木走日記

場末の時事評論

ダメ議員は容赦なく落とそう、今度の衆議院選挙は修羅場と化すべき!

●今改めて問われる小泉構造改革路線の是非

 今改めて問われているのは、小泉政権の5年間における郵政民営化に代表されるいわゆる構造改革路線の是非であります。

 『経済の活動は民間企業や個人に任せて、政府による介入はできるだけしないことが、結果的に一番好ましい資源配分を実現することになる』、ここ30年間、日本経済を議論するときには、民営化、あるいは規制緩和が常に議題に上ってきました、

 これは日本だけではなく、海外でも同じ動きがあり、アメリカのレーガン大統領、イギリスのサッチャー首相などは、民営化や規制緩和を大胆に進めることで、経済において大きな構造変化を成し遂げたと言われています。

 そしてアメリカの2期8年に渡るブッシュ政権や5年に渡る日本の小泉政権においても、経済のグローバル化新自由主義ネオリベラリズムという新しい冠をつけてこの政策は推し進められてきました。

 しかるにアメリカにおいて行きすぎた規制緩和・政府不介入の象徴ともいえる低所得者向けの住宅ローンの乱発、いわゆるサブプライムローン問題が発生してしまいました。

 不動産価格の将来の上昇を織り込んだ事実上所得審査無規制の所得以上の返済プランを乱発するこのサブプライム不動産ローンは、悪性のガンのように、アメリカにおいて住宅バブルを生み、その複雑怪奇な金融工学的からくりに覆われて世界中の金融市場に転移していきました。

 最新の金融テクノロジーをもって化粧をし、いかに見た目を整えていても、不動産価格が上昇局面にあり続けることが前提のこのリスク無視の悪性ローンがやがてそのバブルが崩壊し破綻することは一部こころある有識者から警告が発せられていたにもかかわらず、アメリカ当局は無介入、市場原理にゆだねる無責任な放置プレイを続けてきたのであります。

 結果は最悪の展開となりました、ご承知の通り昨年9月以来のこのたびの世界同時不況により、世界の株価は半年の間で40%以上も消失し、アメリカGMを筆頭に名だたる企業が経営破綻、各国は自国の代表的企業を守るために保護主義的政策を採らざるを得ず、新自由主義的市場重視政策は豪快にしかしあっけなく転覆してしまいました。

 結果、アメリカでは大きな政府を目指すオバマ大統領が誕生し、世界的にはこのいきすぎた新自由主義的市場開放策への反省から、秩序ある市場規制とむき出しの自由競争によって必然的に拡大した社会的格差の是正の方向に、大きく政策の流れは変換がなされ始めています。

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●自民・公明・民主支持の現職が若い無党派候補に破れるとというシンボリックな事象

 しかるにこの日本においては、4年前の小泉郵政民営化選挙において、当時の熱情(パッショ)的支持を勝ち得た自民党が300議席という圧勝劇で国民から付託を受けて以来、不幸にもこの4年間で小泉、安倍、福田、麻生と、民意を反映しないままの自民党内政権たらい回しが続き、郵政民営化に代表される小泉構造改革路線の是非が問われぬままに、こたびの世界同時不況を招き、今持って鳩山総務相更迭のドタバタ劇にみられるように与党内部でも、構造改革路線の総括ができておらず、民意を示すことができぬ国民のフラストレーションは極限まで高まっており、これは麻生政権の支持率低下という世論動向に表出しているのであります。

 この国民に蔓延する政治不信は世論調査の結果から「政権交代」を掲げる民主党への追い風となっていますが、民主党が勘違いしてはいけないのはこれは同党への積極的支持ではまったくなく自民党への批判の受け皿が事実上同党しかないという単純な事実からの消極的支持であることは、先の小泉元首相のお膝元、横須賀市市長選挙において、小泉元首相が4回もの応援演説を行ったにもかかわらず自民・公明・民主支持の現職が若い無党派候補に破れるとというシンボリックな事象をみれば明らかです。

