木走日記

場末の時事評論

国民不在の蟲のような寿命の政権はもう勘弁してほしい〜新政権は自民でも民主でもいいから長期本格政権を目指すべき

●吼える毎日社説〜「こういう首相がわが国のトップリーダーであったことを恥ずかしく思う」

 今日(13日)の主要紙は一斉に社説を一本に絞っての安倍首相辞任表明を取り上げています。

【朝日社説】安倍首相辞任―あきれた政権放り出し 解散で政権選択を問え
http://www.asahi.com/paper/editorial.html#syasetu1
【読売社説】安倍首相退陣 安定した政治体制を構築せよ
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20070912ig90.htm
【毎日社説】安倍首相辞任 国民不在の政権放り投げだ
http://www.mainichi-msn.co.jp/eye/shasetsu/news/20070913k0000m070143000c.html
【産経社説】首相辞任表明 国際公約果たす態勢を
http://www.sankei.co.jp/ronsetsu/shucho/070913/shc070913000.htm
【日経社説】突然の首相退陣、政局混迷を憂慮する(9/13)
http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/index20070912AS1K1200112092007.html

 案の定というか昨日のエントリーで予想したとおり朝日は「解散で政権選択を問え」と主張していますが、まあタイトルだけでも各紙が何が言いたいのかおおよそわかっちゃう(苦笑)のではありますが、メディア・ヲッチャー木走としては一応内容をまとめておきたいと思います。

 各紙社説をざっと斜め読みしたところ共通のキーワードのひとつはどうやら「無責任」であります。

【朝日社説】
国の最高指導者として考えられない無責任さだ。
【読売社説】
「無責任」と言われても仕方ないタイミングである。
【毎日社説】
これは政権の放り投げであり、全く無責任な態度としか言いようがない。
【産経社説】
 国民や与党にも「無責任極まりない」との声が強いが、政治空白を生じさせることは許されない。
【日経社説】
突然の退陣表明は無責任な政権投げ出しと言われても仕方ない。

 うーん、タイミングとして「無責任」なのはそのとおりなのでしょうが、特に毎日の首相批判はすざまじいものがありますな。

それなのに、代表質問を直前にしての辞任表明だ。国会軽視もはなはだしい。これは政権の放り投げであり、全く無責任な態度としか言いようがない。こういう首相がわが国のトップリーダーであったことを恥ずかしく思う。

 ・・・

これでは国際的にも、日本の首相は信用できないということにならないか。

 ・・・

 辞任の理由として「テロとの戦い」に言及したのは苦しい逃げ口上であり、政権運営での行き詰まりを感じ、責任を放棄したと見られても仕方がないだろう。

 「こういう首相がわが国のトップリーダーであったことを恥ずかしく思う。」

 「日本の首相は信用できないということにならないか。」

 「「テロとの戦い」に言及したのは苦しい逃げ口上」

 ・・・

 うーん、朝日より手厳しいなあ(苦笑

 まあ、めったに政権批判をしない【産経社説】ですら、「政策的行き詰まりと首相職の重圧に耐えかね、政権を放り出した」とか「国民の政治不信を増幅しかねない首相の行動」とか珍しくあからさまに安倍批判しているのであります。

 ・・・


●解散・総選挙で大連立はどうよというよくばり(苦笑)な主張の日経社説

 で、この突然の「無責任」な退陣表明を受けてどうせよと各紙は主張を展開しているかと言うと、

 朝日・毎日は解散・総選挙を訴えています。

【朝日社説】
 次の総裁、新首相は有権者の支持を得られなかった安倍首相の後継だ。新たな政権は自らを「選挙管理内閣」と位置づけ、可能な限り速やかに衆院を解散し、総選挙をする必要がある。

 今回の政権放り出しは、民主党を第1党にした参院選がもたらした結果でもある。自民党政権がこれだけ混迷してしまった以上、総選挙で有権者にきちんと政権選択を問うべきだ。国民の信頼に基づく政治を取り戻すにはそれしかない。

