木走日記

場末の時事評論

いかだと滝〜緊迫した外部状況と乖離したとぼけた時が流れる閉空間の話

●いかだと滝(創作寓話)

 大河をのんびり川下りしている「いかだ」がありました。

 そのいかだには仲のたいそう悪い二人の男が乗っておりました。

 しばらくすると遠くから滝の落ちる音が聞こえてきました。

 まずいことにどうやらこの先に大きな滝が待っているようです。

 どちらかの岸に避難するよう、ともかく滝に落ちないうちに舵(かじ)を急いで切らねばなりません。

 「このままでは落ちてしまうから、緊急避難で一旦こっちの岸に避難しよう、おれに舵をよこせ」

 「いや、あっちの岸に避難すべきだ、おれが舵を取る」

 と、どっちが舵を取るかで互いを罵り合う下らない喧嘩しているうちに、貴重な時間が流れていきます。

 そうこう時間を無駄に過ごしているうちに、川の流れはますます激しく濁流のごとく勢いをまし、滝の音もますます激しい轟音となり、もう目の前には巨大な滝がゴーゴー音を立てて待ち構えています。

 もう流れに逆らってどちらかの岸に避難するには一刻の猶予もなりません。

 それなのに、いかだの上の二人は無策にも舵を切ることなく口論を繰り返すのでした。

 「舵を取るのは俺だ」

 やがて水しぶきを上げた悪魔のような大きな滝つぼが姿をあらわにしようとしています。

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日経平均終値7086円 バブル後安値更新、26年5カ月ぶり低水準〜9日付け日経電子版速報記事

 9日付け日経電子版速報記事から。

日経平均終値7086円 バブル後安値更新、26年5カ月ぶり低水準

 9日の東京株式市場で日経平均株価は続落。大引けは前週末比87円07銭(1.21%)安の7086円03銭と、2008年10月27日のバブル後安値(7162円90銭)を下回り、1982年10月6日(6974円35銭)以来、26年5カ月ぶりの安値水準に落ち込んだ。欧米の金融問題の先行きに不透明感が根強く、景気低迷の長期化懸念も嫌気され、持ち高調整の売りに押された。公的年金などの買い観測や、政府の株価対策への期待が支援要因に働いたが、積極的な買い手掛かりは乏しく、値動きの悪さを嫌気した見切り売りも出た。三菱UFJや三井住友FG、みずほFGの3メガバンクがともに下げ、トヨタやホンダなどの自動車株も売られた。東証株価指数(TOPIX)も続落し、大引けは前週末比10.86ポイント(1.51%)安の710.53と、前週末に続いてバブル後安値を更新した。東証1部の売買代金は概算で1兆1125億円(速報ベース)だった。〔NQN〕 (15:07)

http://www.nikkei.co.jp/news/main/20090309NT000Y92909032009.html

 うーん、終値7086円ですか、26年5カ月ぶり低水準だそうです。

 26年5ヶ月前といえばはるか昔のことではあります、不肖・木走は工学部の学生でありました。

 それはともかく、いよいよもって株価7000円割れ直前まで差し迫ってきた感がありますね。

 ふう。

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麻生内閣迷走に“民主党リスク”で株価の重しに〜5日付け日経記事

 さて、経済アナリストの岡田晃大阪経済大学大学院客員教授によれば、日本の「政治の迷走が株価下落の一因」であると断じています。

 5日付け日経記事から抜粋。

【日米政局とマーケット】1回 小沢氏秘書逮捕!〜麻生内閣迷走に“民主党リスク”で株価の重しに(09/3/5)

小沢民主党代表の公設第一秘書が逮捕され、株式市場にも激震が走った。株式市場はこれまで麻生内閣の迷走に厳しい目を向けていたが、これに“民主党リスク”も加わった形だ。次の首相になるかもしれない政治家の秘書逮捕は、日本の政治混迷の深まりを象徴しており、一段と株価の重しになりそうだ。

 すでにこれまで政治の迷走が株価下落の一因になっていた。麻生内閣発足以来、内閣支持率低下と足並みをそろえるように日経平均株価は下落しており、麻生内閣発足時の1万2115円から3月4日には7290円となった。株価下落の最大の原因はもちろん金融危機と景気後退だが、麻生内閣の迷走も影響していることは間違いない。特に2月に入ってから麻生首相の「郵政民営化に賛成ではなかった」との発言と小泉元首相の麻生批判、さらには中川財務相(当時)辞任など、麻生内閣は政権末期の様相を呈してきたが、それと並行して日経平均は2月初めの8000円前後から2月下旬には7000円台前半まで下げた。

 そこへ小沢代表の秘書逮捕。これは麻生内閣にとっては久々の好材料ではあるが、政局を一段と混迷させることは避けられそうもない。マーケットの反応は、為替市場でよりはっきり表れている。円相場はすでに2月中旬から円安傾向に戻っていたが、小沢代表秘書逮捕を受けて1ドル99円台まで円が下落した。最近の日経平均の下落がNYダウに比べて小幅にとどまっているのは、その円安に助けられているからで、株式市場が政局混迷を嫌気していないわけではない。

(後略)

http://markets.nikkei.co.jp/features/16.aspx?id=MMMAy6000005032009

 「麻生内閣発足以来、内閣支持率低下と足並みをそろえるように日経平均株価は下落」しており、「内閣発足時の1万2115円から3月4日には7290円となった」とし、「そこへ小沢代表の秘書逮捕」がおいうちをかけ「政局を一段と混迷させることは避けられそうもない」状態なわけです。

 記事にもあるとおり、「株価下落の最大の原因はもちろん金融危機と景気後退」なわけですが、「日本の政治混迷の深まり」が「一段と株価の重し」になっているとしています。

 確かに、一連の麻生内閣の迷走のうえに今回の小沢代表の秘書逮捕で、特に外国人投資家は日本の政局に敏感に反応している模様で、株式市場・為替市場で日本売りともとれる動きが顕著なのであります。

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●永田町の政治空間では時間がとぼけた流れ方をしている

 現実の話。

 国会では、「小沢はやめないでほしい」(自民サイド)、「麻生はやめないでほしい」(野党サイド)と、悲しくなるような志の低い、統治能力を欠いた相手の党首にできればやめないでほしいと、選挙に有利になるからというとぼけた願望が交錯しているようです。

 朝日コラムによれば、野球ならどうしようもないつまらない貧打戦を見せられているようなものだと表現しています。

 6日付天声人語から抜粋。

(前略)

 ・・・攻守所を変えるのかと思いきや、「奇妙な均衡」が与野党間にあるらしい。小紙政治面によれば、自民党は問題をかかえる小沢氏に代表を続けてほしいのだという▼同じように民主党も、不人気な麻生氏を相手に選挙に臨みたいそうだ。互いのマイナスイメージへの期待だろう。天王山を控えて、敵が喜ぶ大将とは情けない。野球の貧打戦を見るような、お寒い政治の光景である

http://www.asahi.com/paper/column20090306.html

 「互いのマイナスイメージへの期待」から成る「奇妙な均衡」が与野党間にあるとは、確かに「野球の貧打戦を見るような、お寒い政治の光景で」あります。

 すべてのことの判断が総選挙に有利か不利かだけになり、いましなければならない経済対策の内容の充実もスピード感も他国に大きく遅れを取っております。

 市場では26年5カ月ぶり低水準を記録し明日にでも7000円割れするのではとの危機感が充満しているそのときに、永田町の政治空間では時間がとぼけた流れ方をしているようです。

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(木走まさみず)