木走日記

場末の時事評論

次期日銀総裁人事をめぐる民主党批判のメディアスクラムにあえて反論を試みる

 なんか次期日銀総裁人事をめぐる政争で民主党の評判がすこぶる悪いようです。

 各紙社説を並べてみるとご覧のとおり。

【12日朝日社説】日銀総裁人事―腑に落ちぬ不同意の理由
http://www.asahi.com/paper/editorial20080312.html
【13日読売社説】日銀総裁不同意 民主党は責任ある対応を
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20080312-OYT1T00733.htm
【13日毎日社説】武藤氏不同意 空席回避へ知恵をしぼれ
http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20080313k0000m070147000c.html
【13日産経社説】日銀総裁人事 武藤氏差し替えは筋違う
http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/080313/stt0803130439002-n1.htm
【13日日経社説】日銀総裁の空席回避が日本の責務(3/13)
http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/index20080312AS1K1200612032008.html

 珍しく朝日から産経まで民主批判一色、久しぶりの主要メディア揃い踏みのメディアスクラムの状態であります。

 各紙社説のポイントはここ、それぞれの結語に注目してみましょう。

【12日朝日社説】日銀総裁人事―腑に落ちぬ不同意の理由
 もう一度、民主党に問いたい。ここが政権とことを構える勝負どころなのか。大局的な判断をすべき時だ。

【13日読売社説】日銀総裁不同意 民主党は責任ある対応を
 野党、とくに民主党は、しっかりと責任意識を持って、事態打開のための与野党協議に応じるべきだ。総裁候補の安易な差し替えは、日銀総裁の信認を損なうことにならないか。そんな点も含め、冷静な判断を求めたい。

【13日毎日社説】武藤氏不同意 空席回避へ知恵をしぼれ
 日本に対する信頼が損なわれないようにするためにも、与野党に責任ある対応を求めたい。とりわけ民主党は、「空席は与党のせい」という理屈が通用しないことを自覚すべきだ。

【13日産経社説】日銀総裁人事 武藤氏差し替えは筋違う
 民主党には野党第一党として責任ある対応が求められている。日本売りを加速する結果になると知りながら、総裁空席の事態を招く行動に出たことはきわめて残念だ。参院本会議で一部の民主党議員の欠席、棄権が出たことを執行部は重く見るべきだ。

【13日日経社説】日銀総裁の空席回避が日本の責務(3/13)
 日本はサブプライム問題の直接の影響は小さいとはいえ、ねじれ国会の下で福井俊彦日銀総裁の後任人事が暗礁に乗り上げている。危機の歯止め役になるどころか、余計な不安材料を加えるようなありさまだ。政治は金融危機の実態を見据え、国際的な責任を果たすよう動くべきだ。

 うーん、日経を除いて4紙が民主党を名指しで結語にて批判しているわけですが、「民主党に問いたい。ここが政権とことを構える勝負どころなのか」(朝日社説)とか、「民主党は、しっかりと責任意識を持って、事態打開のための与野党協議に応じるべき」(読売社説)とか、「民主党は、「空席は与党のせい」という理屈が通用しないことを自覚すべき」(毎日社説)とか、「民主党には野党第一党として責任ある対応が求められている」(産経社説)とか、名指しこそないものの日経社説でも明らかに民主を意識した「危機の歯止め役になるどころか、余計な不安材料を加えるようなありさま」という厳しい表現が並んでおります。

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 確かに民主の「ミスター財務省」と呼ばれた武藤氏の出自に反対という単純な論法は、いくら「財政と金融の分離」にこだわると言ったって、国民には極めてわかりづらいし、そもそも欧米諸外国をみてもナショナルバンク責任者に財務省出身者がつくこと自体、まったくもって常態化した普通のことであります。

 民主が大切な国有銀行総裁人事を「政局」として利用している、このままでは日銀総裁が不在のママ「日本売り」という政局由来の不況を招く可能性大であるという各メディアの主張も共通しておるようです。

