高知県東洋町:沢山保太郎新町長に財政再建する『経営手腕』はあるのか?
●注目の財政破綻自治体における選挙結果〜似て非なる2つの「依存から自立へ」の選択
読売新聞記事から。
「依存から自立へ」夕張市長当選の藤倉さん、一夜明け抱負
「新しい夕張を作るためのトンネルの中にいる。市民が汗を流して一歩一歩進み、抜け出さないと」。財政再建団体になったばかりの北海道夕張市長選で、新人7人の乱戦を制した元タイヤ販売会社社長の藤倉肇さん(66)は23日朝、こう決意を語った。
大企業誘致による雇用創出を掲げた次点候補に342票差まで迫られたが、「自分への批判だとは思っていない。汗を流して改善する方を多くの人が選んでくれた」と言い切った。
引退する後藤健二市長とは高校の同級生。だが、「夕張をよくしたいとの思いは一緒でも、路線は違う」と改革意欲を強調し、「依存型から自立型にするため、意識改革が大事。夕張の人は心が一つだから分かってくれる。市長自らやってみせなきゃ」と力を込めた。
(2007年4月23日11時57分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/election/local2007/news/20070423i405.htm
財政再建団体として18年にわたる困難きわまる再建計画を開始し始めた夕張市でありますが、市民は新市長として札幌市でタイヤ販売会社の社長を務めた藤倉肇氏(66)を選択したのであります。
夕張市民は絶妙の人選をしたと言えましょう、市の赤字不正経理を長年チェックできなかった市議出身者たちではなく、また夕張とは縁もゆかりも無い落下傘候補たちでもなく、高校まで夕張にいてその後市外にて経営不振の民間会社を立て直した実績のある、しかし過去のひどい夕張市行政とは何の癒着も関わりも無い、民間人元会社経営者を選んだわけです。
市の財政再建に藤倉肇氏の『経営手腕』が期待されているのでありましょう。
私はこの夕張市民の堅実な選択を好意的に評価したいです。
しかしながらこれといった産業や財源の無い夕張市にとって、藤倉新市長のいう「依存から自立へ」の道は極めて厳しいものになるでしょう。
ここは夕張市民とともに藤倉肇新市長の『経営手腕』をあせらず見守っていきたいですね。
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全国のほとんどの自治体が財政危機に陥っている中で「財政再建」「第二の夕張にさせない」といったスローガンを多くの候補者が全国で訴えていたわけですが、中でも注目されたのが高知県の東洋町町長選挙でありました。
東洋町でありますがたいへん厳しい赤字財政を抱え一旦は夕張市と同様財政破綻を公にし財政再建団体となることを宣言したわけです、住民などからの多くの反対意見により、破綻撤回し、前町長は財政建て直しの切り札として、独断で、町の年間予算に匹敵する高額の補助金が国から支給される「高レベル放射性廃棄物最終処分場選定の1次調査(文献調査)応募」をして、その結果町議会や町民が猛反発、リコール運動にまで発展してきた経緯があります。
そんな中で、応募に反対する立場で初当選したのが沢山保太郎新町長であります。
沢山保太郎新町長は早速、放射性廃棄物処分場の応募撤回を機構側に申し入れ、機構側もこれを受け入れる方向で検討に入ったのであります。
日経電子版記事から。
高知県東洋町の高レベル放射性廃棄物最終処分場選定の1次調査(文献調査)応募を争点とした町長選で、応募に反対する立場で初当選した沢山保太郎新町長は23日、原子力発電環境整備機構の山路亨理事長に電話で応募の白紙撤回を申し入れた。沢山町長の要請に対し、山路理事長は「応募を取り下げる方向で手続きする」と述べたという。
沢山町長は、応募取り下げ申し入れの文書をファクスでも同理事長に送付した。取り下げの理由として、選挙で調査に反対する住民の意思が示されたことなどを挙げている。 (15:43)
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20070423AT6B2300J23042007.html
応募撤回の一点を公約に掲げた反対派新町長でありますから、公約を守ると言う意味で当選翌日のこの行動は当然でありましょう。
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民意と言うものが尊重されるのが民主主義だとすれば、今回、町民の意思は明確に「高レベル放射性廃棄物最終処分場選定の1次調査(文献調査)応募」撤回と示されたわけで、私はこの東洋町町民の選択を尊重いたします。
厳しい破綻寸前の財政赤字を抱えつつ、しかしながら国からの補助金を当てにせずに、財政再建の道を探る、この東洋町の新町長にも、夕張市新市長と同様、「依存から自立へ」の道は極めて厳しいものになるでしょう。
しかし、この2つの財政破綻自治体(あえて東洋町の財政は破綻していると見なしますが)における選挙結果ですが、ともに「依存から自立へ」の選択として尊重しますが、その選択には実は似て非なる重大な違いがあります。
決定的なほど落差があるのは、それは新市長と新町長、共通に抱えている大問題(それぞれの自治体の財政再建)に対する「意思」と「手腕」です。
東洋町の沢山新町長に、どのような破綻寸前の東洋町の財政を再建する策が代案としてあるのか、少なくともメディア報道からは全く伝わってこないことであります。
●沢山保太郎新町長に破綻寸前の自治体の財政を再建するという『経営手腕』と『覚悟』は本当にあるのか?