 30日付け毎日新聞記事から。

選挙:横須賀市長選 33歳・吉田氏当選 「地元の問題」か既成政党不信か /神奈川

 ◇県内政界に波紋
 現職市長では全国3番目に若い33歳の前市議、吉田雄人氏が初当選した横須賀市長選の結果が県内政界に波紋を投げかけている。選挙戦の現場にいた市議が「今までのやり方ではダメなのかな」と振り返る一方で、各党県連幹部の多くは「地元の問題」と切って捨てる。だが自民・民主・公明が相乗りし、小泉純一郎元首相の応援も仰いだ現職の落選は、有権者の既成政党不信にも映る。強固な保守地盤で起きた「変化の波」は、次期衆院選で県内全域に広がるのか。【吉田勝、木村健二、笈田直樹、山衛守剛】

 ◇「チェンジ」 無党派層へ浸透
 「小泉さんにしろ、民主党にしろ、国の政党が横須賀を変えるのではない」

 支持者の喜びの声がこだまする28日夜の選挙事務所で、吉田氏は言い切った。

 駅立ち、組織選挙の否定、細かなマニフェスト……。選挙戦では分かりやすさを徹底する手法を取った。オバマ米大統領ばりに「チェンジ」を標ぼうし、改革を期待する無党派層へ浸透したのが勝因と言えそうだ。現職最年少の千葉市長の誕生など「30代首長」の時流の風にも乗った。

 強固な保守地盤と言われる横須賀市。市議のほとんどを味方につけ、自民・民主・公明が相乗りし、前回に続き小泉元首相も応援した現職の蒲谷亮一氏(64)の陣営は、既成政党の論理では盤石の体制とも言えた。だが得票数は自民分裂だった前回より約400票減った。応援した市議は「今までのやり方ではダメなのかな。時代が違うのかと思った」とこぼす。

 小泉元首相の神通力低下もささやかれる。吉田氏を応援した市議は「落ちているのは確かだろう。有権者がやっと少し目覚めてくれたのかなと思う」と話した。

 一方、同市選出県議の自民県連の竹内英明幹事長は「自民党民主党公明党も乗っており、国政選挙の構図になっていない。地元の問題だ」と強調。公明県本部の仁田昌寿幹事長も「若い人に変えてほしいという市民の気持ちが強く表れた。国政につながるものではない」と語った。
 民主県連の花上喜代志幹事長は「市民の期待が若い吉田さんに集まり変化を求めた結果」と総括。「国政のチェンジ、政権交代に向かっていきたい」と引き寄せた。共産党県委員会の本荘洋彦書記長は相乗り現職の敗北を「意味が大きい。自公政治の下で痛めつけられた市民が変革を求めた」と位置付けた。

http://mainichi.jp/area/kanagawa/news/20090630ddlk14010389000c.html

 この選挙結果は、厚い保守地盤を誇るそして小泉元首相の地元である横須賀市において民主党も含めた既存政党推薦候補者が敗北するということは、いかに国民が自民党をそして小泉構造改革路線を否定的に評価し始めたか、そして国民は自民批判の熱き思いとは裏腹に、民主党など別に何も積極的に評価などしてないことが、極めて端的に表出したものであります。

 一地方選挙の結果でもって日本全体の議論に広める愚は避けなければなりませんが、他ならぬ小泉氏の地元で起こったこの自民・民主相乗り現職候補の無名若手候補に敗北したことは、単に「自民党民主党公明党も乗っており、国政選挙の構図になっていない。地元の問題だ」(自民県連幹事長)と割り切ることはできますまい。

 おそらく有権者反自民の思いはもはや熱情(パッショ)に近いものがあり、それは元首相の地元ですら地殻変動のごとき鈍い音を立てつつ既存政治勢力への批判票となり、いかに同一候補を民主党が支持してもそれは有権者の眼中になく、容赦なく落選させたのです。

 民主党が上滑って浮かれる状態ではまったくないのだと思われます。

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●民意を示すことができぬ国民のフラストレーションは極限まで高まっている

 新自由主義主観に基づく民営化や規制緩和の行き着く果てとして今日の世界同時不況がもたらされたとすれば、私たちは大きく潮目が変化したことに無自覚でいることはできません。

 小泉構造改革がもたらしたものは、郵政民営化だけでなく道路公団民営化、金融改革、老人医療保険の見直しを含む医療・介護改革、三位一体の地方行政改革労働市場の自由化の旗の元で断行された労働法改革、実に多岐に渡っております。

