係でありますね。
で、各グループの売上と経常利益はこんな感じ。
売上 経常利益
朝日新聞 5729億 222億
TV朝日 2527億 120億
計 8256億 342億読売新聞 4790億 265億
日本TV 3421億 267億
計 8211億 532億毎日新聞 2926億 64億
TBS 3151億 230億
計 6077億 294億産経新聞 1996億 30億
フジTV 5754億 270億
計 7750億 300億日経新聞 3849億 423億
TV東京 1216億 28億
5065億 451億
※決算期は読売新聞が07年3月期、日経新聞が07年12月期、それ以外は08年3月期週刊ダイアモンド12月5日号 特集 新聞・テレビ複合不況 36ページ・37ページの図表より算出
で、今度はTV局の悲惨な状況をちょっと触れておきますと、2008年度の中間決算ですが、やはり全キー局が大幅な広告収入の減少による減収・減益に見舞われており、日本TVが37年ぶりの赤字転落、TV東京は初の赤字転落、その他もTBSが前年同期比で50.2%の利益減なのであります。
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ところで、上記表を見るとネットでは何かと論争しあう朝日と産経でありますが、経営規模と経営体力はやはり大きな差がありますですね。
それはともかく、各グループですが、売上的には朝日・読売・日経は明らかに新聞主導、フジ・TBSはTV主導であります。
特にフジ・サンケイグループでは、産経新聞社本体はもう「お荷物扱い」されているようです。
また、日経とTV東京の関係は逆に完全に新聞社主導の関係でありまして、日経にしてみればTV東京はやはり「お荷物」的存在となってしまっています。
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●マスメディア複合不況〜すべて彼らの自業自得だ
新聞もTVも総崩れ的減収・減益状態に突入しちゃった模様なのであります。
この不況で広告収入が対前年同期比で2〜3割(あるいはそれ以上)落ち込んだことが主因として挙げられましょう。
またインターネットなどの影響で、活字・TV離れが加速していることで、発行部数減も顕著なのでしょう。
しかしです。
今日の事態を招いた本質的原因は新聞・TVマスメディア側の旧態依然とした体質にあるのは自明であります。
長らく日本の大新聞は再販制度に守られ、宅配制度に固守し続け、競争原理のないぬるま湯に浸ってきました。
結果、販売店に「押し紙」という売れてもいないのに発行部数を水増しするためにだけ押し付けてきた「資源ゴミ」の問題ひとつとっても、自浄能力など皆無であります、今もってこの社会的大問題を積極的に取り上げる新聞は一社もないのです。
発行部数を水増しする行為は、広告主からすれば詐欺的行為でありますから実は「押し紙」これ本当に大問題なのであります。
最近では販売店側から訴えられる「押し紙」訴訟裁判も頻発してますが、もちろん大新聞に報道されることはありません。
あと法律と許認可免許で守られたTV局もまったくぬるま湯体質から抜け出せないでいます。
くだらない番組を垂れ流しながら、その制作はほとんど下請けプロダクション任せ、自分たちは中間搾取的企画屋に成り下がり、TBSにいたってはTBSハウジングなどの不動産収益のほうが本業より利益を上げてるという放送免許も泣く体たらくであります。
新聞記者もTV局スタッフもその異様に高い自身の平均年収は当然のことと考え、いやな部分は販売店や番組製作会社に低賃金で押し付けてきたのであります。
なんの経営努力もせずにです。
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今、最後の護送船団産業「マスメディア」が複合不況に陥りつつあります。
朝日も産経も日テレもみんな決算が真っ赤に燃え出しました。
でも私たちは同情する必要はありません。
すべては彼らの自業自得なのであります。
(木走まさみず)
<関連テキスト>
■[メディア]腐臭放つ日本新聞協会の対公取勝利宣言〜日本マスメディアが自ら醜い欺瞞を永遠に刻印した日
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■[メディア]読売社説の欺瞞〜タブー中のタブーを抱えながら詐欺師が何をほざいているのだ!
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