木走日記

場末の時事評論

現状はまさに「道路特定財源」ではなく「国土交通省道路局特定財源」

●道路財源からアロマテラピー器具購入〜これじゃ「道路特定財源」じゃなくて「国土交通省道路局特定財源」だっての

 15日の日経新聞電子版から。

道路財源からアロマテラピー器具購入に支出

 国土交通省の国道事務所が揮発油税ガソリン税)などの道路特定財源を使い、アロマテラピー(芳香療法)の器具を購入していたことが分かった。民主党長妻昭氏が14日の衆院予算委員会で指摘した。道路整備の必要性を宣伝するミュージカルの公演費用(約5億2600万円)を道路財源から支出していたことも社民党保坂展人氏が追及。冬柴鉄三国交相は今後両件への支出を取りやめる意向を示した。(14日 23:40)
http://www.nikkei.co.jp/news/seiji/20080215AT3S1402E14022008.html

 道路特定財源を使い、アロマテラピー(芳香療法)の器具を購入していた国交省なのでありますが、そうですか約5億2600万円かけてミュージカルの公演もされていましたか。

 豪気なことであります。

 なんか社保庁みたいですネ。

道路財源で宿舎建設・国交省、07年度25億円
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20080125AT3S2402424012008.html
道路特定財源マッサージチェアも購入
http://www.nikkei.co.jp/news/seiji/20080205AT3S0500M05022008.html

 本来なら文字通り道路の建設に使用されるべき道路特定財源で、1年(昨年度)に25億もの宿舎建設費にあて、その他にも娯楽費としてスポーツ用具購入、マッサージチェア購入、挙げ句にアロマテラピー器具購入にミュージカル公演ですか。

 これじゃ「道路特定財源」じゃなくて「国土交通省道路局特定財源」だっての

 ・・・

 ふう。

 まったく民間の感覚では考えられないこの税金の無駄遣いなのですが、社保庁のときと同じ構図なのでありまして、何苦労なく毎年膨大なお金(税金・年金)がかってに入ってくるのですから、彼らお役人にしてみれば、こんな宿泊施設や娯楽費など誤差、誤差、そんな小さいこと気にすんな、ということなんでしょう。

 なんせ本税の方で、もっともっと無駄遣いしてるんですからネ、と。

 馬鹿か・・・



●福田さんはどこを向いて政治をしているのか?〜12日の国会答弁で本性を晒した我らが福田政権

 この問題、12日の国会答弁で我らが福田政権は、その無能振りと愚かな官僚主義を無惨にも国民の前に晒したのであります。

 12日の衆院予算委員会民主党馬淵澄夫衆院議員が、道路特定財源廃止に関して、今後10年間で最大59兆円を支出する道路整備中期計画の不当性を鋭く突いたのであります。

 この当たりの詳細は産経新聞14日掲載の櫻井よしこ氏のコラム記事「福田首相に申す 「国民主役」言う資格なし」に詳しいです、電子化されていないようなのですが、該当部分を抜粋紹介。

「国民主役」言う資格なし

(前略)

 平成19年11月に国交省が「道路の中期計画(素案)」を制定、総額65兆円で総延長1万4000キロメートルの高速道路の整備を目指すとした。政府・与党はコスト削減等を図り、事業費を59兆円に圧縮すると決定した。道路整備の事業費は、社会資本整備重点計画に則して決定され、同計画は国交省所管の財団法人「計量計画研究所」の行った交通量調査に基づいて作成された。交通量については、平成17年の調査資料があるにもかかわらず、平成11年の統計を基に計算した道路交通需要推計がまとめられた。

 そこで馬淵氏は、当然尋ねた。平成17年の調査資料があるのに、なぜ、平成11年の資料を基に計画を作ったのか、と。新資料は、交通量の減少傾向をはっきりと示しており、国交省が打ち出した数字に比べて、2030年には8.7%、2050年には15.6%もの減少を示している。交通量の減少は、当然、道路需要も押し下げる。

 馬淵氏の問いに冬柴鉄三国土交通大臣はまともに答えられなかった。のみならず、実は、新しい資料の存在そのものを馬淵氏に指摘されるまで知らなかったと認めたのだ・

 絵に描いたような官僚らの情報操作である。彼らは自分たちの論理を通すために、つまり、何が何でも道路を作り続けるために将来の交通量の減少を示した平成17年の資料を隠したと考えられる。

(後略)

産経新聞2月14日紙面3頁より

 姑息にも国交省はまたしても総額59兆円の道路を作り続けるために、交通量予測を「絵に描いたような官僚らの情報操作」(櫻井よしこ氏)により水増ししていたのです。

 無意味な3本の本四連絡橋やアクアラインなどかつて何回、国交省は将来の交通量予測をでたらめに「情報操作」してきたことか、今回も愚かにも担当大臣冬柴鉄三氏は、「新しい資料の存在そのものを馬淵氏に指摘されるまで知らなかった」のであります。