【毎日社説】
 これで政権担当能力があるのかとさえ疑わせる事態を招いた責任は、安倍首相のみならず自民党にもある。もはや衆院の解散・総選挙で混乱を収拾するしかない。民主党に政権をいったん渡し、その選挙管理内閣のもとで解散をしてもいいほどの体たらくだ。

 しかし、【毎日社説】ですがいつになく鼻息が荒いですな、「民主党に政権をいったん渡し、その選挙管理内閣のもとで解散をしてもいい」って、そんなご無体なあ(苦笑。

 一方読売は自民・民主の大連立を主張してます。

 次期衆院選に向け、小沢代表は、先の参院選民主党の公約に掲げた政策の実現に全力を挙げると言う。それには、法案化し、与党が圧倒的多数を占める衆院でも可決しなければ成立しない。

 安倍後継政権としては、給油活動継続は無論、年金などの社会保障制度の改革、財政再建、消費税率引き上げ問題を含む税制改革など、国の存立や国民生活の基本にかかわる重要政策に取り組まなければならない。

 そのためには、政策の内容には当面、違いがあるとしても、与野党の利害を超えて衆参ねじれの状況を克服し、必要な政策の実現のために、大連立も視野に入れるべきではないか。

 産経の論説はちょっと苦しいですね、解散総選挙にも大連立にも反対なのはよくわかりますが、「政権運営への不安を払拭(ふっしょく)すること」が急務であると他紙に比べて弱い論説で社説を結んでいます。

 自民党参院選大敗のショックを今もひきずっているのは明白であり、そのなかで首相の辞任劇も生じた。

 安倍政権の中枢にいた麻生太郎幹事長や与謝野馨官房長官は、次期政権でも主要な地位を占める可能性が高いとみられる人物である。その両氏は、首相の辞意について事前にその兆候をつかんでいたことを説明している。

 国民の政治不信を増幅しかねない首相の行動を、止められなかったのだろうか。危機管理面の問題を残したともいえる。政権運営への不安を払拭(ふっしょく)することも急務である。

 麻生太郎幹事長や与謝野馨官房長官に「首相の行動を、止められなかったのだろうか」と嘆いていますがちょっと筋違いじゃないかな(苦笑)。

 最後に日経ですが、ことここに至っては解散・総選挙しかあるまいとしております。

 政局の混迷を根本的に打開する方法は早期に衆院を解散し、総選挙で示された民意に基づいて新しい安定した政治体制を構築することが望ましいとわたしたちは考える。日本経済は着実に回復軌道を歩んでいるが、政局の混迷の長期化は企業経営者や投資家、消費者の心理に悪い影響を及ぼしかねない。

 「政局の混迷の長期化は企業経営者や投資家、消費者の心理に悪い影響を及ぼしかねない」とは日経らしい(苦笑)危惧であります。

 で、日経社説でよくわからないのは、新しい選挙結果が出たら大連立もいいかもと社説を結んでいるところです。

 次期衆院選では与野党が税財政改革や年金改革から逃げることなく、堂々と国民の前で政策を競い合い、選挙後はその実行のためにどうすればよいかを真剣に考えてもらいたい。場合によっては政策実行のための大連立という選択肢もありうるのではないか。

 なんだかなあ、「日本経済」が順調だったら何でもありなのかよ、日経は(苦笑

 ・・・

 で、まとめますと、解散・総選挙を強く主張するのが朝日・毎日の2紙、この際大連立も有りが読売1紙、「自民党参院選大敗のショックを今もひきずっている」とお嘆き(苦笑)なのが産経1紙、日本経済のために解散・総選挙で大連立はどうよというよくばり(苦笑)な主張が日経1紙でありました。



