見苦しいサルコジ仏大統領の変節
●サルコジ大統領の「呪いの人形」、侮辱行為と認める パリ控訴院
1日付けAFP記事から。
サルコジ大統領の「呪いの人形」、侮辱行為と認める パリ控訴院
2008年12月01日 16:50 発信地:パリ/フランス【12月1日 AFP】ニコラ・サルコジ(Nicolas Sarkozy)仏大統領が自分の似顔絵が書かれた「呪いの人形セット」の販売差し止めを求めた上訴審で、パリ(Paris)の控訴院は11月28日、大統領の訴えを退ける一方、発売元に対して人形セットに「仏大統領に対する侮辱行為」と明記したラベルを添付して販売するよう命じた。
ブードゥー教の「呪いのサルコジ人形」として発売された、サルコジ大統領の似顔絵が描かれた人形と専用の針のセットについて、控訴院判事は「説明書に従って人形を付属の差し針で突き刺す行為は、サルコジ氏の尊厳を損なうもの」と認めたが、販売を差し止め要求については、「行き過ぎで適切でない」として退けた。
その代わり、発売元のティアー・プロッド(Tear Prod)に対し、人形セットの外箱に人形がサルコジ大統領の尊厳を傷つけるものであることを明記すること、肖像権侵害の慰謝料として大統領に1ユーロ(約120円)を支払うことを命じた。
人形セットの販売差し止め訴訟では、一審のパリ(Paris)地裁が10月末、「表現の自由およびユーモアの許容範囲内」として大統領の訴えを棄却、大統領が上訴していた。(c)AFP
http://www.afpbb.com/article/disaster-accidents-crime/crime/2544471/3567144
うーん、これをニコラ・サルコジ仏大統領の勝訴と言えるのか、はなはだ微妙ですな、ブードゥー教の「呪いのサルコジ人形」発売自体は、「人形セットの外箱に人形がサルコジ大統領の尊厳を傷つけるものであることを明記すること」を条件に認められてしまったし、控訴院が肖像権侵害の慰謝料として大統領に支払うことを命じた金額が、たった1ユーロ(約120円)ぽっちってのもね、何というか、極めてシンボリックな値ですよね、とりあえずちょっと払いなさい、と。
まあ、表現の自由を尊重するフランス法曹界の面目躍如の判決といったところでしょうか。
「呪いのサルコジ人形」が売られていること自体、この大統領がいかにフランス国民の一部から不評を買っているのかのわかりやすい例示ではあります。
・・・
●見苦しいサルコジ仏大統領の変節
私は個人的にはこのフランス大統領をあまり信用していません。
彼の3度の結婚歴とか過去の日本嫌い発言とか、いろいろありますが、そのような些末なことではなく今回の世界同時不況における一連の彼の優柔不断の政策のぶれがどうにも納得がいかないからです。
ご存じの通り、サルコジ氏は、シラク政権のイラク戦争反対により冷え込んだ対米関係の改善と、フランス伝統の平等主義を捨て自由競争を重視する英米型の新自由主義経済政策路線を提唱してフランス大統領になりました。
彼のモットーは「もっと働き、もっと稼ごう」です。
サルコジの政策は、米国と距離を置きフランス独自の外交政策を目指し国内経済に積極的に介入する保守派主流思想のド・ゴール主義とは一線を画してきました。
大統領就任時に地中海で豪華ヨット遊びをして顰蹙(ひんしゅく)を買った彼でありますが、あまりに親米の彼に対し、ロシア政府が大統領就任の祝意を示すのに48時間も遅らしたという嫌みをしたのも有名なエピソードであります。
親米派としても知られていた彼の掲げた政策の多くが、フランス版ネオリベ新自由主義経済解放政策であったわけですし、彼はフランス国内で今もその旗を降ろしてはいません。
・・・
ところが今回の不況が起こると親米・新自由主義者であるはずの彼は、見事にその主張を変えていきます。
9月26日付けのビジネスウィーク誌で、サルコジ氏は「新自由主義経済は完全に狂っていた」と宣います。
France: Laissez-Faire Capitalism is Over
President Nicolas Sarkozy declared the theory that the market "always knows best" is finished
記事の中で彼は吠えまくっています。
The idea of the all-powerful market that must not be constrained by any rules, by any political intervention, was mad. The idea that markets were always right was mad,
全能の市場はいかなる規則、いかなる政治的介入によっても制約されてはならない、というアイデアは狂っている。市場はいつも正しいというアイデアは狂っている」
いったい、あれほど市場開放政策推進を唱えてきたどの口がこんな偉そうなことを言えるのか呆れた話でありますが、それはともかく彼は米国追従親米路線も180度舵を切ってアメリカを見放します。
11月14日の記事から。
フランスのサルコジ大統領は13日、「ドルはもはや基軸通貨ではない」と述べ、14、15日にワシントンで開かれる緊急首脳会合(金融サミット)でこうした主張を展開する意向を明らかにした。
大統領は「第2次世界大戦終了時にはドルは確かに唯一の世界通貨だったが、今日もそうだとは言い難い」と主張。「20世紀につくられた制度をそのまま21世紀に持ち込むことはできない、というのがフランスの立場だ」と述べた。(共同)
[2008年11月14日18時44分]
http://www.nikkansports.com/general/news/f-gn-tp1-20081114-429527.html
「ドルはもはや基軸通貨ではない」
「20世紀につくられた制度をそのまま21世紀に持ち込むことはできない、というのがフランスの立場だ」
うーん、機を見て敏なるのは認めるものですが、サルコジ氏のこの変節はどうにも納得のいかないところがあります。
世界同時不況を招いたことの責をこの親米・親自由主義者は何も感じてないのでしょうか。
別にブッシュ大統領を擁護するわけではありませんが、サルコジ氏に比べれば、任期満了とはいえこの機に引退するブッシュさんのほうが潔く見えてしまうのは私だけでしょうか。
・・・
・・・
29日付け毎日新聞記事から。
NEWS25時:中国 エアバス納入延期通告
欧州航空機大手エアバス社(本社・仏南部トゥールーズ)は27日、中国への旅客機計150機の納入が中国側からの通告で延期されたと発表した。サルコジ仏大統領が12月6日に予定するチベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世との会談を理由に、中国は同1日に仏東部リヨンで温家宝首相が出席予定だった欧州連合(EU)中国サミットの延期を発表していた。納入延期の通告もこれに伴う措置としている。【パリ】
毎日新聞 2008年11月29日 東京朝刊
http://mainichi.jp/select/world/news/20081129ddm007030080000c.html
うーむ、なにやらサルコジ仏大統領がダライ・ラマ14世との会談を理由に、中国様のお怒りをかっておるようです。
欧州連合(EU)中国サミットの延期に、エアバス納入延期通告ですか。
あいかわらず中国はチベット問題ではまるで子供のような幼稚な外交をしますね。
まあ日本人一般としては、
って図式ですかね。
私から無責任に言わせればどっちもどっちなんでありますが。
その昔「ゴジラVSキングギドラビオランテ※1」で主人公の自衛隊員が「どっちが勝っても生き残ったほうが人類の敵になるだけだ」と名言をはきましたことを思い出します。
・・・
やれ、やれ。
(木走まさみず)
※1:コメント欄よりのご指摘で誤りを訂正しました。
怪獣ヲタ様、ご指摘感謝いたします。