気になるのは、「高レベル放射性廃棄物最終処分場選定の1次調査(文献調査)応募」反対の一点だけで当選してしまい、沢山保太郎新町長のその「行政手腕」がいっこうに見えてこないことであります。
沢山保太郎氏は立命館大を卒業して、職業革命家つまり、中核派(革命的共産主義者同盟中核派)の大幹部をしていた過去があり、特に中核系の「全国部落研連合」と「全国部落青年戦闘同志会」の代表をしていて、部落解放運動に熱心に取り組んできた活動家でありました。
実は彼は本名の他に「杉進也」「水島道夫」という筆名・偽名を使って全国部落研連合の機関誌『荊冠』などで執筆もしていましたが、後に沢山氏は中核派と革マル派との内ゲバから中核派を離脱することになります。
中核派から“撃沈”という名のテロル(鉄パイプでの襲撃)を受けたのでした。
<参考サイト>
みなみあめん坊の四方山ばなし
えっ!? あの沢山さんが町長選挙に(2)
http://amenbou.exblog.jp/5921155
彼はいわゆる「新左翼」活動家でした。
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念のためお話しておきますが、私がここで指摘したいことは、過去の彼の活動家としての経歴をなぞることではありません、それは町長選には関係が無いことですし、東洋町町民が選択した選挙結果を認める立場としてはっきりしておきたいのは、沢山氏が過去にどのような政治信条をお持ちでどのような行動をしてきたのかより、大切なのは今現在であります。
私がここで知りたいのは、まったなし、破綻寸前の自治体の財政を再建するという大役を担うことになった沢山保太郎新町長の『経営手腕』と『覚悟』、その一点だけであります。
もし仮に、東洋町とは隣接する室戸市の市議をつとめていた沢山氏が今回立候補した理由がただ単に「放射性廃棄物最終処分場」反対の一点だけであり、反体制的主張のみで新町長になってしまったとすれば、彼に東洋町という自治体の持つ真の問題である、破綻寸前の財政を可及的速やかに再建するという大役をつとめるための『経営手腕』と『覚悟』が本当にあるのか、私はその一点を心配しているのです。
●財政力指数0.14の東洋町の財政は夕張市同様すでに破綻している
既出しましたが、私はあえて東洋町の財政は夕張市同様すでに破綻していると見なしています。
それは財政破綻を一回宣言し撤回したという事実に基づくものですが、数字的にも裏付ける資料を押えておきます。
ここに「財政力指数」という自治体の財政力を示すひとつの指標があります。
財政力指数
財政力指数(ざいせいりょくしすう)とは地方公共団体の財政力を示す指標として用いられるもので、基準財政収入額を基準財政需要額で除した数値の、通常は過去3カ年の平均値を指す。
財政力指数が1.0を上回れば地方交付税交付金が支給されない不交付団体となり、下回れば地方交付税交付金が支給される交付団体となる。したがって、地方交付税交付金が地方公共団体間の財政力の格差を調整するために支給されるものであることからすると、その性質上必ずしも全ての地方公共団体に地方交付税交付金が支給されるわけではないことになる。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%B2%A1%E6%94%BF%E5%8A%9B%E6%8C%87%E6%95%B0
つまり、財政力指数とは財政収入額を財政支出額で除した数値でありますから、1以上ならば黒字、1未満ならば赤字自治体という単純な指標なのであります。
そして1未満ならば赤字自治体として、地方交付税交付金が支給される交付団体となるのです。
各市区町村の決算内容は総務省の「平成16年度決算状況(市区町村)」を調べれば「財政力指数」も含めて詳細を押さえることができます。
平成16年度 決算状況(市区町村) 総務省
北海道市区町村(10ページ目に夕張市の決算状況あり)
http://www.soumu.go.jp/iken/zaisei/pdf/1018-15-5_01.pdf
高知県市区町村(11ページ目に東洋町の決算状況あり)
http://www.soumu.go.jp/iken/zaisei/pdf/1018-15-5_39.pdf
総務省の「平成16年度決算状況(市区町村)」によれば、それぞれの財政力指数はこうです。
つまり、高知県東洋町は平成16年度の段階で財政再建団体に陥った夕張市よりもさらにひどい財政力指数0.14という数字を計上しているのです。
この数字の持つ深刻さは、単純に言えば100万円の自治体サービスを実現するのに、14万円しか自主財源は用意されていない、という厳しい状況を意味しているのです。
●再度問う。 沢山保太郎新町長に財政再建する『経営手腕』はあるのか?
