朝日新聞社説よ、もっと踏み込め!!〜「10年で59兆円」は国交省側の「びた一文一般財源化させないぞ」宣言じゃないのか
本日(19日付け)の朝日新聞社説から全文掲載。
「道路」論戦―「59兆円」の根拠が崩れた
租税特別措置法の改正案がきょう審議入りする。焦点はガソリン税などの道路特定財源の扱いだ。これまでは与野党論戦のテーマになりにくかったが、「ねじれ国会」で大きな争点に浮上した。
特定財源という硬直的な仕組みをなぜ維持するのか。まず一般財源化し、その中から必要な道路を造るというやり方ではどうしてダメなのか。今後、10年間で59兆円もの巨費を道路につぎ込むことの根拠と必要性がどこにあるのか。
民主党が当初仕掛けた「ガソリン値下げ」にとどまらず、議論の土俵が広がってきたことは確かだ。与野党はさらに論点を掘り下げ、国民が納得できる修正案を練り上げねばならない。
残された時間は少ない。3月末までに結論が出なければ、ガソリンの値段が変動するなど国民生活に影響しかねない。「つなぎ法案」を受けた衆参両院議長のあっせんで、各党が「年度内に一定の結論を得る」ことで合意したのも、そうした混乱を防ぐためだったはずだ。
それなのに、与野党ともに打開に向けた機運が見えないのはどうしたことか。あっせん合意に盛られた「立法府での修正」に向けて、与野党はそれぞれ一歩ずつ前に踏み出すべき時である。
政府・与党に求めたいのは、野党から指摘された疑問について、資料の開示を含めて誠実にこたえる姿勢だ。
これまでの論戦を聞く限り、政府の説明には納得しがたい点が少なくない。
国土交通省が「10年で59兆円」の道路整備計画をつくる際、99年の交通量の調査結果を使っていたことが民主党の指摘で分かった。05年の調査では交通量の減少傾向が鮮明なのだが、冬柴国交相はそのことを知らなかったという。計画の前提が崩れているのではないか。
そもそも政府の計画は、21年も前の「高速道路1万4000キロ」のままだ。人口が減り、国の借金が膨れあがっているのに、同じ数字にこだわるのはおかしい。
カラオケセットや野球用具、マッサージチェア。国交省による道路特定財源の乱用が続々と判明した。こうした勝手なことがまかり通ってきたのも、国会のチェックを受けにくい特別会計という仕組みを温存してきたからこそだ。
民主党が道路特定財源を一般財源化し、暫定税率をなくすというのなら、法案の形で早く国会に出すことだ。
民主党の議員が答弁席で「わが党ならこう変える」ともうひとつの選択肢をはっきりと語る。そうなって初めて、政府・与党に修正を迫ることができる。
先の臨時国会で民主党は、給油新法をめぐる対案の提出をぎりぎりまで引き延ばしたあげく、なんの修正も勝ち取れぬまま衆院での再議決を許した。その二の舞いを演じることになったとしたら、参院第1党の名が泣くことになる。
「ねじれ国会」をどう前に進めるか。そろそろ知恵を絞らなければ、与野党とも国民の失望を買うだけだ。
で、ポイントはここ。
国土交通省が「10年で59兆円」の道路整備計画をつくる際、99年の交通量の調査結果を使っていたことが民主党の指摘で分かった。05年の調査では交通量の減少傾向が鮮明なのだが、冬柴国交相はそのことを知らなかったという。計画の前提が崩れているのではないか。
そもそも政府の計画は、21年も前の「高速道路1万4000キロ」のままだ。人口が減り、国の借金が膨れあがっているのに、同じ数字にこだわるのはおかしい。
カラオケセットや野球用具、マッサージチェア。国交省による道路特定財源の乱用が続々と判明した。こうした勝手なことがまかり通ってきたのも、国会のチェックを受けにくい特別会計という仕組みを温存してきたからこそだ。
「計画の前提が崩れている」のはその通りで、前回のエントリーで触れましたが、これは櫻井よしこ氏に言わせれば、正に交通量予測を「絵に描いたような官僚らの情報操作」により水増ししていた疑惑の「計画」なのであります。
その事実をもって国土交通省の「10年で59兆円」道路整備計画の「根拠が崩れた」と題する朝日社説であります。
・・・
うーん。
朝日社説子に反論はないのですが不満はあります。
ご説ごもっともなれど、不肖・木走にいわせれば国交省側の「59兆円」には、裏の意味があるのでありまして、メディアにはもっと踏み込んで論説してほしいのです。
確かに国民から見れば「根拠が崩れた」かも知れませんが、国交省道路局にしてみれば、この「59兆」という数字にははじめから不条理な「意味」があったのではないでしょうか。
つまり、補足とか蛇足とかではなく、私は国交省の欺瞞に満ちた計画を批判する上で極めて重要なことだと思っているのですが、実は国交省にしてみれば「10年で59兆円」にはその数値にはじめから立派(?)な目的を持っていたのだと考えます。
・・・
どういうことかともうしますと、道路整備計画の主要財源である道路特定財源でありますが、最近は単年度の税収ベースで国・地方合わせて5兆8000億(平成17年度)前後の実績で推移しております。
年間5兆8000億の道路特定財源を10倍すれば、10年で58兆でしょう、つまり国交省と政府で調整したこの「10年で59兆円」道路整備計画は、見事に偶然にも道路特定財源を今後10年間で完全に過不足無く使い切るように設定された数値なのであります。
これは安倍政権時に約束された「余剰の道路特定財源は一般財源化する」与党合意に対する、国交省側の厚顔無恥な「道路特定財源はびた一文一般財源化させないぞ」宣言なのであり、その意味で国交省にしてみれば「10年で59兆円」には立派(?)な「意味」があるのであります。
私に言わせれば、「59兆円」にするためには国交省官僚たちは、交通量予測を「絵に描いたような官僚らの情報操作」(櫻井よしこ氏)により水増しすることぐらい、何もいとわなかったのでしょう、ですから、はじめから「59兆円」という数値を意識していて後からつじつまを合わせてしまう「計画」だったのであり、この数値は偶然でも何でもなく、最初から目標とされていたお役人得意の「予算完全消化」できレース「計画」だったのではないのかと、疑念を持っています。
・・・
「10年で59兆円」は国交省側の「びた一文一般財源化させないぞ」宣言ではないでしょうか。
(木走まさみず)
<補記>
「中期計画」の59兆円ですが、経緯としては、昨年の国土交通省道路局「道路の中期計画」素案では、65兆円+3兆円だったものが、政府との調整で59兆円に収まったのであります。
私はこの経緯も含めて、はじめからできレースではないかと疑念を有しております。
<関連テキスト>
■[行政]現状はまさに「道路特定財源」ではなく「国土交通省道路局特定財源」
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20080215
■[政治]自ら掲げた政策マグナカルタの地球温暖化対策に完全に逆行している「火の玉」民主党の「ガソリン値下げ隊」
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20080117