木走日記

場末の時事評論

このタイミングで小沢氏を援護射撃し始めた読売新聞

 26日付け読売新聞紙面トップ記事から。

二階氏側に西松建設が事務所提供、家賃分を献金…地検捜査

 準大手ゼネコン「西松建設」側が二階俊博経済産業相の関連政治団体に対し、大阪市内のマンションの一室を事務所として提供する一方、その家賃分を補填(ほてん)する目的で、二階経産相が代表を務める政党支部に個人献金を偽装して年間300万円を送金していたことが、関係者の話で分かった。


 西松側の二階経産相側に対する事実上の事務所の無償提供の疑いがある。こうした状況は政治資金収支報告書に反映されておらず、同様の事実を把握している東京地検特捜部は、政治資金規正法違反の疑いがあるとみて調べている。

 この関連政治団体は、関西新風会。複数の関係者によると、二階経産相実弟が実質的に運営している。

 西松建設関係者によると、同社は1999年ごろ、二階経産相実弟から事務所提供の依頼を受け、関係設計会社(東京・港区)に指示して、大阪市内の新築マンションの一室を購入させた。その後、関係設計会社と関西新風会が年間約280万円でこの部屋を賃貸する契約を結び、先月まで関西新風会が使用していた。

 一方、西松建設は家賃分を補填するため、二階経産相が代表を務める政党支部に個人献金の形で資金提供することにした。少なくとも2006年以降、同社は自民党和歌山県第3選挙区支部の口座に、社員や家族の名義で毎年300万円を銀行のATM(現金自動預け払い機)から振り込んでいた。計60人の社員らが無断で名前を使われ、振り込み手続きは同社の総務部幹部らが行っていた。

 06、07年の政治資金収支報告書によると、同支部から政治団体二階俊博新風会」(和歌山県御坊市)に毎年、1600万〜2400万円の寄付があり、二階俊博新風会から関西新風会にも約740万〜約980万円の寄付があった。同支部への300万円はこの寄付に含まれる形で、関西新風会に流れたとみられる。

 関西新風会が西松建設に事務所を無償で提供されていると、政治資金規正法で禁じる企業からの寄付を受けたことになる。また、同支部西松建設から送金された300万円を、収支報告書の個人献金の欄に記入しており、同法が禁じる他人名義の献金の受領や、収支報告書の虚偽記入にあたる可能性がある。

 これらの問題について、二階経産相の事務所は読売新聞に、「各政治団体の政治資金については法に従って収支報告書に適正に記載している」としている。

(2009年3月26日03時10分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090326-OYT1T00021.htm?from=any

 二階経産相が代表を務める政党支部に「西松建設」側が個人献金を偽装して年間300万円を送金していたことが、「関係者の話で分かった」という読売スクープ記事であります。

 この記事を受けての二階経産相の弁明を12時34分スタンプの読売電子版速報記事から。

「家賃補填の認識はない」事務所提供問題で二階経産相

報道陣の質問に答える二階経産相=青山謙太郎撮影 西松建設側が二階経産相の関連政治団体「関西新風会」に対し、事務所を事実上無償提供したとみられる問題で、二階経産相は26日午前、経産省で記者団の取材に応じ、「事実関係について、各政治団体に問い合わせをしているところだ。家賃の補填(ほてん)ということは、私の方には全く認識がない」と説明した。

 各政治団体の収支については「政治資金規正法に基づき、きちんと対応している」と話した。

 関西新風会の家賃については、「(西松側に)支払っているのは事実だ。提供されているとは認識していない」とし、「関西新風会の事務所へは何回か行ったことがある。みんなで協力してやっており、弟もその1人だ」と話した。

(2009年3月26日12時34分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/feature/20090304-527751/news/20090326-OYT1T00579.htm

 事実関係問い合わせ中ですか。

 で、この二階経産相の弁明を受けて、14時35分スタンプの読売電子版速報記事スクープ駄目押し第二段から。

提供の事務所、西松が購入資金4000万…改装工事も行う

 準大手ゼネコン「西松建設」側が二階俊博経済産業相の関連政治団体大阪市内のマンションを事務所として事実上無償提供していたとみられる問題で、同社は、居住用のマンションの一室を事務所として使えるよう改装工事までしていたことが関係者の話でわかった。

 西松建設は関係設計会社にマンションを購入させていたが、その購入資金約4000万円は西松が融資していた。西松建設側から二階経産相側への手厚い便宜供与が明らかになった。

 西松建設側が二階経産相の関連政治団体「関西新風会」に提供したのは、大阪市西区の市街地にあるマンションの4階の一室(約76平方メートル)。不動産登記簿などによると、1998年に新築され、鉄筋コンクリート15階建てだった。

 西松建設関係者によると、同社は関西新風会を実質的に運営している二階経産相実弟から99年ごろ、事務所提供を依頼され、関係設計会社に指示して、この部屋を購入させたが、その際、西松建設は関係設計会社に対し、購入費用として約4000万円を融資した。さらに、実弟側からの依頼を受け、居住用だったマンションを事務所として使えるよう、西松建設は改装工事も実施したという。

 その後、関西新風会は関係設計会社と年間約280万円で賃貸契約を結んだが、西松建設関係者は、「家賃には改装費の分も含まれており、それなりの金額で設定した」と話す。

 一方、西松建設はこの家賃分を補填(ほてん)するため、二階経産相が代表を務める「自民党和歌山県第3選挙区支部」へ、毎年300万円を個人献金の形を装って送金していた。改装費分も含めて補填していたことになり、事務所を事実上無償提供していた可能性が強まっている。

(2009年3月26日14時35分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/feature/20090304-527751/news/20090326-OYT1T00663.htm

 「購入資金約4000万円は西松が融資していた」事実が「関係者の話でわかった」のであります。

 ・・・

 うーん、二階氏の弁明を待っての読売の駄目押し記事なのであります。

 一連の読売スクープですが、いずれも「関係者の話でわかった」つまり検察リーク情報であります。

 なぜ検察は小沢氏秘書起訴の直後にこの二階氏疑惑をマスメディアにリークしたのか?

