木走日記

場末の時事評論

中国サンゴ密漁の件での”二つのチキンな沈黙”を憂う

 31日付け毎日新聞記事から。

サンゴ密漁:今度は伊豆諸島に「CHINA」の漁船

毎日新聞 2014年10月31日 21時52分(最終更新 10月31日 22時15分)

 小笠原諸島で4月ごろから確認されているサンゴ密漁目的とみられる中国漁船が、約500キロ北上し、伊豆諸島一帯で操業していることが本社機「希望」から確認された。海上保安庁によると一帯の中国漁船は30日現在164隻に上る。

 東京の南約600キロ、伊豆諸島の鳥島付近を本社機で飛行した。沖合2カ所の半径約1.5キロの海域内に、それぞれ50隻以上の不審船が所狭しと浮かんでいる。船体に「CHINA」の文字を掲げ、中国国旗をなびかせる船も。

 甲板に10人以上の漁師たちが並んでいる。各自が海中から青い網を引き上げている。本社機を見上げ笑顔を浮かべる漁師もおり、悪びれる様子は全くなかった。

 東京から1000キロ離れた小笠原近海では既に多数確認されており、日本近海の自然環境への深刻な打撃が懸念されている。【小川昌宏】

http://mainichi.jp/select/news/20141101k0000m040093000c.html

 中国漁船による日本領海における赤サンゴ密猟ですが、小笠原諸島で4月ごろから確認されているサンゴ密漁目的とみられる中国漁船が、約500キロ北上し、伊豆諸島一帯で164隻が操業しているとのことです。

 うむ、本件では中国にやりたい放題されているわけですが、当ブログとしては、本件における日本側の”二つの沈黙”について取り上げたいと思います。

 まずマスメディアですが、奇妙なことに本件をこれまで社説にて取り上げたのは、11月2日付けの読売社説一本に留まっております。

宝石サンゴ密漁 看過できない中国船の「無法」
2014年11月02日 01時21分
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/20141101-OYT1T50131.html?from=yartcl_blist

 うむ、普段ならこの手の事件なら全マスコミ上げて社説にて批判展開してもおかしくないわけですが、現時点では読売一紙のみであります。

 前回当ブログで検証しましたが、産経などは執拗に”小渕つぶし”報道を展開しているわけですが。

2014-11-03■興味深い産経新聞の”小渕つぶし”報道の突出した執拗さ〜何が産経をここまで執着させているのか。
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20141103

 産経をはじめマスメディアは本件に関しては事実報道は詳細に報じていますが、中国批判の論説は明らかに現時点では抑制を効かせている模様です。

 どうした産経、赤サンゴ密猟で、なぜ社説で中国批判しないのでしょう?

 もちろん明日以降、産経などでも本件で中国批判を社説で展開する可能性はありますが、現時点(4日16時30分)では、メディアは明らかに中国批判を抑制しているものと思われます、なぜでしょう。

 ・・・

 さて、メディアとともに本件で”沈黙”を守っているのが我らが安倍晋三首相であります。

 これだけ中国密漁船の大船団に領海を侵犯されまくり貴重な日本の海洋資源を取られまくっているのに、我らが安倍首相の口からは本件に関して中国を批判する声が一切聞かれません。

 なぜでしょうか。

 今回の中国のサンゴ密漁船団ですが、「日本の海上警備挑発」との指摘もあります。

中国のサンゴ密漁船団、日本の海上警備挑発か 専門家「単なる密漁と思えぬ」

200隻以上に膨れあがった小笠原・伊豆諸島沖での中国のサンゴ密漁船団について、専門家からは
「単なる密漁目的ではなく、日本の海上警備態勢への挑発ではないか」といった見方が浮上している。

小笠原諸島沖で今秋増加した中国漁船によるサンゴ密漁は、中国近海での採取禁止や沖縄周辺での海上保安庁の警備強化が背景にあるとみられる。
海保の佐藤雄二長官は
「一獲千金を狙った違法な操業だ」と述べ、中国公船の航行が常態化している尖閣諸島沖縄県石垣市)周辺海域での海洋権益拡大に向けた動きとは別との認識を示す。

ただ、小笠原諸島沖では約30年前にも台湾漁船によるサンゴの密漁が横行した時期もあったが、古参のサンゴ販売業者は
「今回は船団が異常に多い。
取り合いになって行き帰りの燃料代が回収できないリスクもあるのに…」と船団の急増に首をかしげる

東海大山田吉彦教授(海洋政策)も
「数十隻ならまだしも、200隻以上に増えれば単なる密漁目的とは考えにくい」と指摘。中国漁船が領海に侵入し、島から見える距離まで大胆に近づいている状況などから
「日本の海上警備態勢への挑発の意味合いもあるのでは。現状を国際世論に訴え、中国側にサンゴ密漁をやめさせるよう圧力をかけるべきだ」と話している。

漁業関係者の間では、小笠原諸島沖で中国漁船が領海侵入を繰り返すことで、尖閣諸島の領海警備態勢に揺さぶりをかける狙いを指摘する向きもある。

http://news.infoseek.co.jp/article/sankein_sk220141103036

 中国船により、日本の領海が審判され資源が違法に収奪されていることが繰り返されており、その規模から「日本の海上警備態勢への挑発の意味合いもある」(東海大山田吉彦教授)との専門家の指摘もあるのですが、安倍晋三首相からは本件に関して中国批判はありません、事実上事態は「放置」されている状態です。

 ・・・

 確証はありませんが、一つの見方として、10、11の両日に北京で開くアジア太平洋経済協力会議APEC)首脳会議で、、安倍首相は中国との首脳会談を目論んでいるために、いまここで中国政府とことを荒立てることをしたくない、だから沈黙を守っている、そして仲良しクラブ・日本記者クラブの会員メディアはそんな政権内部の裏事情を敏感に感じ取って、赤サンゴ密猟の件で中国批判の論説を抑制している、というものがあります。

 当ブログとして上記の見方と同じ立場です、おそらく日中首脳会談の実現を睨んでの政略的沈黙なのでしょう、しかしです、この状況における”沈黙”は国際社会に単に日本は臆病(チキン)であると誤ったシグナルを送りかねません。
 特に中国には間違ったシグナルは送ってはなりません、日本は断固、現状を国際世論に訴え、中国側にサンゴ密漁をやめさせるよう圧力をかけるべきです。


 中国サンゴ密漁の件でなぜか沈黙を守るマスメディアと安倍首相、この”二つのチキンな沈黙”を憂います。


(木走まさみず)