木走日記

場末の時事評論

小沢民主「肉を切らせて骨を断つ」大作戦に勝算はあるのか〜民主党関係者に聞いてみた

 7日付け朝日新聞電子版記事から。

日銀人事 「渡辺副総裁」に民主不同意強まる
2008年04月07日21時26分

政府は7日、日本銀行の総裁に白川方明(まさあき)副総裁(58)を昇格させ、白川氏に代わる副総裁に前財務官の渡辺博史・一橋大院教授(58)を充てる人事案を正式に国会に提示した。民主党は白川総裁は同意する方針。ただ、小沢代表は財務省出身の渡辺氏の副総裁起用に反対しており、不同意となる公算が大きくなっている。

http://www.asahi.com/politics/update/0407/TKY200804070222.html

 「小沢代表は財務省出身の渡辺氏の副総裁起用に反対」しており、今回も民主党として副総裁人事は「不同意となる公算が大きくなっている」そうであります。

 うーん、ガソリン税暫定税率延長問題しかり、日銀総裁人事しかり、政府自民党案に妥協しない強行策が目立つ民主党なのでありますが、この局面で小沢さんの腹のウチにはいかなる戦略が描かれているのでしょうか。

 かねてより懇意ある民主党関係者(衆議院議員政策秘書)に、電話にて聞き取りをしてみました。

■小沢氏はもはや今回の問題を福田政権と徹底的に対峙対決していくという決戦政局モード上でしかとらえていない
木走「報道によれば民主党は白川総裁は同意する方針だが、財務省出身の渡辺氏の副総裁起用に反対の意向だという、これは党内の大勢意見なのか」
秘書氏「いや、正直党内では前原前代表や仙谷由人議員など渡辺副総裁を容認する意見が多いのは事実。鳩山由紀夫幹事長も日曜(5日)のTVにおける小沢氏の渡辺副総裁反対発言を受けるまでは水面下では渡辺副総裁も含めて今回の自民党案を容認する含みのある発言をしていた」
木走「ではなぜあえて小沢氏はTVで渡辺副総裁は反対の意向を表明したのか」
秘書氏「小沢氏はもはや今回の問題を福田政権と徹底的に対峙対決していくという決戦政局モード上でしかとらえていないのではないかと思う」

■小沢代表としてはいまさら鳩山氏が用意した今回の落としどころに同意できない
木走「少し具体的に」
秘書氏「ちょっとお家騒動的話で気は進まないのだが・・・ そもそも一連の日銀人事の水面下の自民党との調整役が鳩山幹事長に一任されてきたことに対する党内の反発がある。具体的に話すと当初小沢代表は財務省出身の武藤総裁容認に傾いていた、それを財金分離の観点から強く反対して、結果第一次・第二次政府案に民主党として不同意となったのは鳩山幹事長が主導した経緯がある。日銀人事をここまで政局にしてしまった以上、小沢代表としてはいまさら鳩山氏が用意した今回の落としどころに同意できないと判断したのだろう」

■組織基盤が盤石では決してない民主党にとって世論は無視できない
木走「それにしても、民主党暫定税率問題といい日銀人事といい今回一連の強行策で国政の停滞を招いているという批判があるのだが党内にはそのような世論を気にする空気はないのか」
秘書氏「いやいや組織基盤が盤石では決してない民主党にとって世論は無視できない。暫定税率問題で強硬に反対できたのだって、世論調査で国民の6割以上が暫定税率維持反対であるという結果があったからだし」
木走「確かにそれはそうだが、世論調査によれば福田政権の支持率もここにきてじり貧でありある意味民主党の強行策が効を奏した結果ともいえるが、民主党の支持率も落ちているよね、国民は民主党の一連の強行策も評価していないのではないか」
秘書氏「わかっている。特に日銀人事に対する反対はメディアでもスクラム組まれているし、民主は党利党略だけで国益を考えていないという耳の痛い批判も我々には届いている」

■民主への批判も強まるが、より多くの国民の批判は福田政権に向かうだろう
木走「民主の政党支持率も落ちていることを自覚しているのに、なぜそれでも小沢さんは強行に自民案に反対し続けるのか、そこにはいかなる戦略があるのか」
秘書氏「推測だが党内で囁かれている小沢代表の密かな戦略はこうだ。ガソリン税暫定税率反対の多数世論を背景に強行策を貫いているが、民主党の支持率を上げるには政府自民と大人の対応をしてなんらかの妥協案をさぐるほうが賢明なことは事実だろう。しかし、その場合、民主の支持率アップの側面より福田政権支持率アップにより貢献してしまうだろう。今回の日銀人事でもここで副総裁人事を拒否すれば、日銀人事で三度目の失敗という前代未聞の福田政権の失態を国民に見せつけることができるわけだ。つまり民主への批判も強まるが、より多くの国民の批判は福田政権に向かうだろうという計算がある」
木走「うーん、その推測が正しければまさに国民不在の政局ゲームだね」
秘書氏「いや、福田政権を打倒して解散総選挙に追い込み民主党政権を誕生させることが有権者のためであるという一念からの行動ととらえてほしい、いわば「肉を切らせて骨を断つ」作戦だね、少々返り血を浴びるのはやむをえないと小沢さんは考えているのではないか」
木走「「肉を切らせて骨を断つ」ねえ、そんな勇ましい作戦なのかなあ、あんまり国民不在の政治を続けていると民主も福田政権と「共倒れ」してしまうかもよ」
秘書氏「たしかに世論しだいだけどね」

 うーん、興味深い話でした。

 この民主党関係者によれば、小沢氏は民主党の支持率低迷をもあえて顧みず、ギリギリまで解散に福田政権を追い詰めるために「肉を切らせて骨を断つ」大作戦を決行しているというのです。

 つまり、このような政治の体たらくは、自分の党の支持率も下がるけど、時の責任与党である福田政権の支持率のほうがより下がるだろうとという、なんとも政局の人小沢氏らしい読みがあるのだと。

 うーん、政権奪取の戦略としては理解できますが、国民不在・国益不在の党利党略のそしりはまぬがれないでしょう。

 国民不在の小沢民主「肉を切らせて骨を断つ」大作戦に勝算はあるのでしょうか。

 また、小沢氏がこのような強行策を決行して、決して党内が一枚岩ではない民主党自体は持つのでしょうか。

 ・・・

 今回は民主党関係者からの話を読者のみなさまにご紹介いたしました。

 しばらく政局から目がはなせませんネ。



(木走まさみず)