 一連の検察の捜査には多くの国民は釈然としないものを感じているわけですが、捜査対象の政治家は小沢氏サイドだけでないぞと国民に示すための、ガス抜きか、それともポーズだけでなく本当にこっちもヤマを作るつもりなのか?

 検察の今後の捜査の動向を見守りたいと思いますが、それにしてもなぜスクープが読売なのか。

 ひとつの鍵を握るのは昨日(25日)の各紙社説の秘書起訴に対する読売の微妙なスタンス。

【朝日社説】西松献金事件―小沢代表は身を引くべきだ
http://www.asahi.com/paper/editorial.html
【読売社説】公設秘書起訴 小沢代表続投後のイバラの道
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20090324-OYT1T01189.htm
【毎日社説】小沢代表続投 説得力のない会見だった
http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20090325ddm005070015000c.html
【産経社説】公設秘書起訴 小沢氏続投は通らない
http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/090325/stt0903250313002-n1.htm
【日経社説】小沢氏続投は有権者の理解得られるか
http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/index20090324AS1K2400824032009.html

 タイトルを比べても、「小沢代表は身を引くべきだ」(朝日)や「小沢氏続投は通らない」(産経)の小沢辞任を強く促す他紙社説に対し、読売の「小沢代表続投後のイバラの道」は明らかに小沢続投を前提としている点だけでも、小沢氏に対しイタワリのようなものを感じて違和感があります。

 とりあえず社説全文。

公設秘書起訴 小沢代表続投後のイバラの道(3月25日付・読売社説)

 民主党の小沢代表が続投を表明したことを、すんなり納得する人は少ないのではないか。民主党の行く先には険しいイバラの道が待っている。

 東京地検が、小沢代表の公設第1秘書を政治資金規正法違反で起訴した。秘書は、西松建設からの計3500万円の献金を同社関連の政治団体からの寄付と偽って報告したとして、虚偽記入など三つの罪に問われている。

 小沢代表は、事件が軽微な形式犯であるかのように主張する。

 だが、虚偽記入罪は、5年以下の禁固である。秘書によるあっせん利得処罰法違反の懲役2年以下よりも重い。

 しかも、問題の金は、西松建設が東北地方の大型公共工事の受注を狙い、ダミーの政治団体や下請け企業を使った迂回(うかい)献金だった。秘書は、西松建設献金を要求し、献金先の分散を指示するなど事件に積極的に関与していた。

 検察当局はそう見ている。

 それでも、民主党が小沢代表の続投を了承したのは、世論はいずれ沈静化する、と判断したためだろう。小沢代表以外に、寄り合い所帯の党を束ねられる指導者がいないという事情もあるようだ。

 しかし、古い自民党と同様の金権体質を小沢代表が今も引きずっていたことは、民主党のイメージを著しく傷つけた。

 小沢代表は24日夜の記者会見で政権交代にかける思いを何度も力説した。だが、代表が次期衆院選の陣頭指揮をとることのプラス・マイナスを本当に党内で議論したのか。そこがはっきりしないこと自体が民主党の弱点だと、有権者に受け止められないだろうか。

 小沢代表はこれまで、献金受領の経緯や西松建設との関係について「何も悪いことはしていない」としか語っていない。

 疑惑を払拭(ふっしょく)するため、より説明を尽くさなければ、自らの続投への理解を得ることも、国民の信頼を回復することもできまい。

 国民への説明が求められるのは小沢代表だけではない。

 検察当局は事件について、「政治資金の実態を偽ることは国民の政治的判断を歪(ゆが)める。悪質な事案で看過できない」と強調する。

 ただ、総選挙が迫る中での捜査着手は政治的な影響が大きい。

 社会的な関心も高い。西松建設のダミー政治団体から献金を受けた他の与野党議員のケースと、どう違うのか。

 検察当局は、事件の徹底捜査に加え、こうした疑問にも、より丁寧に答えるべきだろう。

(2009年3月25日01時50分 読売新聞)

 興味深いのは結語です。

 国民への説明が求められるのは小沢代表だけではない。

 検察当局は事件について、「政治資金の実態を偽ることは国民の政治的判断を歪(ゆが)める。悪質な事案で看過できない」と強調する。

 ただ、総選挙が迫る中での捜査着手は政治的な影響が大きい。

 社会的な関心も高い。西松建設のダミー政治団体から献金を受けた他の与野党議員のケースと、どう違うのか。

 検察当局は、事件の徹底捜査に加え、こうした疑問にも、より丁寧に答えるべきだろう。

 「献金を受けた他の与野党議員のケースと、どう違うのか」、「検察当局は、事件の徹底捜査に加え、こうした疑問にも、より丁寧に答えるべき」だと主張しています。

 そして今日のスクープ連発です。

 ・・・

 検察はただのガス抜きリークかも知れませんが、ナベツネ率いる読売は胡散臭い狙いでリーク記事を乱発しているかもしれません。

 読売主幹のナベツネ氏が、またぞろ選挙後の大連立や政界再編を画策しつつ胡散臭い目的で小沢氏延命に協力しているのかともうがって考えてしまいますが、どうでしょうか。

 いずれにしてもこのタイミングでのこの読売の朝刊一面を使ったスクープやその続報連発は、明らかに小沢氏にとって援護射撃とみなせましょう。

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(木走まさみず)