●国民不在の蟲のような寿命の政権が繰り返されることだけはもう止めていただきたい

 突然の安倍首相辞任表明でありますが海外でも大きく取り上げられているようですが、お隣の韓国の朝鮮日報の本日(13日)付け記事から。

記事入力 : 2007/09/13 08:20:38
安倍首相辞任:カネ・私生活スキャンダルが出る前に決断か

 「戦後レジームからの脱却」を訴えて華麗にスタートした安倍晋三内閣が参議院選惨敗の影響を克服できず、結局退陣した。

 日本では年号が平成となった1989年以来、女性スキャンダルで退陣した宇野元首相、就任後2カ月で連立政権崩壊により退陣した羽田元首相、5年5カ月の長期にわたって首相の座にあった小泉元首相など、計12人の首相が登場した。任期の平均は1年2カ月。安倍氏の在任期間は平均にも満たなかった。

◆突然の辞任、政界に衝撃 

 辞任の知らせは午後1時ごろ。前日国会で所信表明演説を行った後、代表質疑の答弁を前に突然辞任を表明した。政界は大きな衝撃に見舞われた。野党は一斉に安倍首相の無責任さを攻撃し、自民党内でさえも「退陣するなら参議院選直後にすべきだった」との批判が相次いだ。

 安倍首相は会見で、民主党小沢一郎代表との党首会談が実現する見込みがなくなったことが決意の背景にあるかのように示唆したが、官房長官は「健康上の問題」と説明した。しかし、参議院選挙で歴史的敗北を喫しても首相の座から離れようとせず、内閣改造まで断行した事実を考慮すると説得力がない。そのためさまざまな憶測が飛び交っている。

◆Dランクの首相として記録される 

  実際に、臨時国会開会を前に安倍氏本人に対するカネと私生活スキャンダルが表面化する動きがあった。ある週刊誌が安倍首相の相続税3億円脱税疑惑と、隠し子の問題を執拗(しつよう)に追跡し、今週末ごろには暴露するといううわさが流れていた。安倍氏と昭江夫人との間には子どもがいない。

 安倍氏の辞任表明会見を見守っていたある政治評論家はテレビで、「歴代最悪の首相とされた宇野元首相に並ぶDランクの首相として記録に残るだろう」と強く非難した。

 就任直後、一時70%の支持率を示した安倍氏は何を誤ったのだろうか。自らの支持層である保守派を意識し、憲法改正愛国心教育、防衛力増強などには力を注いだが、一般の日本人が関心を持つ問題は度外視した。安倍首相就任直後の危機感を持った左派・リベラル派による攻勢も大きかった。

◆不運と無能

 安倍氏には運もなかった。参議院選惨敗の決定的な原因となった「消えた年金記録」問題は、歴代の内閣で積み重なってきた問題が安倍内閣で爆発したものだ。また、政治資金問題も過去のような違法献金が問題となったわけではない。「虚偽の領収証」「事務所経費」など、報告の仕方が問題となったのだ。

 安倍首相には運もなかったが、危機管理や統率のレベルも問題だったとの評価もある。内閣スタート直後からのさまざまなスキャンダルで辞任した7人の閣僚は、安倍氏本人がかばい続けたにもかかわらず、世論に押し切られて辞任まで追い込まれたのがほとんどだ。反対派は「安倍はタカ派なので指導力を発揮するのではと期待したが、結局はお坊ちゃまだった」と酷評した。政界では、安倍首相は後任への道筋をつけた上で名誉の退陣をすることを狙ったが、それどころか政治的再起も難しくなったとの評価が支配的だ。

安倍内閣の動き 

−2006年9月26日 首相就任

− 〃 10月8日‐9日 中国と韓国を相次いで訪問。首脳会談を行う。

−12月15日 愛国心を高める教育基本法防衛省昇格法通過

−2007年3月1日 「日本軍慰安婦が強制動員されたという証拠はない」発言

− 〃 4月27日 就任後初の米国訪問

− 〃 5月14日 国民投票法が国会を通過

− 〃 7月3日 久間防衛相「原爆しょうがない」発言

− 〃 7月29日 参議院選挙で大敗

− 〃 8月27日 第2次安倍内閣スタート

− 〃 9月12日 電撃的な辞任表明

東京=鄭権鉉(チョン・グォンヒョン)特派員
朝鮮日報朝鮮日報JNS
http://www.chosunonline.com/article/20070913000010