 おっしゃるとおりであります。

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 さにありながら、天の邪鬼(あまのじゃく)な当ブログとしては、今回のような朝日から産経まで見事にメディアスクラムされると、ちょっと待ってよ、と逆らいたくなる悪い癖があるのであります。

 確かにナショナルバンクの責任者の人事を「政局」に利用する事自体、民主党のとっている手段は決して誉められたモノではないし、中にはこれでは民主の政権担当能力を疑わざるを得ないという論が見られることもよく理解できます。

 しかしながら、じゃあ一方の我らが福田政権に政権担当能力があるのかと言えば、中国の無責任な「中国で混入した可能性は低い」発言に、福田さん自ら「前向き」ととんちんかんな評価してしまっている毒餃子問題、国交省やその天下り先法人による常識外の無駄遣いが発覚している道路特定財源問題、防衛省の発表・発言した内容が2転3転して制服組と背広組の反目が露呈してしまったイージス艦衝突問題、やはり公約を守れず大半の名寄せが事実上現段階では不可能であることが露呈した「宙に浮いた」年金データ問題、何一つ、福田政権は全うに対応できてはいません。

 福田政権はこれらの諸問題において、全てに渡り「人ごと」内閣であり、そも政権担当能力に大きな疑問符が付けられていることは、30%を割り始めた急落するその政権支持率にも反映しているのであります。

 民主の手法には大いに問題はありながら、しかしながら、では福田政権に任せていればよろしいのか、例えば市場関係者などは「F問題」という隠語が使われているのですが、これすなわちFとは「福田首相」のことであり、今の市場低迷は万事に無策な「福田政権不況」であると揶揄されているぐらいなのであります。

 かたや生涯収入が10億に達せんとする国交省OBがのうのうと道路利権をむさぼる中で、年収200万に届かない非正規労働者数が2000万に届かんとしているいびつな社会構造の中で、市場関係者に「F問題」と揶揄されるほど経済無策な福田政権なのであります。

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 民主に政権担当能力があるのかと問われれば、多くの国民が厳しい意見を有していることでしょうし、私自身頼りない民主に自民党以上の政権担当力があるのかははなはだ疑っております。

 しかしながら、政権担当力の意味するところの中に、官僚公務員依存、既得利権擁護が含まれているとするならば、いっそ、民主に政権をゆだねた方が、官僚なれ合いの福田政権ではまず不可能である、官僚利権の徹底的にウミを出すことも可能かも知れません、少なくとも、今よりは、現段階での官僚・自民でなあなあにして隠蔽している諸悪がいくらかあぶり出されることでしょう。

 国交省とその天下り法人の税金私物化にしても、今明らかになった問題はおそらく氷山の一角なのであろろと、多くの国民は疑っておりますし、社会保険の問題でも、その処分の甘さ、事後対応のゆるさは、やはり官僚依存の自民党政権では限界があることを露呈しているのであります。

 永遠にとはもうしません、一回だけでも自民党政権から民主党政権に政権委譲して、この国の政治にとってどうしようもない癌的存在である、官僚利権政治の外科的手術を民主党にさせてみてはどうでしょう。

 官僚利権政治に終止符を打つ、それを果たしたならば、その一点だけで民主党は歴史的使命を遂げたことで、その時点で民主党は解党してもよい、とすら私は個人的に思っております。

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 ナショナルバンクを政争に利用する民主党の姑息な方法を決して肯定するつもりはありませんが、このまま福田政権が存続することのほうが、実はこの国の国益に反するのではないのか、今日は次期日銀総裁人事をめぐる民主党批判のメディアスクラムにあえて反論を試みてみました。

 今回は駄目な民主党をちょっと擁護してみたので、なんかいっぱい反論されそうな嬉しい(苦笑)予感が・・・、ですが本件に関するみなさんのご意見をうかがいたいです。



(木走まさみず)