 これらの小泉構造改革がこの国に何をもたらしたのか、不況の中、国民はようやく気づき始めたということでしょうか。

 大量の非正規労働者の出現、それに伴う大量解雇の問題や若年層を中心にした収入格差拡大の問題、医療改革の結果もたらされた医療現場での混乱、小泉元首相により意図的に選挙の主題に祭り上げられた郵政民営化は実はそれら諸改革の一つにすぎません。

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 それにしてもマグマがふきだまったようなエネルギーを感じます。

 世界の潮目が変わり大きなうねりの中で各国政府の経済政策がまさに厳しく注目させられている今、民意を示すことができぬ国民のフラストレーションは極限まで高まっており、もはや限界に近いでしょう。

 来る総選挙は麻生首相がいかに最善の時期を選ぼうとしても、もはや民意は容赦なく爆発することでしょう。

 そして有権者の怒りの前で自民党に比し相対的に支持率が上向いている民主党にとっても、一歩間違えば有権者の怒りの対象となることをこの横須賀市長選挙は示しているのであります。

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●ダメ議員は容赦なく落とされる、今度の衆議院選挙は修羅場と化すべき

 1日付け朝日新聞電子版速報記事から。

匿名献金が突出 鳩山代表、5年で2億3千万円

2009年7月1日5時3分
 民主党鳩山由紀夫代表の政治資金管理団体友愛政経懇話会」の政治資金収支報告書で、5万円以下などの条件を満たす匿名の個人献金の総額が、03〜07年の5年間で計2億3千万円に上り、国会議員のなかで突出して多いことがわかった。

 匿名の個人献金の処理についても、「故人献金」で今回問題になった公設秘書が担当したという。謝罪会見で記者が「5万円以下の匿名献金も一定額ある」と指摘すると、調査にあたった弁護士は「その部分は終わっていない。調査を続ける」と説明した。

 政治資金規正法は、政治家の活動資金に透明性を持たせる観点から、献金者の氏名と献金額を収支報告書に記載することを義務づけている。ただし年間5万円以下、税の控除を受けないなどの条件を満たす小口の個人献金者は氏名や住所を記す必要がなく、「その他献金」として合計のみを記載すればよいとしている。

 修正前の03〜07年の収支報告書によると、鳩山氏が集める個人献金は年間約5千万〜1億1千万円で、与野党の代表クラスの政治家の資金管理団体と比較しても抜きんでている。ここ5代の自民、民主党の総裁、代表経験者と比較しても(表参照)、総額で突出している。

 さらに、鳩山氏の個人献金のうち、匿名の小口献金である「その他献金」は03年が約8千万円、04年約4600万円、05年約4千万円、06年約3700万円、07年約2800万円となっている。年平均で約4600万円は、他の総裁、代表経験者の平均約140万円を大きく上回る。03年は少なくとも1500人以上の匿名者からの小口献金があったことになる。

 「その他献金」の扱いは法にのっとった処理であり、それ自体に問題はないが、今回の「故人献金」のように実際に献金したかどうか、第三者が直接確認することはできない。

 鳩山氏は企業団体献金を禁止して個人献金を推進する立場。税額控除を強化するよう主張もしている。自らの場合は、税額控除の対象とならない匿名献金が多いという矛盾を抱えた格好だ。

http://www.asahi.com/politics/update/0701/TKY200906300349.html?ref=reca

 匿名献金が5年で2億3千万円とは、民主党鳩山由紀夫代表がこれほど庶民に人気がありその浄財を集めているとは知りませんでした、というかこの突出の仕方はあり得ないでしょう。

  
 この政治とカネの問題ですがいい加減にしていただきたい、多くの国民は自民党にしろ民主党にしろ既存政党に対して、もはや、この点でもやさしい温情などはひとかけらもないでしょう、あるのは怒りだけです。

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 こうなれば自民も民主もない。

 ダメ議員は容赦なく落としましょう、今度の衆議院選挙は修羅場と化すべきです。

 だめな政治家に鉄槌を下しましょう。



(木走まさみず)