 興味深い内容の記事なのでありますが、いやしかし、「歴代最悪の首相とされた宇野元首相に並ぶDランクの首相として記録に残るだろう」っていったいどの政治評論家が言ったのか知りませんが、よその国のメディアで書かれるとなんか複雑ですね。

 それはともかく記事中で私が気になったのはこの記述。

 日本では年号が平成となった1989年以来、女性スキャンダルで退陣した宇野元首相、就任後2カ月で連立政権崩壊により退陣した羽田元首相、5年5カ月の長期にわたって首相の座にあった小泉元首相など、計12人の首相が登場した。任期の平均は1年2カ月。安倍氏の在任期間は平均にも満たなかった。

 平成になってから計12人の首相ですよ、任期の平均は1年2カ月なのであります。

 もうね、主要国でこんな短命内閣を繰り返している国は日本以外は、ないのであります。

 私は別に安倍さんをひいきにしていたわけでもなんでもなく国際的に日本の信用と発言力を高めるためには、自民であれ民主であれ安定した長期政権が不可欠であるとかねがね主張してきました。

■[政治]28人の戦後歴代首相の在任期間と辞任理由を徹底検証
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20070724
■[政治]お下品な朝日の世論調査からこの国の政権交代サイクルは異常に速すぎる事実を憂いてみるの巻
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20070801/1185935231
■[政治]2年半に10人も農相をコロコロコロコロ替えるステキな国家ニッポン
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20070903

 以前のエントリーから抜粋。

(前略)

 私の持論ですが、これからの日本国総理大臣は最低でも4年は任期を全うすべきであると強く思っております。

 諸外国と比し、平均寿命が2.14年という日本の政権の短命ぶりが突出しており、これでは国際政治において発言権を確立することなどできないのであります。

 国内政策においても、2年で降板してちゃ、中期的な政策課題をこなすことなんかまず無理ですし、熟達した成熟した政治手腕を発揮する時間などないのであります。

 私は日本の政治における悪しき官僚支配の原因のひとつには間違いなく、このコロコロかわるハムスター並の政権の短命に一因があると思っています。

 首相が平均2年の短命なら、今回もそうですがその間に何回も内閣改造などしちゃってますから、各大臣なんか恐らく平均1年とかの寿命なんではないでしょうか。

 日本の大臣よ、お前は虫か(爆

 ・・・(汗

 失礼しました。

 過去の自民党政権の大臣乱発ぶりはほんとうに情けないのであります、これは全く国益に反しています。

 日本国のために総理大臣は簡単には辞任すべきではないと主張しているのであります。

 別に安倍政権だから擁護しているわけではなく、たとえ民主党政権が誕生しても私は同じことを主張することでしょう。

 (後略)
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20070801/1185935231

 そろそろ日本も本格的な政治改革をしたほうがいいと思います。

 これからの日本国総理大臣は最低でも4年は任期を全うすべきであると強く思っております。

 安倍政権が1年持たず情けなくも辞任した以上、私もここに至っては準備可能になりしだい解散・総選挙を実施し民意を問うことに賛成です。

 そうした結果、民主党政権が誕生したとしても自民党政権が継続されたとしても、ここは長期本格政権を目指すべきです。

 国民不在の蟲のような寿命の政権が繰り返されることだけはもう止めていただきたいのです。



(木走まさみず)



<関連テキスト>
■[政治]28人の戦後歴代首相の在任期間と辞任理由を徹底検証
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20070724
■[政治]お下品な朝日の世論調査からこの国の政権交代サイクルは異常に速すぎる事実を憂いてみるの巻
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20070801/1185935231
■[政治]2年半に10人も農相をコロコロコロコロ替えるステキな国家ニッポン
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20070903