沢山保太郎新町長が「高レベル放射性廃棄物最終処分場選定の1次調査(文献調査)応募」撤回をすることに当ブログとして何も反対の意見は有りません。
「放射性廃棄物最終処分場」などの物騒な施設が自分の町に設営されるのは町民にとり反対意見が多数を占めるのは理解できますし、その意味で町民の意思が示された今回の選挙結果を、私は敬意を持って尊重いたします。
ただ、東洋町の抱える真の大問題が、破綻寸前の深刻極まりないその赤字財政にあり、すみやかに具体的策を講じなければ、夕張市のように財政再建団体に転落するのは時間の問題であることを冷静に考えたとき、はたして沢山保太郎新町長に対抗策があるのかどうか、当ブログとしては現実的問題としてその一点だけを取り上げているのです。
前町長が「高レベル放射性廃棄物最終処分場選定の1次調査(文献調査)応募」したのは、住民の意思を確認しないで独断でおこなった点でも多くの問題がある間違った決断だったのでありましょう。
しかしながら彼がいかに財政的に追い込まれてそのような決断をしてしまったのか、ここはひとつ冷静に検討しておくことも無駄なことではないでしょう。
先ほど取り上げた財政力指数ですが、総務省の「平成16年度決算状況(市区町村)」をくまなく調べてみましたが、0.14の破綻寸前の東洋町にはうらやましい、財政力指数が1.50以上と言う超黒字市区町村が全国で20余りだけあります。
財政力指数が1.50以上と言えば、100万の支出に対して150万以上の収入が有るというすばらしい税収過多の状態を維持しているわけです。
参考までに上位21までの自治体を列挙してみましょう。
都道府県 市町村 財政力指数 理由 大阪 田尻町 2.85 関西国際空港 愛知 飛島村 2.26 西名古屋火力発電所(中部電力(株)) 佐賀 玄海町 2.20 玄海原子力発電所(九州電力(株)) 新潟 刈羽村 2.03 柏崎刈羽原子力発電所(東京電力(株)) 三重 川越町 1.95 川越火力発電所(中部電力(株)) 青森 六ケ所村 1.83 原子燃料サイクル施設 福井 大飯町 1.78 大飯原子力発電所(関西電力(株)) 茨城 神栖町 1.70 鹿島火力発電所(東京電力(株)) 福島 大熊町 1.69 福島第一原子力発電所(東京電力(株)) 長野 軽井沢町 1.69 観光地(別荘・リゾート) 愛知 豊田市 1.65 トヨタ自動車および関連企業 愛知 三好町 1.65 トヨタ自動車の三好工場、下山工場、明知工場 北海道 泊村 1.65 泊原子力発電所(北海道電力(株)) 宮城 女川町 1.63 女川原子力発電所(東北電力(株)) 東京 武蔵野市 1.60 横河電機・すかいらーく本社他メーカー物流系 千葉 成田市 1.59 新東京(成田)国際空港 神奈川 箱根町 1.57 観光地(温泉・別荘・リゾート) 新潟 聖籠町 1.57 東新潟火力発電所(東北電力(株)) 愛知 碧南市 1.57 碧南火力発電所(中部電力(株)) 新潟 湯沢町 1.53 観光地(温泉・スキー場・別荘・リゾート) 千葉 浦安市 1.51 東京ディズニーリゾート
いかがでしょう、トップの大阪府田尻町から上位21自治体のうち実に14自治体が
空港か原発や火力発電所の設営自治体なわけです。
あとは観光資源を有する箱根町や浦安市、あるいはトヨタなどの大企業の税収で潤う豊田市や三好町の例だけです。
この上位の顔ぶれを見れば、地方自治体が1.50以上の黒字財政となるパターンは3種類に大別することができます。
・原発や空港などの公共施設誘致
・大企業誘致
・観光資源開発
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再度問います。
沢山保太郎新町長はどのような策により、財政力指数0.14の東洋町の財政破綻を阻止しその財政を回復させるのか、責任ある自治体の長として、その『覚悟』と『手腕』はおありなのか?
責任ある自治体の長として、ぜひとも具体的な策をお聞かせ願いたいのです。
(木走まさみず)
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■2006-11-23 赤字自治体は今こそ無駄な県会議員数を削減せよ
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20061123/1164251680
■2006-06-27 夕張市の15年に渡る粉飾決算が生んだ絶望的な巨額借金
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20060627/1151387326