 で、さらに悲惨な無能振りを国会にて国民の前に晒したのが福田首相でありました。

 櫻井氏の記事の続きを抜粋。

 馬淵氏はこの時点で、福田首相の見解をただした。対して首相はなんと答えたか。驚いたことに、「正直言って私自身はわからない」と答えたのだ。
 「ここは技術的なことですから、国土交通省によく聞いていただきたいと思います」「いろいろな人間の判断というのがあるんです。判断が大事なんです。いろいろな要素を加味して判断するんです」と。

 (後略)

 我らが福田首相は、官僚らが情報操作したのではないのかという、道路整備中期計画の不当性を鋭く突いた民主党馬淵議員の追及に対し、

 「私自身はわからない」「国土交通省によく聞いていただきたい」と一国の首相として答弁にもならない、官僚擦り寄りの官僚頼み発言をしたのであります。

 ・・・

 櫻井氏のコラムは「福田首相には、国民が主役、消費者が主役と言う資格はない」と結んでいます。

  斯くしてツケはすべて国民に回される。この欺瞞だらけの構図を見ない福田首相には、国民が主役、消費者が主役と言う資格はないのである。発想を大転換するという偽りを語るのを控え、官僚政治に殉ずると、言明すべきである。国民に真の姿を見せることが、せめてもの誠意というものであろう。

 まったくです。

 福田さんはどこを向いて政治をしているのか?

 福田首相は「国民重視」など口先だけは有権者に媚びをうっておりますが、昨日のエントリーでも触れましたが、福田首相の言う「消費者重視」政策のその胡散臭い実態は「消費者庁」などというわけのわからん官僚機構の増殖なのであり、挙げ句に国民の税金に関する重要な論戦においては、上記の人ごとのような無責任な官僚頼みの国会答弁に終始しています、これでは「国民」より「官僚」重視といわれてもしかたないでしょう。

 ・・・



●誰のため、何のための高速道路建設なのか?

 そもそも 国交省の「道路の中期計画」に従えば、明らかに過大評価された交通量予測に基づいて、59兆円の計画が作られていき、国民全員に10年間で一人当たり約50万円を負担させる結果になるのです。

 国交省の「道路の中期計画」、「既存高速ネットワークの効率的活用・機能強化」の項に「並行する一般道は混雑しているにもかかわらず、比較的余裕がある高速道路の区間が、全国の65%」と書かれています。

国土交通省道路局
「道路の中期計画」
http://www.mlit.go.jp/road/ir/ir-douro-keikaku/ir-douro-keikaku.html

 あまり、もしくはほとんど使われていない高速道路が3分の2もあると言っているのです。

 当の国交省でさえも認めるこの厳しい現実にもかかわらず、計画ではあと1300キロの高速道路を造るのに建設費だけで12兆円、修理、維持、管理費などを入れればより多額の借金を重ねようとしているのです。

 1万4000キロを作るには、さらに借金が膨らむ。いずれもとてもすぐには返済できない借金です。

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 現在、第二東名高速道路の建設が進んでおり、その平均コストは「しんぶん赤旗」記事によれば1m当たり二千万円、1キロメートルで実に200億円にも上るといいます。

第二東名 高速道路

 道路公団は十月一日から民営化されたものの、ムダの代名詞の建設は進んでいます。第二東名名神高速道路。東京から神戸まで、全長約四百六十キロメートルの高速道路です。総事業費は実に約九兆二千億円に達します。

 第二東名は、時速百四十キロ走行を想定しています。現在の東名よりも幅を広げて六車線にし、さらにカーブや高低差を減らしました。そのため、トンネルと橋が全体の六割も占めるという構造に。これが建設費が高騰する原因になりました。一メートルあたりの建設費は単純計算で二千万円にもなります。

 ところが高速道路の制限速度は最高百キロ。この高速道路が完成しても百四十キロでは走ることはできません。「東名高速の渋滞解消」から「東海大地震の代替道路」へと建設目的も揺らいでいます。

http://www.jcp.or.jp/tokusyu-05/30-muda/html/03_tomei.html

 この記事は3年前のものですが、もちろん、現在も第二東名名神高速道路は静岡県などで建設は進んでいます。

 しかしです、この「第二東名」がゴール無き「税金ばらまき」と酷評されているのは、肝心の厚木以東、東京へのアクセスを造るメドはまったく立っていない事実です。

 第二の「東名」と言いながら、この高速道路では、最終目的地の東京に入ることさえできないのです。

 東京に入るためのルート計画ももちろん用地買収計画もその天文学的費用もすべて白紙のママ、建設を進めているのです。

 これでは、いったい、誰のため、何のための高速道路建設なのでしょうか。

 ・・・

 そのような高速道路に際限もなく莫大な財源を注ぎ込むより、生活道路の整備のほうが重要だという当然の議論も起きてきてしかるべきでしょう。

 一般財源化すれば国会審議を通じてこのような無謀な計画を阻止することも可能かも知れませんが、現状の道路特定財源は、国土交通省道路局主導の「情報操作」の疑いの絶えないあやしい計画に基づいて進められているわけです。

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 現状は、まさに「道路特定財源」ではなく「国土交通省道路局特定財源」なのであります。



(木走まさみず)